島で生き抜くために必要なこととは。「島に住む人類」

「人の手で自然を改造する」と言うと、自然を破壊するみたいな否定的なニュアンスにとられることもあるが、そうじゃない。そもそもありのままの自然では人間は生きてゆけないので、生きてゆける環境を作ることは生存の必須条件で、その「人間の変えた」自然こそが、実は人間の想像する「楽園のようなありのままの自然」なのだということ。
そして、人間が世界中に広がることの出来た強さとは、まさにそこにあるのだということ。

…という話を、オセアニアの島々に拡散していった人々の歴史から学ぶのがこちらの本。

島に住む人類 オセアニアの楽園創世記
臨川書店
2017-08-07
印東 道子

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色んなトピックスが出てきて戦犯的に面白いのだが、大きなトピックスとなっているのはやはり ごはん の話である。
島という限られた面積で、いかに効率よく食料を得続けるか。周りが豊かな海ならば漁業で生きていけるじゃん、などと思うのは甘い。海産物は成長するのに何年もかかるので、毎年大量に取り続ければ、どれだけ大量にいても当然ながら枯渇するのである。回遊魚などは時期によってとれないこともある。また、そもそも漁をするのに船や釣り針などの道具をつくり維持する手間がかかるし、嵐の時期などもあり安定的に食料が得られない。

島で生存していく上では、安定的にとれる農作物、ヤシの実なんかが絶対に必要なのである。

そこでオセアニアンは島から島へ移住するにあたり、たくさんの植物を携えていった。移住先の島に役に立つ植物を植えつけて、積極的に、自分たちに都合のいい自然を作り上げていったのだ。これは、人の移住と植生の変化が同時期に起きることから証明されるという。

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とても戦略的かつ合理的なやり方だ。
もちろん、植物の成長速度や収穫サイクルは理解しているし、島によって異なる環境条件にあわせて植えつける植物を選択もしている。火山から成る島とサンゴ礁の島では土壌からして違うからだ。「楽園のような」、ヤシのそよぐ穏やかな南の島は、実は、かつてそこに最初に移住してきた人々がヤシを植えて人工的に「創った」、人間の世界だった、というわけだ。

島というのは基本的に、生き抜くのに過酷な環境だという。
それは以下の本でも語られている。その過酷な環境でいかに生き抜くか、島に生きる人々の生存戦略はとても興味深いし、タフさに驚く。

島の先史学―パラダイスではなかった沖縄諸島の先史時代
ボーダーインク
高宮 広土

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https://55096962.seesaa.net/article/201708article_8.html


海を渡り新天地の島を目指した人々は、海に生きるとともに、島という環境で陸も知り尽くしていた――航海術に秀でた凄腕の冒険者であるとともに、過酷な自然を人の生きてゆける環境に改造するプロでもあった、ということを、改めて学ぶことの出来た本であった。


(なお、作物の料理法も細かく載ってたりするので軽く飯テロ本でもあります・・・
(写真がカラーじゃなくて良かった

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