ファラオも飲んだ? 古代ビール再現! →古代ビールじゃないしファラオ関係ない

これもいつもの、「ギリギリでウソにならないタイトルの付け方でとりあえず人目を引こうとする」っていうやり方。そのへんのまとめサイトやキュレーター(笑)サイトじゃなくても、大手のWebニュースでもこういうしょーもないことやってくるので、タイトルだけじゃなく内容はきちんと読みましょう。というお話。


=== 内容まとめ===

この記事の元になっている研究は、古代の遺物から古代の酵母(イースト菌)を採取して培養して酒に使ってみたというもの。製法は現代ビールなので、ほぼ現代ビールです。

また、研究で採取された菌の一部がエジプトに「近い」場所で見つかっているだけで、エジプトでビールに使われていた菌とは言えません。なのでフォラオどころか古代エジプト一般人が飲んでたかどうかも相当びみょうです。

あと元記事にはどこにもファラオは出てきません。 日本語記事を書いた記者が、勝手に話を盛っただけです…。

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ファラオも飲んでた? 古代ビールを当時の酵母で再現 「味は最高」 研究
https://www.jiji.com/jc/article?k=20190524038646a&g=afp

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英語記事では全然タイトルが違います。
「イスラエルの研究者が古代の酵母でビールを醸造してみた」的な内容で、内容的にこっちが正解。

Israeli scientists brew beer with revived ancient yeasts
https://www.apnews.com/08a9fd19293c46ebaaff4e8ad22de85a

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そもそもこれ、イスラエルの研究なので、エジプトが絡む場所なんて「古代のビールはメソポタミアやエジプトでよく飲まれていた」という話くらいなんですよ。それと酵母を採取するのに使った酒の容器が発見された場所の一つてして書かれている、「エジプトに関係の深いネゲブ砂漠の北部で~」という部分。でもネゲブ砂漠ってイスラエルとヨルダンの間にある砂漠のことなんですよ。エジプトからだいぶ離れてます。確かに全盛期のエジプトで言えばエジプトの版図内だけど、「日本と関連の深い樺太」とか「日本と関連の深い済州島」とか言うくらいのノリで、「確かに関連は深いだろうけど別に近くは無いし日本でも無いよな…」という感じ。関連づけるのはギリギリ。

もちろんファラオが飲んだ云々は、どこのソース探しても出てきません…。
まあそりゃそうだろ、だって記事内で触れられてるエジプトの遺跡ってEn Besorなんだもの、そこはエジプトからパレスチナ方面への街道の出口。いわば古代の国境線沿い。なのでエジプトの壺が出て来たからといってエジプト人のものかどうか微妙なラインかと…。

(遺跡の紹介)
https://www.penn.museum/sites/expedition/en-bensor/

(たぶんこのへんを研究に使ったのだと思う)
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1179/tav.1990.1990.2.144?journalCode=ytav20

エジプト全く無関係というわけではないけど、エジプト一般人ですら怪しいのにファラオは話盛りすぎだし、盛り付ける方向としてもおかしい。というか話を盛るな、原文に忠実に出してくれ。


ちなみに、古代エジプトでビールに使われていた小麦を使ったから古代ビールだ!! とか言って売り出された「ホワイトナイル」って銘柄もありますが、これも原料変えただけで、フツーに現代ビールです。
http://kizakura.co.jp/ja/prod_data/info.php?type=items3&id=IC000059

酵母だけ変えるのもこれと一緒。製法が現代ビールなら、出来上がってくるのは現代ビール。
古代ビールの何が難しいかというと、発酵過程の手順が分かんないからですよ。同じ原料でも手順変えれば出来てくる酒が違うのは酒飲みの皆さんご存知でしょ。だいたい、作る場所によって水の成分も大きく変わります。酵母とか麦だけ変えても古代と同じものは出来ませんよ…。

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