【ぐう畜】19世紀のヨーロッパ人が見るアマゾン河流域の原住民に対する視点

19世紀の博物学者ウォレスがアマゾン河領域を旅した時に見聞きしたものの記録「アマゾン河 探検記」。
旅行記だと思ってなんとなーく読んでいて、うんまぁ他の探検記と似たようなノリだよねー当時ならではの上から目線とか無意識の差別意識とかもありつつ博物学者らしい視点もあるよねーという感じで読み流していたら、サラッとすごいこと書いてるところがあったぞ…。

アマゾン河探検記
青土社
アルフレッド・ラッセル ウォレス

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 「反抗的なインディオの部族に天然痘を流行らせて全滅させたった」という自慢話。

サントス・イノセントス出身の修道士、ジョゼという人物がウォレスに語る話である。
なので厳密に言えば実際にやったかどうかの裏は取れないのだが、この時代にこの方法が認識されていたことは事実である。次のページで著者ウォレスが若干引いてるのがまだ救いだが、それでも彼はジョゼ修道士を非難しないし、「ひじょうにあっぱれな政治的手腕」の持ち主だと賞賛している。なんだこれ…この本書かれたの19世紀だけどその時点でこんな感覚なの…。

※参考までに、ヨーロッパ人が中南米に持ち込んだ疫病で死亡した人口規模の資料
https://55096962.seesaa.net/article/200909article_5.html

※宣教師が余計なことして全滅した可能性のあるヤーガン族のケース
https://55096962.seesaa.net/article/201802article_1.html

新世界の住民たちは、インフルエンザや天然痘、コレラ、チフスなどの疫病に全く耐性がなくて、それらによってわずか100年で人口激減してるのです。半減どころか地域によっては90%が死亡。そして人が居なくなったところにヨーロッパから大量の人が流れ込み、現地民が全滅してるのでアフリカから奴隷を連れ込んで今に至る。これは、そんな歴史のたった1ページに過ぎない。あまりにもありふれたやり方だったから、本を書いてる人も、読んでる人も、それに違和感を覚えることもない、っていう世界。

やばいだろ…。


現代の基準だと、学術的な考察はかなり甘い。なのでアマゾンの自然環境を知るなら現代の本を読めばいい。しかし、この類の本は、「過去に」そこを訪れた探検家たちがどのような視点をもって世界を見ていたかを知るには良い。ウォレスも、いかにも当時の探検家らしくコレクションの収集に余念がないし、インディオが怠惰であるとか、契約を守らないといった苛立ちがちょいちょい出てくる。よくある探検記のパターン。

それに加えて、無自覚に行っている現地の文化や環境の破壊を、無自覚ゆえに罪悪感もなく(それどころか時に栄光の故国イギリスを讃えつつ)記録している。当時の基準だと彼に罪はないが、現代基準だとだいぶイタイ。歴史って、その時代のフィルターによって作られるものなんだよなぁ…と、改めて実感できる本であった。

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