怒りの苦行者が与えた罰が便秘だった理由とは…

マハーバーラタの抄訳をあさっていてふと気になったエピソードがある。聖仙チヤヴァナが、医療を司るアシュビン双神によって若返るというエピソードだ。

このエピソードでは、湖のほとりで苦行を積むうちに老いさらばえ、土に埋もれて蟻塚のようになってしまったチヤヴァナを、それと気付かずに面白いものがあると王女スカニヤーが茨で突っついてしまったところから始まる。怒った(?)チヤヴァナは、王女とともに来ていた父王の兵士たちをなんと便秘にしてしまう。正確には「大小便が出てこない」という状態らしいのだが、もよおしても出せないのはけっこうキツい。結果、仙人の怒りを解くために王は、美しい王女を仙人の妻として与えるのである。

…土くれの中に何かあるって茨の枝でつっつくのって、王女だいぶ幼いよねコレ。
しかもチヤヴァナは土の中から王女かわいいなーってガン見してたから突っつかれたんだしね。不審者がゴネて幼女を嫁に貰った事案じゃないのかコレ…。

とか思ってしまうのだが、健気な王女は夫とされた聖仙に献身的に仕え、のちにアシュビン双神の誘惑も撥ね退けて夫を若返らせることに成功するのである。



と、いう話なのだが、「なんで怒りの結果が便秘やねん」というのがかすかな疑問だったのだ。
兵士たちを皆殺しにしちゃダメなんか、とか、他の神話だと飢饉日照りとか疫病とか選択するよな、とか。

だが考えているうちに気が付いた…
これって王女を嫁に貰うための知能犯じゃん!!



パターン1・兵士を殺してしまった場合

王女の父親である王との関係がこじれる。また自分も悪者にされてしまう。
また他の神とか呼んでこられると面倒。

パターン2・疫病をはびこらせた場合

ターゲットの王女も巻き込まれるのでダメ。

パターン3・飢饉などの災害

効果が出るまで時間がかかるし、災害を避けさせるため王が娘を国外に出してしまう可能性がある。


⇒自分がめっちゃ怒ってることが気付いてもらえて、さらに死なない程度に兵士だけ痛めつけるには便秘はベストアンサーの一つ。便秘なら今日明日には死なないが、ガマンしてるとそのうち腸や膀胱が破裂して死ぬ。それまでの時間的猶予を与えてじっくり脅せる。


 聖仙チヤヴァナ なんて恐ろしい男・・・!


目的のために手段を選ばない奴はいるが、手段を選んで目的を達成するこの男かなりの知能犯である。そして幼な妻の信頼を得る方法も持っている。人の心を操るすべに長けているとでもいうのか。他の神話より罰が優しいな、とか思ってたけどやってることはやっぱり外道だった。神話の中のえらい人こんなんばっかりや。



なお、罰が「大小便が詰まる」だったバージョンはマハーバーラタのみであり、ラーマーヤナやリグ・ヴェーダでの展開は多少違っているようだ。ラーマーヤナでは王の一族に不和を起こさせるだけだというから、ある意味、兵士たちが連帯責任で便詰まりにされるよりは優しいやり方なのではないだろうか。

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