アサクリ×近代エジプト史の遊牧民反乱 オマル・マスリー

アサシンクリード・オリジンズをプレイしていて「あーなんかこのクエスト見たことある気がするぞ…この展開…なんだっけ…」みたいにもやって思っていたのが、19世紀半ばにエジプトで起きたオマル・マスリーの反乱だということに気が付いたのでメモしておく。

近代エジプトの遊牧民―「オマル・マスリーの反乱」聞き取り調査ノート
http://www6.econ.hit-u.ac.jp/areastd/mediterranean/download/pdf/ikkyo,No.110,kato.pdf

砂漠に消えた「革命」―近代エジプトの遊牧民「革命」―
http://www.jcas.jp/jcas_review/JCAS_Review_01_01/JCAS_Review_01_01_009.pdf

この事件についての聞き取りをむかし読んだことがあって、その記憶がゲーム内の設定や状況と重なったのだった。

・主人公が砂漠に住んでいて、政府軍からは追われている
・しかし自らは「悪漢しか襲わない正義」を名乗り、民衆や部族からの支持は得ている
・どう考えても不利な
・ファイユームから西方砂漠のオアシスあたりを転々とする神出鬼没の男
・政府軍との戦闘に一応は勝利し、最終的に権利を認めさせて和解

なんでまたこんなマイナーな事件を日本人が追いかけているのかよく分からないが、こういうマイナーと見せかけて興味深い研究はあってもいい。

さて、詳細はリンク先の記事で読めば判る話なのだが、語り部が多少脚色しているにせよ、ドラマチックで面白い物語である。これは、今ではほとんど忘れ去られている、1854年から63年にかけて発生したエジプトの遊牧民(リビア砂漠側に住む)の反乱の記憶である。ちなみに、シナイ半島のほうにもエジプト政府にあまり好感を持っていない元遊牧民は暮らしている。オマル・マスリーが蜂起した理由は遊牧民に対する徴兵制度に反発したからとされるが、シナイ半島でも同じような理由で遊牧民の蜂起が発生したことがある、という話をどこかで読んだ気がする。エジプトは、ナイル川沿いの昔からの定住者と、東部や西部の周辺部の砂漠に暮らしてきた、近年になってから定住をはじめた部族との多重構造になっているのだ。

たった150年ほど前の話なのだが、中身は2,000年前を舞台にしたゲーム内の世界の雰囲気とどこか似ている。
ちなみに、オマル・マスリーは最終的に逃亡先のキュレナイカからエジプトに戻って生活していたが、1870年、コーヒーに毒を入れて毒殺された、と伝えられている。本当にそうなのかどうかはともかくとして、「暗殺」というキーワードにアサシン教団の香りがしたりしなかったり。
あと2つめのPDFにあるこの文言がすっごい、教団の「教義(クリード)」っぽさあってファーって感じ。

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歴史は・・・面白いんだ・・・、どんなフィクションも現実は越えられないんだよ・・・!

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