今年は亥年なので、猪の飼育化とブタの話でも
タイトルどおり、今年も干支の話でも調べてみようかと思ったのだが、このジャンルぶっちゃけそんなに盛り上がっていないようで、あまり面白そうなネタがない。
何でかというと、
・イノシシの家畜化は比較的容易であり、現在も飼育種が逃亡→野生化→再飼育化、といったプロセスが再現されているため飼育化の過程に謎が少ない
・ブタ(家畜種)とイノシシ(野生種)の間は現在でも交雑可能であり頻繁に交雑しているため、飼育化された時期や地域を特定することの意味が薄い。ちなみに飼育化の起源地は複数あることがほぼ確定されている
・イヌやネコ、ウマなどと違いペットや種としてカルト的な人気があるわけではないため、「最古」争いがほぼ無い
といった理由。
イヌとかだと、最初に飼育化したのがどの地域かとか毎年ちがう説が出て論争繰り広げてるんですけどね。
で、ブタの飼育化の起源地は複数あることがほぼ確定されているという話だが、たとえば資料としてはこのへんとか。ヨーロッパのブタとイノシシは近い。アジアのブタとイノシシも近い。だがヨーロッパのブタとアジアのブタは遠い。
ブタとイノシシの遺伝子の違いは?
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3994
ただ、ウリ坊を捕まえれば家畜化が容易という話や、家畜ブタと野生のイノシシが容易に交雑できるという事実は、実は他の家畜でもおこりうる。たとえばオオカミの子は生まれ手間もない時に人間と暮らし始めればイヌと同じように人間に懐くし、家畜化されたイヌはオオカミと交配可能である。「最古の飼育化」だの「起源地」だのの学説争いが他の家畜ほど激しくないのは、やっぱり種としての"人気"の差、としか思えない。
なお、これをもう少し詳しく記載したのが以下になる。
イノシシがブタになるとき
https://jp-spf-swine.org/All_about_SWINE/AAS/43/43_49-57.pdf
また、たまに、「ブタは野生に離すとイノシシになる」という説をとなえる人があるのでそれもちょっと調べてみた。
結論から言うと、それはムリ。家畜としてのブタと、野生種のイノシシは、形質的に違いがある。ここでいう「形質」とは、牙の長さ、体毛の多さなどの部分だ。
確かに、野生に離したブタのうち、イノシシの形質が多く残っているものは先祖返りすることはあるらしい。が、イヌがいきなりオオカミにはなれず、オオカミっぽいイヌになってしまうように、ブタも、野に放たれたからといっていきなりイノシシにはならないようだ。
野生化したブタはノブタとなり、イノシシにはなれないのである。
あとオマケでこれね!
古代エジプトのブタ女神/先王朝時代の焼き物
https://55096962.seesaa.net/article/201710article_13.html
これの正体はほんと謎なんや。どういう状況で出土したんやろ。
ブタは神話の中では豊饒とか多産と結び付けられることが多いけど、エジプトでも最初はやっぱり豊穣の象徴、母なる天の女神ヌウトの象徴。それがいつの間にか破壊の神セトの象徴として、宗教的に忌まわしいもの扱いに切り替わるのが末期王朝あたり。
よく知られているとおり、イスラム教ではブタは禁忌の一つだ。古代エジプトの歴史の中でも、中東からの支配圧力が強まる頃になると宗教上でブタが忌むべきものへと変化していくのは面白い現象だなと思っている。
何でかというと、
・イノシシの家畜化は比較的容易であり、現在も飼育種が逃亡→野生化→再飼育化、といったプロセスが再現されているため飼育化の過程に謎が少ない
・ブタ(家畜種)とイノシシ(野生種)の間は現在でも交雑可能であり頻繁に交雑しているため、飼育化された時期や地域を特定することの意味が薄い。ちなみに飼育化の起源地は複数あることがほぼ確定されている
・イヌやネコ、ウマなどと違いペットや種としてカルト的な人気があるわけではないため、「最古」争いがほぼ無い
といった理由。
イヌとかだと、最初に飼育化したのがどの地域かとか毎年ちがう説が出て論争繰り広げてるんですけどね。
で、ブタの飼育化の起源地は複数あることがほぼ確定されているという話だが、たとえば資料としてはこのへんとか。ヨーロッパのブタとイノシシは近い。アジアのブタとイノシシも近い。だがヨーロッパのブタとアジアのブタは遠い。
ブタとイノシシの遺伝子の違いは?
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3994
ただ、ウリ坊を捕まえれば家畜化が容易という話や、家畜ブタと野生のイノシシが容易に交雑できるという事実は、実は他の家畜でもおこりうる。たとえばオオカミの子は生まれ手間もない時に人間と暮らし始めればイヌと同じように人間に懐くし、家畜化されたイヌはオオカミと交配可能である。「最古の飼育化」だの「起源地」だのの学説争いが他の家畜ほど激しくないのは、やっぱり種としての"人気"の差、としか思えない。
なお、これをもう少し詳しく記載したのが以下になる。
イノシシがブタになるとき
https://jp-spf-swine.org/All_about_SWINE/AAS/43/43_49-57.pdf
また、たまに、「ブタは野生に離すとイノシシになる」という説をとなえる人があるのでそれもちょっと調べてみた。
結論から言うと、それはムリ。家畜としてのブタと、野生種のイノシシは、形質的に違いがある。ここでいう「形質」とは、牙の長さ、体毛の多さなどの部分だ。
確かに、野生に離したブタのうち、イノシシの形質が多く残っているものは先祖返りすることはあるらしい。が、イヌがいきなりオオカミにはなれず、オオカミっぽいイヌになってしまうように、ブタも、野に放たれたからといっていきなりイノシシにはならないようだ。
野生化したブタはノブタとなり、イノシシにはなれないのである。
あとオマケでこれね!
古代エジプトのブタ女神/先王朝時代の焼き物
https://55096962.seesaa.net/article/201710article_13.html
これの正体はほんと謎なんや。どういう状況で出土したんやろ。
ブタは神話の中では豊饒とか多産と結び付けられることが多いけど、エジプトでも最初はやっぱり豊穣の象徴、母なる天の女神ヌウトの象徴。それがいつの間にか破壊の神セトの象徴として、宗教的に忌まわしいもの扱いに切り替わるのが末期王朝あたり。
よく知られているとおり、イスラム教ではブタは禁忌の一つだ。古代エジプトの歴史の中でも、中東からの支配圧力が強まる頃になると宗教上でブタが忌むべきものへと変化していくのは面白い現象だなと思っている。