アサシンクリード・オリジンズ/ピラミッド内部の空間は新発見の空間とは関係ないよという話
Lv23しかないのに「白砂漠が見たい!」と西部砂漠に突っ込んで観光してたらクッソ強いライオンに襲撃されて死んだ中の人です。こんばんは。
いやあ自由度が高いのはいいですけどマップに記載されてる適正レベルに明らかに足りてないところに無理やり突っ込むのは…ダメ…ですね…(´・ω・`) そんなこんなでレベル上げを兼ねてギザ周辺をウロついてきたのでピラミッド内部の空間がどーのこーのいう話にもようやく追いつけましたよっと。
というわけで今回も「アサシンクリード・オリジンズ」の話で元ネタとゲームの違いを書いておこうかと。
このゲーム、かなりリアルに作りこんでいるゲームではありますが…ピラミッドとスフィンクスの周辺だけはファンタジーです。
外見もそうなんですが内部はすんごいデタラメに作られていて、特に副葬品の時代が全然違いますねー。
ピラミッド周辺だけ時代考証が雑、というかほぼファンタジーになっているのは、ワザと「ここはリアルだと思わないでね」ってことで作ったのかとも思うくらいテケトー。
ピラミッド内部に作られてる空間も、かなりファンタジー寄りで作られてます。最近発表された、新たに発見された空間とゲーム内でピラミッドに作られてる空間は、全く関係ないです。場所も違うし。
というわけで順を追って解説していくので興味のある人は付き合ってください。
------------------------------
<基本事項>
まずはざっと古代エジプトの主要イベントの年代をおさらい。
・古代エジプト初期王朝の成立 紀元前3,000年ごろ
・ギザの大ピラミッド&スフィンクス建造 紀元前2,500年ごろ
・ツタンカーメン死亡 紀元前1,300年ごろ
・プトレマイオス王朝開始 紀元前332年
・クレオパトラ即位 紀元前51年
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ザックリ書きましたがギザに大ピラミッドが作られてからゲーム内の年代までの間に約2,500年が経過しているということを覚えておいてください。クフ王からクレオパトラまでのほうが、クレオパトラから我々までより遠い時代なんです。ここ重要。
つまり、今から2,000年前といえど、ピラミッドやスフィンクスが、外見も内部も、あんなきれいな状態で残ってるわけがないです…。
だって今から2,000年前の時点で、既に2,500年経過してるわけですから。
やたらピカピカなのはゲームとしての画面上の見栄えを重視した結果です。
ピラミッドのてっぺんが金箔貼りで太陽の輝きを反射する作りになっていた、というのも一つの説に過ぎず、仮に本当にそうだったとしても、クレオパトラの時代にはまず色が残ってることは無いかと。
ちなみに現存するピラミッドのてっぺんの石は、たとえばこんな感じです(地面に落下して割れてたのを復元したもの)。
ほかにも、ピラミッドの表面に使われている石が二色になっていたり、本当はこの時代には存在してはいけない盗掘穴が空いていたり、あと衛星ピラミッドが完全に化粧石の剥がれた現代の姿になっちゃってたりするところはツッコみどころかなと。小型の衛星ピラミッドの石材も、この時代だとまだ残っていた可能性があります。後世に、アイユーブ朝の宰相がギザのピラミッドを解体して要塞や町を築くのに使った、という記録があるので。
あと、ゲーム内と現実で同じアングルの写真見比べてみると、ピラミッドの確度や人に対する大きさの比率がだいぶ違うことがわかりますね。現実のピラミッドはもっとデカいです。
よく似た雰囲気は出せてるので、作るのはめっちゃ頑張ってると思います。ただ、完全なる現実の再現ではないです。当たり前かもしれませんが…これも大事…。
*真下から見上げる
*現実のピラミッドはデカいので真下からだと上部が直線にしか見えない
で、スフィンクスとピラミッドの内部の構造ですが…現実とは大きく異なります。
ていうえかそもそもスフィンクスに隠された秘密の部屋とかないんですよ(´・ω・`) 現実世界で、お尻のあたりに空いてる穴は地下水で削られた穴で人工のものではないし中に文字一つ書かれてないですから。ゲームではお約束のように隠し部屋とか在ることになってるんだけどね。シムズ3とかでも散々ココ探検しましたけどね?!
お約束といえばピラミッドの地下とかスフィンクスの内部とかにSF的なナニカがありましたね。
それも現実には無いです。あると信じたい人は結構いたりしますけど。
でもって、これもお約束だなーと思ったのが壁画。
ゲームなどでは、見栄えをよくするためなのかピラミッドやスフィンクスの内部に必ずと言っていいほど壁画を描きたがりますが、ギザにピラミッド作ってた時代は、まだピラミッド内部に装飾する文化がないです。ギザのあのデッカいピラミッドも、周辺にある小さなピラミッドも、壁には絵も文字もなんにもありません! 中にピラミッド・テキストと呼ばれる呪文が描かれはじめるのは、次の第五王朝のピラミッドから。
ピラミッド自体は小型化していくんですが、中にビッシリ絵を描くようになっていくのです。
さらにお約束なのが、ピラミッドやスフィンクスの内部にお宝がザックザクなところ。
どこのドラゴンが集めたんだよといわんばかりの雑多なお宝の山。いやまあ…こういうの嫌いじゃないですけど…いきなりチープな感じになってるよ!!
たぶんツタンカーメン王墓の副葬品あたりを参考にしたんだと思います。ツタンカーメン王墓の出土品と同じ寝台や厨子があったり、なぜか戦車まで入ってたりします…。ピラミッドを作ってた頃の古王国時代には、まだエジプトに馬すら入ってきてないんで、せめて戦車は抜いて欲しかった(汗) リアルな話をすると古王国時代はまだ人型棺もシャブティ像も使われてません!
クフ王からツタンカーメンまでの間も1,000年経ってるんです。いうならば飛鳥時代と江戸時代末期で埋葬様式や副葬品が同じなわけねーだろって話ですね。
ピラミッドの中身は壷の様式もめちゃくちゃで、新王国時代の、ツタンカーメン王墓と同じ様式のものがあったり、グレコ・ローマン風のものが混じってたり、明らかにこれギリシャだよねっていうプトレマイオス朝時代のものがあったり。ポソっと現存するクフ王の像と同じものが隅っこの棚に置かれてたのは思わず笑ってしまいましたけど、ここらへんは時代考証を捨てたお遊びなんだと思います。
という流れの上に「ピラミッドに隠された空間」が出てくるわけなので、まあそりゃ、そこもお遊びで実装してみたんだろうなと考えるのが普通でしょうかね。
その空間というのはどうもジャン・ピエール・ウーダンの説を採用して作った"内部傾斜路"のようなのですが、ウーダン説については本人のサイトにFlashの動画があります。(日本語切り替えあり)
https://www.3ds.com/passion-for-innovation/khufu-reborn/khufu-reborn/
要約すると、ピラミツド内部には隠された作業用の通路があり、作業者たちはその通路を使って石を運び上げてピラミッドを作ったのだ、という説です。しかしこの説には当初から専門家たちがツッコミを入れまくってました。私もこの説は、一部は採用することができるかもしれないけど全体としてはないな、と思ってます。机上の空論に過ぎず、実際にやろうとすると単純に土盛りで傾斜路を作ってその上に石を滑らせたほうが早いし効率的。
ただ、説としては確かに面白いし、ゲームにダンジョンの一部として実装するならアリだと思う。
たぶん、ゲーム開発の担当者もそう考えて「ゲームとしてのお約束、見栄え」「攻略の楽しさ」のためにリアルさを変更してきたんでしょう。
なので、ピラミッド内部の空間については、
・今までにもよくあるファンタジーとしての"お約束"
・プレイヤーに夢の冒険をさせてくれる演出
・ウーダン説からとってきた通路を付け加えている
というもので、新しく発見された空間を最初から実装していた、というのは開発元の単なるリップサービス、あるいは興味を引かせるためのセールストークの一種でしょう。まあそんなもん。
ゲームに限らず映画やドラマでもマンガや小説でもそうですが、どれだけ史実に近づけようとも、どれだけ時代考証をがんばろうとも、それだけでは面白い物語は作れないです。必ずファンタジー要素は入れます。自分が作るとしてもそう。
全てを史実と思ってはいけない。雰囲気や概要は創作物で学べても、「本当はどうだったのか」は別の場所で学ばないとだめなのです。
*************
前記事
アサシンクリード・オリジンズ/リアルさと"ゲーム向けの設定" (※ネタバレ記述なし)
https://55096962.seesaa.net/article/201711article_9.html
古代史クラスタはプレイするんだ! アサシンクリード最新作「オリジンズ」、最高にエジプトしてた
https://55096962.seesaa.net/article/201711article_5.html
エジプトマニア勢大勝利か?! アサシン・クリード最新作エジプト編の美術が凄い
https://55096962.seesaa.net/article/201706article_13.html
アサシンクリード・オリジンズ/現存しない神殿等の再現についてのメモ ※ネタバレあり
https://55096962.seesaa.net/article/201711article_25.html
エジプト・ファイユームの地名(古名)マップを見つけたぞー
https://55096962.seesaa.net/article/201712article_5.html
いやあ自由度が高いのはいいですけどマップに記載されてる適正レベルに明らかに足りてないところに無理やり突っ込むのは…ダメ…ですね…(´・ω・`) そんなこんなでレベル上げを兼ねてギザ周辺をウロついてきたのでピラミッド内部の空間がどーのこーのいう話にもようやく追いつけましたよっと。
というわけで今回も「アサシンクリード・オリジンズ」の話で元ネタとゲームの違いを書いておこうかと。
このゲーム、かなりリアルに作りこんでいるゲームではありますが…ピラミッドとスフィンクスの周辺だけはファンタジーです。
外見もそうなんですが内部はすんごいデタラメに作られていて、特に副葬品の時代が全然違いますねー。
ピラミッド周辺だけ時代考証が雑、というかほぼファンタジーになっているのは、ワザと「ここはリアルだと思わないでね」ってことで作ったのかとも思うくらいテケトー。
ピラミッド内部に作られてる空間も、かなりファンタジー寄りで作られてます。最近発表された、新たに発見された空間とゲーム内でピラミッドに作られてる空間は、全く関係ないです。場所も違うし。
というわけで順を追って解説していくので興味のある人は付き合ってください。
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<基本事項>
まずはざっと古代エジプトの主要イベントの年代をおさらい。
・古代エジプト初期王朝の成立 紀元前3,000年ごろ
・ギザの大ピラミッド&スフィンクス建造 紀元前2,500年ごろ
・ツタンカーメン死亡 紀元前1,300年ごろ
・プトレマイオス王朝開始 紀元前332年
・クレオパトラ即位 紀元前51年
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ザックリ書きましたがギザに大ピラミッドが作られてからゲーム内の年代までの間に約2,500年が経過しているということを覚えておいてください。クフ王からクレオパトラまでのほうが、クレオパトラから我々までより遠い時代なんです。ここ重要。
つまり、今から2,000年前といえど、ピラミッドやスフィンクスが、外見も内部も、あんなきれいな状態で残ってるわけがないです…。
だって今から2,000年前の時点で、既に2,500年経過してるわけですから。
やたらピカピカなのはゲームとしての画面上の見栄えを重視した結果です。
ピラミッドのてっぺんが金箔貼りで太陽の輝きを反射する作りになっていた、というのも一つの説に過ぎず、仮に本当にそうだったとしても、クレオパトラの時代にはまず色が残ってることは無いかと。
ちなみに現存するピラミッドのてっぺんの石は、たとえばこんな感じです(地面に落下して割れてたのを復元したもの)。
ほかにも、ピラミッドの表面に使われている石が二色になっていたり、本当はこの時代には存在してはいけない盗掘穴が空いていたり、あと衛星ピラミッドが完全に化粧石の剥がれた現代の姿になっちゃってたりするところはツッコみどころかなと。小型の衛星ピラミッドの石材も、この時代だとまだ残っていた可能性があります。後世に、アイユーブ朝の宰相がギザのピラミッドを解体して要塞や町を築くのに使った、という記録があるので。
あと、ゲーム内と現実で同じアングルの写真見比べてみると、ピラミッドの確度や人に対する大きさの比率がだいぶ違うことがわかりますね。現実のピラミッドはもっとデカいです。
よく似た雰囲気は出せてるので、作るのはめっちゃ頑張ってると思います。ただ、完全なる現実の再現ではないです。当たり前かもしれませんが…これも大事…。
*真下から見上げる
*現実のピラミッドはデカいので真下からだと上部が直線にしか見えない
で、スフィンクスとピラミッドの内部の構造ですが…現実とは大きく異なります。
ていうえかそもそもスフィンクスに隠された秘密の部屋とかないんですよ(´・ω・`) 現実世界で、お尻のあたりに空いてる穴は地下水で削られた穴で人工のものではないし中に文字一つ書かれてないですから。ゲームではお約束のように隠し部屋とか在ることになってるんだけどね。シムズ3とかでも散々ココ探検しましたけどね?!
お約束といえばピラミッドの地下とかスフィンクスの内部とかにSF的なナニカがありましたね。
それも現実には無いです。あると信じたい人は結構いたりしますけど。
でもって、これもお約束だなーと思ったのが壁画。
ゲームなどでは、見栄えをよくするためなのかピラミッドやスフィンクスの内部に必ずと言っていいほど壁画を描きたがりますが、ギザにピラミッド作ってた時代は、まだピラミッド内部に装飾する文化がないです。ギザのあのデッカいピラミッドも、周辺にある小さなピラミッドも、壁には絵も文字もなんにもありません! 中にピラミッド・テキストと呼ばれる呪文が描かれはじめるのは、次の第五王朝のピラミッドから。
ピラミッド自体は小型化していくんですが、中にビッシリ絵を描くようになっていくのです。
さらにお約束なのが、ピラミッドやスフィンクスの内部にお宝がザックザクなところ。
どこのドラゴンが集めたんだよといわんばかりの雑多なお宝の山。いやまあ…こういうの嫌いじゃないですけど…いきなりチープな感じになってるよ!!
たぶんツタンカーメン王墓の副葬品あたりを参考にしたんだと思います。ツタンカーメン王墓の出土品と同じ寝台や厨子があったり、なぜか戦車まで入ってたりします…。ピラミッドを作ってた頃の古王国時代には、まだエジプトに馬すら入ってきてないんで、せめて戦車は抜いて欲しかった(汗) リアルな話をすると古王国時代はまだ人型棺もシャブティ像も使われてません!
クフ王からツタンカーメンまでの間も1,000年経ってるんです。いうならば飛鳥時代と江戸時代末期で埋葬様式や副葬品が同じなわけねーだろって話ですね。
ピラミッドの中身は壷の様式もめちゃくちゃで、新王国時代の、ツタンカーメン王墓と同じ様式のものがあったり、グレコ・ローマン風のものが混じってたり、明らかにこれギリシャだよねっていうプトレマイオス朝時代のものがあったり。ポソっと現存するクフ王の像と同じものが隅っこの棚に置かれてたのは思わず笑ってしまいましたけど、ここらへんは時代考証を捨てたお遊びなんだと思います。
という流れの上に「ピラミッドに隠された空間」が出てくるわけなので、まあそりゃ、そこもお遊びで実装してみたんだろうなと考えるのが普通でしょうかね。
その空間というのはどうもジャン・ピエール・ウーダンの説を採用して作った"内部傾斜路"のようなのですが、ウーダン説については本人のサイトにFlashの動画があります。(日本語切り替えあり)
https://www.3ds.com/passion-for-innovation/khufu-reborn/khufu-reborn/
要約すると、ピラミツド内部には隠された作業用の通路があり、作業者たちはその通路を使って石を運び上げてピラミッドを作ったのだ、という説です。しかしこの説には当初から専門家たちがツッコミを入れまくってました。私もこの説は、一部は採用することができるかもしれないけど全体としてはないな、と思ってます。机上の空論に過ぎず、実際にやろうとすると単純に土盛りで傾斜路を作ってその上に石を滑らせたほうが早いし効率的。
ただ、説としては確かに面白いし、ゲームにダンジョンの一部として実装するならアリだと思う。
たぶん、ゲーム開発の担当者もそう考えて「ゲームとしてのお約束、見栄え」「攻略の楽しさ」のためにリアルさを変更してきたんでしょう。
なので、ピラミッド内部の空間については、
・今までにもよくあるファンタジーとしての"お約束"
・プレイヤーに夢の冒険をさせてくれる演出
・ウーダン説からとってきた通路を付け加えている
というもので、新しく発見された空間を最初から実装していた、というのは開発元の単なるリップサービス、あるいは興味を引かせるためのセールストークの一種でしょう。まあそんなもん。
ゲームに限らず映画やドラマでもマンガや小説でもそうですが、どれだけ史実に近づけようとも、どれだけ時代考証をがんばろうとも、それだけでは面白い物語は作れないです。必ずファンタジー要素は入れます。自分が作るとしてもそう。
全てを史実と思ってはいけない。雰囲気や概要は創作物で学べても、「本当はどうだったのか」は別の場所で学ばないとだめなのです。
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アサシンクリード・オリジンズ/リアルさと"ゲーム向けの設定" (※ネタバレ記述なし)
https://55096962.seesaa.net/article/201711article_9.html
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https://55096962.seesaa.net/article/201706article_13.html
アサシンクリード・オリジンズ/現存しない神殿等の再現についてのメモ ※ネタバレあり
https://55096962.seesaa.net/article/201711article_25.html
エジプト・ファイユームの地名(古名)マップを見つけたぞー
https://55096962.seesaa.net/article/201712article_5.html