ツタンカーメン ~財宝に隠された真の素顔/見てみた

エジプトに新しく巨大な博物館「大エジプト博物館」が、日本からの多額の支援によって建設されようとしているのは、既に何度かネタにしているとおり。
その新しい博物館へ、カイロ市内にある旧博物館からツタンカーメンの遺物の輸送が開始されている。古いほうの博物館はとにかく狭いので、ほとんどの遺物は倉庫に仕舞いっぱなしで、全部そろってるのかどうかすら良くわからん状態になっていた。それが約百年ぶりに表に出てくるということ。

 要するに実家の押し入れの中を整理するプロジェクトみたいなもんですね


で、今までほぼ百年間、誰も研究もチェックもしていなかった遺物(一応リストには載ってるが詳細な写真すらないものも多かった…)がゾロゾロ出てくるので、新たな知見が次々と得られているという。というわけで、その番組を見てみた。

ツタンカーメン ~財宝に隠された真の素顔
https://natgeotv.jp/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/2598


見てたのは「新たな発見の数々 (原題:Treasures Rediscovered)」という回。大エジプト博物館に付属された遺物のラボに遺物が運び込まれ、各分野の専門家たちが調査するという話だ。

出て来ていた主な品は以下。いずれも既にニュースなどで放映されている内容なので、特に真新しいものではない。修復中の映像とか大エジプト博物館に収蔵されてる品々とかが見られるのは良かったんだけど、まあこの内容ならNHK特集でやってる番組のほうが分かりやすいかな、っていうくらい…。


 ・短剣
  鉄製と思われていたが隕鉄だった。ヒッタイトからの輸入品という説が消滅

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 ・戦車
  金箔の上に異国の敵が蹂躙される様子が描かれている。
  天蓋がついているなど、かなり装飾された品だったことが判明

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 ・皮鎧
 うろこ状のパーツを縫い合わせて作られている
 実用的な作りで、量産されていたことが伺える。

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ただこの番組の面白い(?)ところは、 ツタンカーメンは軟弱な王ではなく 戦う王だった と繰り返しアピールしているところである。

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戦車、短剣、鎧というチョイスは、副葬品に武器防具や戦争に関する品が多い、ということをアピールしたいためのラインナップである。ツタンカーメンの墓にそれらがあったということは、この王は戦場に向かう気合いのあった為政者だったはずだ、という主張。

ただ、これはあまりにも根拠が薄い。

というか、映像で見て分かるとおり、そして学者さんたちの調べていたとおり、ほとんどの武器防具は華美なほど装飾されていて、実用的ではない んである。
短剣なんてガラスや水晶、金で装飾されてゴテゴテですよ。貴重な鉄で出来た品だし、どっちかっていうと儀礼用でしょう。戦車にしても全面金箔貼りで、そんなもんで戦場に出ますかフツー。無理でしょ。金の重量どんだけですか(笑)

戦場に出なくなるにつれて戦闘用の道具が華美になっていく、これは日本の武将でも見られる現象。
戦国時代は小ぶりで機能的な鎧が、江戸時代になると象徴的な意味合いが強調されて大ぶりで手の込んだものになっていく。ツタンカーメンの墓に納められていた派手な武器防具は、それと同じではないかと思う。

そして、ツタンカーメンの父アクエンアテンが、王の威光を示すために戦車パレードを好んでいたことも忘れてはいけない。
副葬品の戦車と武器防具セットは、パレード用の品、と見做したほうが無難だろうと思う。



…という話は、以前にも書いたとおりで。


ツタンカーメンの副葬品の鎧に使用痕があるから、戦った王だったに違いない!→その根拠はありません
https://55096962.seesaa.net/article/201804article_4.html

色んな人が、自分の説に合うように様々なツタンカーメン像を好き勝手に描くので、番組の作りや出演者によって内容が違ってきてしまう。本当は出来るだけニュートラルに事実だけ流してくれればいいんだけど、最近どうも不要なドラマ仕立てで尺を稼ごうとするのが目立って困る。

極端な話、何も新しいことは判っていなくても、切り取る場所だけを変えて、前回放映したのと別のドラマ仕立てにして「新たな真実が判明!」って言っちゃえば、何も知らない人はそれで騙せちゃうからね…。



というわけで、映像は相変わらず良かったけど、中身はだいぶどうでもいい番組でした。
ツタンカーメンって言っとけば何でもウケると思うなよ。

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