意外と知らなかった、正教の国エチオピアの「多宗教事情」
なんか濃ゆい感じの本を見つけたので読んでみた。こういうニッチな本もあるのが日本の出版社のすごいとこなんやで。
この本は複数人で執筆されている。エチオピアの少数民族や、エチオピア正教いがいの宗教事情を研究している人がこんなにいたとは思わなかった。日本の研究者けっこう幅広い。
前段として説明しておくと、エチオピア正教というのはキリスト教の一派で、いわゆる東方系に分類される。近代になってからエジプトのコプト教(これも正教系)から分離独立しているのでコプトの影響も強いが、独自の教義や儀式も多い。西方系、いわゆるカトリックやプロテスタントといったお馴染みのキリスト教も伝道されているので、キリスト教徒の全てがエチオピア正教に属しているわけではない。また、近代まで「黒いユダヤ人」と言われたファラシャも同国内に存在していたが、現在ではすべてイスラエルに移住済みである。
アフリカの奥にありながら、かなり早い段階でキリスト教国として成立し、ヨーロッパでは伝説の「プレステ・ジョアンの国」(プレスター・ジョンとも)と言われたエチオピア。
しかしその実態は、思っていたより「多宗教」な国だったようなのだ。
まとめると…
・エチオピア正教が国家統合のためのツールとして使われてきた歴史。ローマにおけるキリスト教と同じ
・キリスト教が皇帝の神格化に使われていた
・政教分離は近代になってから。エチオピア正教が人々の生活まで規定するので、宗教のあり方としては、むしろイスラム教に近い
・聖人崇拝が盛ん。また、聖母マリア崇拝など、エチオピアに独特の伝統の多くが、14-15世紀と比較的新しい時代に作られている
・キリスト単性論に分類されることが多いが、エジプトと同じく実際は両正論で、神性と人性の結びつきについての考え方が西方系とは若干異なる
・エチオピアは基本的に多民族国家であり、現在エチオピアと一つにまとまっている中にも元々は別の王国だった地域があるため宗教のあり方も地方ごとに異なる。よく扱われる北部のエチオピア正教は、支配民族の宗教。
・エチオピアはエチオピア正教の国というイメージが強いが、北部はともかく他の地方では他宗教も多い。
東部はもともとイスラム諸侯の国が成立していてのちに統合されたこともありイスラム教徒おおめ。
現在のイスラム教徒比率は国の約3割
エチオピア正教=支配民族であるアムハラ族の宗教、改宗はかつての帝政への服従を意味する
イスラム教=帝政に従わない、自由
南部はキリスト教化された時期が遅く精霊信仰が強く残っており、近年ではプロテスタントに改宗する人もそれなりにいる
若者を中心に、改宗者の中には所属する部族の伝統を拒否する者もいる
精霊宗教=伝統、氏族、階級社会
プロテスタント=それらを無視した社会、近代的、欧米式
・主要な外貨獲得できる産物がコーヒーしかない
でもそのコーヒーの流通量自体がそんなに多くない
産業が育っていないため世界の中でも最貧国
・コーヒー豆の原産地とされるが、実は元はコーヒー豆をそのまま食べるとかしていた。
焙煎して飲み物にするやり方はアラビアで生まれて逆輸入された
・アフリカ特有の精霊信仰も実は地方では生き残っている
若い人ほど信じてなさそうな雰囲気だが
あとエチオピアのタナ湖に聖母マリアと聖家族が訪れたという伝説、何でタナ湖…と思っていたが、15世紀あたりにマリアさんめっちゃ推しの人がいて伝統と伝説をかなり盛った時期があったようなので、そのへんで話が作られてそう。祝祭日にマリアさん関連が異様に多いのが特徴。
正教徒が多いのは北部だというが、確かに正教系の有名な修道院なんかは北部に集中している。南部は色んな部族の暮らす、宗教も文化も入り混じる世界なのだ。そして東部はどちらかというとイスラム教寄り。なるほどなぁと思うとともに、遺跡だけ見てちゃその国の事情は判らんのだなとちょっと反省。
あと最貧国な理由もなんとなく理解した…
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/nousui_bunya/pdf/syoku_nihongo3.pdf
"主な輸出品目(農産物以外も含む)の輸出額全体に占める割合は、大きい順に、コーヒー生豆 26%、金 19%、油糧作物 15%、ナッツ類 8%、動物・家畜(生きているもの)7%となっており、これら主要 6 品目で輸出額全体の約 80%を占めるに至っている(いずれも 2011年の比率)。さらに、これら輸出額全体の 80%ほどを農産物及びその加工品が占めている。"
単価の安い輸出品目しかなくて輸入過多。せめて観光業に力入れればって話もあるけど、まず国内インフラをどうにかしないと観光地回れないし、いまんとこ外資のホテルにお客取られちゃったりしてるわけだ。これはなかなか、国家経営キツいなぁ。
この本は複数人で執筆されている。エチオピアの少数民族や、エチオピア正教いがいの宗教事情を研究している人がこんなにいたとは思わなかった。日本の研究者けっこう幅広い。
前段として説明しておくと、エチオピア正教というのはキリスト教の一派で、いわゆる東方系に分類される。近代になってからエジプトのコプト教(これも正教系)から分離独立しているのでコプトの影響も強いが、独自の教義や儀式も多い。西方系、いわゆるカトリックやプロテスタントといったお馴染みのキリスト教も伝道されているので、キリスト教徒の全てがエチオピア正教に属しているわけではない。また、近代まで「黒いユダヤ人」と言われたファラシャも同国内に存在していたが、現在ではすべてイスラエルに移住済みである。
アフリカの奥にありながら、かなり早い段階でキリスト教国として成立し、ヨーロッパでは伝説の「プレステ・ジョアンの国」(プレスター・ジョンとも)と言われたエチオピア。
しかしその実態は、思っていたより「多宗教」な国だったようなのだ。
まとめると…
・エチオピア正教が国家統合のためのツールとして使われてきた歴史。ローマにおけるキリスト教と同じ
・キリスト教が皇帝の神格化に使われていた
・政教分離は近代になってから。エチオピア正教が人々の生活まで規定するので、宗教のあり方としては、むしろイスラム教に近い
・聖人崇拝が盛ん。また、聖母マリア崇拝など、エチオピアに独特の伝統の多くが、14-15世紀と比較的新しい時代に作られている
・キリスト単性論に分類されることが多いが、エジプトと同じく実際は両正論で、神性と人性の結びつきについての考え方が西方系とは若干異なる
・エチオピアは基本的に多民族国家であり、現在エチオピアと一つにまとまっている中にも元々は別の王国だった地域があるため宗教のあり方も地方ごとに異なる。よく扱われる北部のエチオピア正教は、支配民族の宗教。
・エチオピアはエチオピア正教の国というイメージが強いが、北部はともかく他の地方では他宗教も多い。
東部はもともとイスラム諸侯の国が成立していてのちに統合されたこともありイスラム教徒おおめ。
現在のイスラム教徒比率は国の約3割
エチオピア正教=支配民族であるアムハラ族の宗教、改宗はかつての帝政への服従を意味する
イスラム教=帝政に従わない、自由
南部はキリスト教化された時期が遅く精霊信仰が強く残っており、近年ではプロテスタントに改宗する人もそれなりにいる
若者を中心に、改宗者の中には所属する部族の伝統を拒否する者もいる
精霊宗教=伝統、氏族、階級社会
プロテスタント=それらを無視した社会、近代的、欧米式
・主要な外貨獲得できる産物がコーヒーしかない
でもそのコーヒーの流通量自体がそんなに多くない
産業が育っていないため世界の中でも最貧国
・コーヒー豆の原産地とされるが、実は元はコーヒー豆をそのまま食べるとかしていた。
焙煎して飲み物にするやり方はアラビアで生まれて逆輸入された
・アフリカ特有の精霊信仰も実は地方では生き残っている
若い人ほど信じてなさそうな雰囲気だが
あとエチオピアのタナ湖に聖母マリアと聖家族が訪れたという伝説、何でタナ湖…と思っていたが、15世紀あたりにマリアさんめっちゃ推しの人がいて伝統と伝説をかなり盛った時期があったようなので、そのへんで話が作られてそう。祝祭日にマリアさん関連が異様に多いのが特徴。
正教徒が多いのは北部だというが、確かに正教系の有名な修道院なんかは北部に集中している。南部は色んな部族の暮らす、宗教も文化も入り混じる世界なのだ。そして東部はどちらかというとイスラム教寄り。なるほどなぁと思うとともに、遺跡だけ見てちゃその国の事情は判らんのだなとちょっと反省。
あと最貧国な理由もなんとなく理解した…
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/nousui_bunya/pdf/syoku_nihongo3.pdf
"主な輸出品目(農産物以外も含む)の輸出額全体に占める割合は、大きい順に、コーヒー生豆 26%、金 19%、油糧作物 15%、ナッツ類 8%、動物・家畜(生きているもの)7%となっており、これら主要 6 品目で輸出額全体の約 80%を占めるに至っている(いずれも 2011年の比率)。さらに、これら輸出額全体の 80%ほどを農産物及びその加工品が占めている。"
単価の安い輸出品目しかなくて輸入過多。せめて観光業に力入れればって話もあるけど、まず国内インフラをどうにかしないと観光地回れないし、いまんとこ外資のホテルにお客取られちゃったりしてるわけだ。これはなかなか、国家経営キツいなぁ。