大ピラミッド建造に不可欠な傾斜路の秘密が解決されるか。ハトヌブの採石場で見つかった傾斜路の可能性

エジプト中部、ミニヤ県にあるハトヌブ(Hatnoub)の古い採石場で見つかった、石材を運ぶための傾斜路の跡が、もしかしたら大ピラミッド建造に必要不可欠な「石材運搬方法の謎」をとく鍵となるかもしれないという話。

Ancient ramp used to transport massive stone blocks by Egypt's pyramid builders discovered
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2018/11/ancient-ramp-used-to-transport-massive.html

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この、何の変哲もなさそうな斜面と左右にある階段。これが重要。
ちなみにここは空撮写真を見るとこんな感じの構造になっている。

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ハトヌブのアラバスター採石場についてのデータなど。
1891年に発見され、古王国時代~中王国時代の約50の碑文があるという。また、クフ王の時代まで遡って使われていた証拠もあるという。なのでこの採石場は、大ピラミッド作ってた時代と一致している。

http://www.ifao.egnet.net/or2017/axes2012/individu-corps-et-mort/2012-hatnoub/

今までの研究の中で、ギザの大ピラミッドの建造を再現する上での問題となっている点の一つが、石を上の方に引っ張り上げるための傾斜路をどう作るか、ということだ。人力で石を引き上げることになるが、傾斜が急すぎると石を引っ張り挙げられないのではないかと考えられていた。しかし、傾斜を緩くすると傾斜路そのものが長く、巨大になってしまい、ピラミッド本体より傾斜路を作るのが大変になる。

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だが、ここで見つかった傾斜路は今まで考えられていたより急な角度なので、古代エジプト人は急な傾斜路でも石を運び上げられる技術を持っていたんじゃないかというのが今回のお話。20度以上の急な角度でも石を運び上げられるというのだ。

ちなみに日本で一番、勾配の険しいといわれる国道308号線(暗峠)の角度がちょうど20度。
画像をググってみるとこんな感じです。これかー…ここをトン単位の石運びあげるのかぁー…ハンパねぇなー…。だけど傾斜路があるからには出来たはずだと。つまりこれ、ある意味ロストテクノロジーの再発見なのだ。

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「ロストテクノロジー」というと、何か現代の技術では再現不可能なものすごいもののように思うかもしれない。
でも実際は、ほんのちょっとしたコツやノウハウの積み重ねこそが、実は失われた「技術」の核心部分だったりするのだ。
この数十年年でさえ、多くのテクが失われていったことを思い出してほしい…

 目にも止まらぬ速度で公衆電話のキーを叩けるポケベル電信師とか。
 Windows付属のペイントでGIFアニメ作るGIFアニメ職人の技とか。
 2ちゃん系掲示板にしたAA職人のセンスとか。
 ニコニコ動画の字幕職人の手の早さとか。(これはまだあるのかな?)

言葉にして残すことの難しい、そういうちょっとした技の集大成が、古代のロスト・テクノロジーなんだと思うんだ。ピラミッド作るのに、大掛かりな装置も、人知を超えた力も必要ないんだ。斜面の作り方とそこで人がどう振舞うか、っていう話が必要なんだ。

こういう地味な発見で過去の秘密が解き明かされる感があるのほんと楽しい。
多分これから実証実験とかシミュレーションとかやるだろうから今後の研究に期待なのですよ。

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