現時点で最古のペストの証拠を発見、3,800年前

紀元前1,800年の青銅器時代、人類は既にペスト菌と遭遇していた――。

現在のロシアにあるSamaraから発掘された青銅器時代の人骨から、ペストに感染していた証拠が見つかり、回収された菌の遺伝情報が解析されたという。埋葬された遺体は同時期にペストが原因で亡くなった人たちのようで、種類は肺ペストと見られるという。

Oldest bubonic plague genome decoded
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2018/06/oldest-bubonic-plague-genome-decoded.html#FCFFe5QOSXciYqy0.97

場所はココ。

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今までも、ペストの起源は中央アジアだろうといわれていたが、今回回収された菌がのちにヨーロッパで猛威を振るう菌に繋がる遺伝子を持っていることから、その推測を裏づける形になったという。のちに6世紀にはユスティニアヌスの大疫と呼ばれるペストの大流行が齎されるが、ローマが版図・交易路を広げることと、疫病との出会いは、この時点から既に運命づけられていたことになる。


ちなみに、「ペストの歴史」によると、今までに認められているペストの最古の記録は、紀元前3世紀のものだという。
かつては紀元前5世紀のトュキュディディスの記述が最古のペストの記録と考えられていたようだが、今ではチフスか麻疹ではないかとする説が有力で否定されているようなので注意。

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ペストの歴史
山川出版社
宮崎 揚弘

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しかしそれにしても、紀元前1,800年時点から、人の大量死に向かって菌と都市との出会いがカウントダウンが開始されていたというのはゾッとするとともに興味深い。

ペスト菌は昔からこっそり存在していたけれど、人口密度が低いうちはやっても村ひとつ滅ぼすくらいであんまり知られてなかった。「都市」という密集した環境に入り込まなければ、おそらくそれほどの脅威ではなかったはずだ。
そのペストは、現在でもときどき発展途上国などでアウトブレイクを引き起こしており、完全に克服されたわけではない。決して、「今はもうない歴史上の病気」などと油断はしないほうがいい。



なお、中世以前のペストの感染源については、ネズミ説と、ノミ・シラミ説がある。

「黒死病」はネズミのせいではなかった?最新研究 中世欧州を襲ったペストの大流行、現代と異なる感染経路か
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/011700018/

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