コーヒー豆(アラビカ種)の原産国で、コーヒーセレモニーを体験しに行く
エチオピアといえばコーヒー豆の原産国。コーヒーのふるさととして知られており、観光客向けにも「コーヒーの起源」を売り込もうとしている。
というわけでコーヒーセレモニーを体験しにいってみた。
で、またここでもエチオピアン・ガイドさんの誤情報について書かなくてはならないのだが、勘違いしてはいけないのは以下の点。
・コーヒー豆のうち「アラビカ種」の原産地は確かにエチオピアだが、ロブスタ種とリベリカ種は原産地が別
・豆を炒って飲用する「カフェ」はエチオピアではなくイエメンから広まっていった。それ以前にエチオピアでコーヒー豆を「炒って煮だして飲む」という使用法があったかどうかは謎
・カフェという言葉の起源がエチオピアのカファの町というのは俗説、カフェ=カファはアラビア語起源
エチオピアン・ガイドさんが話すことは、基本的にエチオピア公式のプロバガンダだ。おそらく彼らは「コーヒーの起源がイエメンなんてとんでもない」という感じで目を剥いて反論してくると思うが、資料の内容も歴史も変えられない。というかアラビア半島のイスラム教徒の皆さんがコーヒーを飲む文化を成立させ広めていったという部分をすっ飛ばすと、なんだか良く分からなくなってしまう。
コーヒーの木の原産国はエチオピアでいいのだが、コーヒー豆から作る飲み物を「カファ」として広めたのはアラビア半島の人たちだよ、というのは、コーヒーに興味を持ってエチオピアに行く人は知っておくといいことがあると思う。具体的には、トルコなど別の国に行った時に、その国のコーヒー文化との繋がりがより良く理解できるようになる。
学術的な意味でコーヒーの起源について知りたい場合は、このあたりをオススメしておく。
あとエチオピアの主要作物は確かにコーヒー豆なのだが、大規模プランテーションで量産している国には効率で勝てないので世界的な輸出総量はブラジルやコロンビア、インドネシアに負けている。
エチオピアのコーヒーは、基本的に個人農家が個人で作れる量をちょびっとずつ作っているので、オーガニックといえば聞こえはいいのだが、自然のままに近い作り方をしていて、一種独特の風味を持つ。
それから、コーヒーを「ブン」と呼ぶのが現地語だとガイドさんに教えられるが、ブンという単語はアラビア語からの借用語で、エチオピア独自のコーヒーの呼び方は部族ごとに異なる。
エチオピアは多民族国家なので民族ごとに言葉が違う。そして、コーヒー豆を意味する言葉が部族ごとに異なることこそ、エチオピアで昔からコーヒー豆が様々に利用されてきた("カファ"としてではなく)ことを証明しているのだが、エチオピアン・ガイドさんはマニュアル通りにしか説明しないので、多分そのへんはすっ飛ばされてしまうのだ。色々勿体ない…。
というわけでコーヒーセレモニーの場面を。
今回のセレモニーは、観光客向けに行われている施設での体験だったが、これがまた長い…。
たっぷり1時間半は下準備というか、お湯を沸かしてコーヒー豆を炒って、というのを延々見ていることになり、一時間半後にようやく一杯目のコーヒーが回ってくる。そこから何杯か飲むことになるので、2時間半くらいかかるというのは本当のようだ。
これはうっかり体験ツアー申し込めないやつだね…。
これに出てしまうと半日潰れる…。
コーヒー豆を臼でついて潰すのとかは、見ていてかなりの力業。
その粉を素手で直接鉄瓶に放り込み、濃さを調整しながら煮出していくので、見た目的にかなり豪快なコーヒー道である。ちなみにコーヒーカップに注ぐ時もダバダバ零しながら豪快に注いでいくw
出来るまであまりにものんびりしているし、準備も片づけも時間がかかるので、今後エチオピアが豊かになっていくと、このセレモニーは廃れていくんじゃないかと思った。だってコーヒーミルでひいたほうが粉の粒が揃うし早いし何よりめっちゃ楽じゃん。
セレモニー中は乳香が焚かれ、お香のような香りが辺りに漂う。香りは好き嫌いが分かれると思う。
さて、現在は観光のウリともなっているコーヒーセレモニーだが、実はそんなに起源が古くないらしい。
古い文献に出てこないというのがその根拠だが、元々イスラム教徒たちが飲んでたものなので、キリスト教国のエチオピアで広まるのは遅かっただろうという話もある。そもそも庶民は20世紀に入るまでコーヒーを飲んでいなかったとも言われ、お作法などはアラブの影響が濃いという。
実際に体験してみるとまさにそれ。ベドウィンがお茶入れる作法とよく似てるなぁとか、小さなティーカップに高いところからお湯を注ぐアラブのお茶のお作法のまんまだよねとか、エチオピア独自で発展してきたものというより近隣の国から伝播したものが入り混じった感じがあった。
なので、このセレモニーの起源自体は、確かにそう古いものではないだろうなと思った。
ただし現在では「伝統」と化しているものなので、現地の風習や文化を味わうという意味ではいいかと思う。
なお肝心のコーヒーのお味は、というと… す っ ぱ い
そして底の方に粉がざりざりしている。濃さはトルココーヒーに似ているが、とにかく味がすっぱい。香料っぽい香りがする。
現地の人は塩を入れて飲むらしく、「マジか…」となったが、暑い国なので濃いぃコーヒーに塩分入れて飲むと元気になるとかあるのかもしれない。私は一杯でギブってしまったが、本来は3回くらい煮出して飲むものだとか。
お茶請けはポップコーンだった。
昔は小麦粉のお菓子があったらしいが、作るのがお手軽だからと最近はポップコーンが添えられるようになったという。トウモロコシがアフリカに伝来してからだから、これも最近の習慣だろう。
そしてお茶の器はなぜか中国製。
コーヒーセレモニーに限らずエチオピアで使われている陶器は中国製がとても多い。ろくろすらないお国柄なので、自国で手で土器を作るよりは、中国から安い工場製を大量輸入したほうが楽ということだろうか。
エチオピアでは何度もコーヒーを飲んだが、美味しいか? と言われると、ちょっと微妙。
味は濃いのだがとにかく酸っぱい。酸味が効きすぎていて、苦みなどの他の味が全部消えてる。(´・ω・`) コーヒー通の人は…どうなん…ですかね…。
中南米で出てくるコーヒーが全部ネスカフェだったことにちょっといじけて、産地のコーヒーが飲んでみたいとか言ってた時もあったけど、エチオピアの現地人が嗜むコーヒーちょっと独特すぎる。自分が一番おいしいと感じる(味の好みが合う)のは、やっぱりイタリアだ。イタリアのエスプレッソだ。「独特の」コーヒーを飲みたい時はエチオピアに、「単純に美味しい」コーヒーが飲みたい時はイタリアに行こう。
****
まとめ読みは こちら
というわけでコーヒーセレモニーを体験しにいってみた。
で、またここでもエチオピアン・ガイドさんの誤情報について書かなくてはならないのだが、勘違いしてはいけないのは以下の点。
・コーヒー豆のうち「アラビカ種」の原産地は確かにエチオピアだが、ロブスタ種とリベリカ種は原産地が別
・豆を炒って飲用する「カフェ」はエチオピアではなくイエメンから広まっていった。それ以前にエチオピアでコーヒー豆を「炒って煮だして飲む」という使用法があったかどうかは謎
・カフェという言葉の起源がエチオピアのカファの町というのは俗説、カフェ=カファはアラビア語起源
エチオピアン・ガイドさんが話すことは、基本的にエチオピア公式のプロバガンダだ。おそらく彼らは「コーヒーの起源がイエメンなんてとんでもない」という感じで目を剥いて反論してくると思うが、資料の内容も歴史も変えられない。というかアラビア半島のイスラム教徒の皆さんがコーヒーを飲む文化を成立させ広めていったという部分をすっ飛ばすと、なんだか良く分からなくなってしまう。
コーヒーの木の原産国はエチオピアでいいのだが、コーヒー豆から作る飲み物を「カファ」として広めたのはアラビア半島の人たちだよ、というのは、コーヒーに興味を持ってエチオピアに行く人は知っておくといいことがあると思う。具体的には、トルコなど別の国に行った時に、その国のコーヒー文化との繋がりがより良く理解できるようになる。
学術的な意味でコーヒーの起源について知りたい場合は、このあたりをオススメしておく。
あとエチオピアの主要作物は確かにコーヒー豆なのだが、大規模プランテーションで量産している国には効率で勝てないので世界的な輸出総量はブラジルやコロンビア、インドネシアに負けている。
エチオピアのコーヒーは、基本的に個人農家が個人で作れる量をちょびっとずつ作っているので、オーガニックといえば聞こえはいいのだが、自然のままに近い作り方をしていて、一種独特の風味を持つ。
それから、コーヒーを「ブン」と呼ぶのが現地語だとガイドさんに教えられるが、ブンという単語はアラビア語からの借用語で、エチオピア独自のコーヒーの呼び方は部族ごとに異なる。
エチオピアは多民族国家なので民族ごとに言葉が違う。そして、コーヒー豆を意味する言葉が部族ごとに異なることこそ、エチオピアで昔からコーヒー豆が様々に利用されてきた("カファ"としてではなく)ことを証明しているのだが、エチオピアン・ガイドさんはマニュアル通りにしか説明しないので、多分そのへんはすっ飛ばされてしまうのだ。色々勿体ない…。
というわけでコーヒーセレモニーの場面を。
今回のセレモニーは、観光客向けに行われている施設での体験だったが、これがまた長い…。
たっぷり1時間半は下準備というか、お湯を沸かしてコーヒー豆を炒って、というのを延々見ていることになり、一時間半後にようやく一杯目のコーヒーが回ってくる。そこから何杯か飲むことになるので、2時間半くらいかかるというのは本当のようだ。
これはうっかり体験ツアー申し込めないやつだね…。
これに出てしまうと半日潰れる…。
コーヒー豆を臼でついて潰すのとかは、見ていてかなりの力業。
その粉を素手で直接鉄瓶に放り込み、濃さを調整しながら煮出していくので、見た目的にかなり豪快なコーヒー道である。ちなみにコーヒーカップに注ぐ時もダバダバ零しながら豪快に注いでいくw
出来るまであまりにものんびりしているし、準備も片づけも時間がかかるので、今後エチオピアが豊かになっていくと、このセレモニーは廃れていくんじゃないかと思った。だってコーヒーミルでひいたほうが粉の粒が揃うし早いし何よりめっちゃ楽じゃん。
セレモニー中は乳香が焚かれ、お香のような香りが辺りに漂う。香りは好き嫌いが分かれると思う。
さて、現在は観光のウリともなっているコーヒーセレモニーだが、実はそんなに起源が古くないらしい。
古い文献に出てこないというのがその根拠だが、元々イスラム教徒たちが飲んでたものなので、キリスト教国のエチオピアで広まるのは遅かっただろうという話もある。そもそも庶民は20世紀に入るまでコーヒーを飲んでいなかったとも言われ、お作法などはアラブの影響が濃いという。
実際に体験してみるとまさにそれ。ベドウィンがお茶入れる作法とよく似てるなぁとか、小さなティーカップに高いところからお湯を注ぐアラブのお茶のお作法のまんまだよねとか、エチオピア独自で発展してきたものというより近隣の国から伝播したものが入り混じった感じがあった。
なので、このセレモニーの起源自体は、確かにそう古いものではないだろうなと思った。
ただし現在では「伝統」と化しているものなので、現地の風習や文化を味わうという意味ではいいかと思う。
なお肝心のコーヒーのお味は、というと… す っ ぱ い
そして底の方に粉がざりざりしている。濃さはトルココーヒーに似ているが、とにかく味がすっぱい。香料っぽい香りがする。
現地の人は塩を入れて飲むらしく、「マジか…」となったが、暑い国なので濃いぃコーヒーに塩分入れて飲むと元気になるとかあるのかもしれない。私は一杯でギブってしまったが、本来は3回くらい煮出して飲むものだとか。
お茶請けはポップコーンだった。
昔は小麦粉のお菓子があったらしいが、作るのがお手軽だからと最近はポップコーンが添えられるようになったという。トウモロコシがアフリカに伝来してからだから、これも最近の習慣だろう。
そしてお茶の器はなぜか中国製。
コーヒーセレモニーに限らずエチオピアで使われている陶器は中国製がとても多い。ろくろすらないお国柄なので、自国で手で土器を作るよりは、中国から安い工場製を大量輸入したほうが楽ということだろうか。
エチオピアでは何度もコーヒーを飲んだが、美味しいか? と言われると、ちょっと微妙。
味は濃いのだがとにかく酸っぱい。酸味が効きすぎていて、苦みなどの他の味が全部消えてる。(´・ω・`) コーヒー通の人は…どうなん…ですかね…。
中南米で出てくるコーヒーが全部ネスカフェだったことにちょっといじけて、産地のコーヒーが飲んでみたいとか言ってた時もあったけど、エチオピアの現地人が嗜むコーヒーちょっと独特すぎる。自分が一番おいしいと感じる(味の好みが合う)のは、やっぱりイタリアだ。イタリアのエスプレッソだ。「独特の」コーヒーを飲みたい時はエチオピアに、「単純に美味しい」コーヒーが飲みたい時はイタリアに行こう。
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まとめ読みは こちら