針葉樹は広葉樹に比べて保水力が低い! →実は逆でした。

なんでだか良く判らないけど昔から、「針葉樹は広葉樹に比べて保水力が低い。水を豊かにするのは広葉樹なので山には広葉樹を植えたほうがいい」というような論調の話をよく見かけていたのだが、山を歩いてる感覚としてはなんか違和感があった。「ブナは緑のダム」なんて言われているけど、べつにブナの森が特別豊かだと思ったことはないな、とか。

そこでちょっと調べてみたら、いい資料が見つかった。

多くの人が誤解している森林の保水力
https://web.pref.hyogo.lg.jp/hnk09/documents/000073804.pdf


◆重要ポイント

広葉樹は針葉樹に比べて保水力(水をその場にとどめておく力)が低い。
そのため、保水力は実は弱い。


あれっ世間で言われてることと逆じゃない? という話だが、実はそうなんである。

針葉樹は土中からガンガン水を吸い上げ、空中に水蒸気として放出している。対して広葉樹はその機能が針葉樹ほど強くない。そのため川に流してしまう水の量が多い。 ブナ林のほうが水が豊かになる、というのは、木が水を留められないから水量が増えてるんだという話。

これは考えてみれば納得のいく話で、樹木だって呼吸をして生きているんである。水を常に吸い上げ続け、呼吸のたびに水を放出する。常緑の針葉樹はこれを冬でも行うが、広葉樹は冬には葉っぱが落ちて休眠状態になってしまう。
そして、木が水を吸い上げて消費(=空中に放出)したぶん、当然ながら、山の水は"減る"のだ。


それなら、土中に水を溜めておく機能は有効でしょう? という話だが、もちろんその機能はある。あるからこそ、水は全てが川に流れるわけではなく、山に留まり、山で消費されることになる。

しかし、広葉樹の根っこは横に広がるから水を受け止めやすい…などというのは迷信で、ぶっちゃけそこはあまり関係がない。重要なのは、根っこが広がった場所にどれだけの表土があるかがポイントだという。
また、表土の流出を防ぐためには、森林を手入れして、木をあまり密集させて植えてしまわないことが必要だという。密集させすぎると、畑の土と同じように土が固くしまって流出しやすくなるのだそうだ。

なので、定期的に木を伐採することも必要になる。下草が生えて土を覆っているような状態が実は正常な山林のあり方だという。つまり、針葉樹とか広葉樹とかはあんまり関係ない。人の手が入った、お手入れの行き届いた山ほど保水力が高いと言える。

ちなみに、広葉樹は葉っぱを落とすからそれが土となりやすい…などという話をよく見かけるが、これも間違い。針葉樹林も葉っぱは落とす。山歩きをすれば判ると思うが、針葉樹の森の中は、常に葉っぱや小枝でフッカフカだ。単に、シーズンが来たからと言って一気に葉っぱを落とすのではなく、四季を通じて少しずつ落として葉っぱを入れ替えてるだけだ。

★参考までに
下草の生えてる、表土の生きてる山

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表土が流出してしまって木の根っこが浮いてきてる山

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たぶんこういうとこで土地力の差がついてるんだろうなと…。



というわけで、「保水力」という点で考え、保水林を作るのであれば、実は広葉樹よりも針葉樹のほうが有利になる。特に、大雨のあとの増水などを防ぐのであれば、きちんと管理された針葉樹のほうが、水を発散する力が強いので適切だろう。
ただ、針葉樹ばっかりにすると川の水が減ってしまうので、針葉樹と広葉樹を交互に植えて、樹間を持たせる&光が差し込むようにしている保水林こそ正しい運用だろうと思う。

広葉樹もしくは針葉樹だけみっちり植えて放置してる保水林は、そもそも機能していないうえに逆効果になる。
また、人の手を入れない自然のままならいいだろう、と放置されてる場所も、保水機能が低い。

山林は人の手が入ったほうが強い自然になるという話は、確か以下の本でも似たような話を読んだ覚えがあるけど、まさしくそうなんだなぁと…。

「森を守れ」が森を殺す!
洋泉社
田中 淳夫

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あと、花粉症の恨みから、スギやヒノキの林なんぞさっさと伐ってしまえ、という意見もたまに見かけるのだが、残念ですが花粉症には色んな種類があり、スギやヒノキがなくなったとしたら別の種類の花粉症になるだけです…。


花粉症が辛いから海外行きたい!という貴方、残念ですが花粉からは逃げられません
https://55096962.seesaa.net/article/201803article_9.html


北海道に行くとポプラやプラタナスの花粉症に、オーストラリアなどにいくとブタクサかイネ科の花粉症に襲われるわけで、場合によってはスギやヒノキなどより重篤な症状が出るので、そこで日本の山林を恨んでも何の解決にもならないことを知っておいてもいいかなと思う。

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