メソポタミアの書記、腕鍛えられてない? 粘土板に文字を書く時の重量負荷を計算してみる

どうでもいいことなんだけど前からすっげー気になってることがある。

 メソポタミアの書記って何でいつも立ったまま文字書いてるんだろう?
 それ重くない?


壁画に残る書記の姿は、いつも立って、片手に何か板のようなもの、片手に葦ペンを握りしめている。
もしくは椅子に座ってひざの上に粘土板置いてる座像もあるが、粘土板の重量によってはかなりの苦行。

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一方で、エジプトの書記は大抵座って文字を書く姿になっている。
書くものがパピルス紙なので立ったままだと書きづらいという都合もあっただろうし、そもそも紙であれば軽いのでひざに載せても負担にはならない。

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果たしてメソポタミアの書記たちは、一体どれくらいの重量を片手で持っていたのだろうか…。
というわけで長年の疑問(?)を解決すべく、サンプルを探してみた。ここはやはり実際の粘土板の重さから計算してみるのがいいだろう。

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厚さ2cmの粘土板の場合

 5.9cm x 4.5cm= 26.55㎠
 53g ÷ 26.55 = 1.996g(1㎠あたりの重さ)

厚さ2.5cmの粘土板の場合

 8.5cm x 4.5cm= 38.25㎠
 104g ÷ 38.25 = 2.712g(1㎠あたりの重さ)


粘土板の厚さによって差が出る。これを、ある程度長い文書が書けそうな、20cm×15cmの粘土板の大きさで計算してみると…

厚さ2cmでタテ20cm、ヨコ15cmの粘土板の場合

 20cm x 15cm x 2.0g = 600g

厚さ2.5cmでタテ20cm、ヨコ15cmの粘土板の場合

 20cm x 15cm x 2.7g = 810g

かぼちゃ半分が約600g、白菜ひと球が約1000gという目安から考えると、B5サイズよりちょっと小さいくらいの粘土板で厚さ2cmならかぼちゃ半分くらい、厚さ2.5cmならそれより重く、白菜ひと球よりは軽いくらい。大きさに比例して厚みも増すのなら、さらに重たくなるかもしれない。

かなりザックリした計算で、まともに重量を研究するなら平均的な粘土板の大きさや厚さの統計を考慮したほうがいいのだが、とりあえず「思ってたよりは軽いけど、ずっと片手で持ちっぱ勤務はキツいだろ…。」という結論に達した。というかよく考えたらこれは現状の乾いた状態で、文字を書く段階では水分も含んでいるはずだから、文字がかける柔らかい状態なら、この何倍か重たいはず。ぷるぷるしてちゃ文字は書けないし、メソポタミアの書記さんは腕鍛えまくってたに違いない。

というか持ち運ぶ用の粘土板に小さいのが多い理由もなんとなく察した。
大きいやつは重たすぎるんだ…。持てないほど大きいタイプの粘土板は清書して保存する用だ、多分。

↓このくらいのサイズだと手に持って書ける。というか手元で書かないと文字が小さいので書きづらい
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粘土板という筆記具を使う場合の重量的な制約がなんとなく見えたし、おそらく古代メソポタミア世界の書記は腕を鍛えてないとだいぶ辛い。

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あと、すげーどうでもいいんだけどメソポミアって夏けっこう暑いんですよね。
てことは夏は、汗で粘土板が手や腕に張り付く
つ、辛い…!

粘土板…そのへんの泥で作れるのは楽でいいとしても、筆記具としてはかなりクセがあるというか、使いどころ限定されそう…。

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