古代エジプトの動物ミイラは養殖? 天然? DNA分析と論争の行方

古代エジプトでは、末期王朝あたりの時代になると動物のミイラが大量に作られ、神殿で供物として売られるようになる。(日本の神社でいうところの、3000円払って玉串を奉納する感じのノリ)
神の化身とされた神聖な動物でゲン担ぎをしていたわけだが、そのミイラの原料となる動物たちは、長年、人工的に飼育されたものだろうと考えられてきた。しかし飼育場の跡などは見つかっておらず、飼育していたのか野生のものを捕まえまくっていたのかは謎だった。

それについて、ミイラのDNAから分析してみようというなかなか斬新な研究が行われていたようだ。

英語記事だとこのへんとか。

Genetic analysis of sacred ibis mummies sheds light on early Egyptian practices
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2019/11/genetic-analysis-of-sacred-ibis-mummies.html#KS5tw82ZyF78gtdv.99

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https://cosmosmagazine.com/archaeology/ancient-egyptians-ibis-mummies-were-wild-birds

日本語の記事だとこれ。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/111500663/?P=1


対象となったのは古代エジプトの前600-250年のトキのミイラで、分析したのはミトコンドリアDNA。分析対象が膨大だったにも拘わらず、うまく検出できているのが14体だけのようなので、元々ミイラはDNAの残りが非常に悪いにしても打率はあまりよくない。その古代のミトコンドリアDNAの「多様性」と、現代の野生のトキのミトコンドリアDNAの「多様性」を比較している。

…というと、「それ比較してどうなんの?」となりそうなので、もうちょっと説明する。

ミトコンドリアDNAは母系で遺伝する。つまり、一羽のトキから生まれたヒナは、全羽、母親と同じタイプのミトコンドリアを持つことになる。もしトキを飼育して増やしていたのなら、ミイラになったトキのミトコンドリアは統一されていくんじゃないか、ということ。だが実際は野生ものと同じように様々なタイプのミトコンドリアDNAが検出されたので、実際はトキの飼育をしていたわけではなく、毎回捕獲していたのでは。というのが、今回の研究結果なわけ。

しかしこれ、記事の中にもあるように、実はちょっと論争になっている。
なぜなら、エジプトではネコにしろイヌにしろトキやトガリネズミやワニにしろ、あまりにも大量の動物ミイラが見つかっているからだ。毎回捕獲していたならそんなに大量生産できただろうか? そして雛などの未成熟の個体がミイラにされることは少ないはずだ。

そして、サンプルとなったのがたったの14羽、しかも時代や場所をわざわざバラけさせてしまったのが話をややこしくしている。
離れた場所で見つかったトキのミイラは、たとえトキの飼育場から来ていたとしても、別々の飼育場だったかもしれないからだ。
もし人工的にトキを増やしていたのかどうか調べたいのなら、なるべく同じ時代の、近い場所のミイラのサンプルを大量に調べたほうがいい。もし飼育場で増やしていたなら、ミトコンドリアDNAの種類は野生のものに比べて明らかに多様性が少なくなるだろうし、毎回捕獲していたのなら、多様性は変化ないままだろう。




というわけで、この研究はちょっとやり方がマズいと思うのだが、実際にトキを毎回捕獲していた可能性もないわけではない。
トキは渡り鳥なので、渡りの習性にあわせて罠をかければ案外かんたんに採れてしまうからだ。エジプトでは、つい最近まで渡り鳥を一網打尽にする「かすみ網猟」が行われていて、環境保護団体などに睨まれていた。

https://tokyo.birdlife.org/archives/world/2298

無差別に狩った鳥のうち、食べられるやつは市場に並び、ペットショップに売れるやつはペットになり、はく製や羽根に変わるものもいる。古代にも同じように、とりあえず鳥全部とっちゃって売れるやつは神殿に売ろ! みたいな商売してた人がいたかもしれない。でも、もしそんなことをしていたなら、生態系にはかなりのダメージだったと思う。


とりあえず、この研究は、もうちょっとサンプル集めないと何も結論か出ないんじゃないかなぁって思います。

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