時代ごとに切り口が違う。びわこ水中考古学の世界

水中に沈んだ遺跡の研究でよく聞くのが、琵琶湖の湖岸に沈んだ遺跡の研究。
湖岸なので水をせき止めれば遺跡を陸上にすることも出来て、調査しやすいのもあってけっこう昔から研究されている。しかしこの琵琶湖の遺跡、時代が縄文から近代まで幅広いらしい。

びわこ水中考古学の世界
滋賀県文化財保護協会

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縄文の遺跡の話は有名。というのも縄文時代の残りのいい遺跡は数が少なめなので、水中にあることでよく保存されている琵琶湖の遺跡は貴重なようなのだ。食べ物の痕跡から当時の食生活も判るという。また弥生時代の水田跡や、石室らしきものも沈んでおり、元は古墳もある集落だったのではないかという。

遺跡の多くは、地震や水位の変動によって地形が変わったことによって水中に没している。
また、意図的に水中に放棄されたもの、たとえば港の遺跡とともに見つかる船などがあるらしい。

ある程度知っている話なので、わりとふーんという感じで読んでしまったが、気になったのは、水位の変動がいつ、どの程度の規模で起きたのかあまりはっきりしていない点。「たぶんこのくらいの時期だろう」というのは遺物にあわせて辻褄を合わせて出した年代のようにしか見えなかった。研究史は長いのに大事なところが意外と…という感じ。

それと出てくる遺跡の時代の幅が広いのに参加してる研究者の専門が狭いのでは? という気もした。この本に出てきているディスカッションメンバーの選定のせいかもしれないが。全般的な話を書くのなら、もう少し広い視点で、視野をバラけさせてくれてもよかったのかな。

入門編としてはよく、巻末のデータ集はよくまとまっていたが、水中考古学の面白さはイマイチ伝わってきづらい本だった。

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