研究職の国際就職戦線。「海外で研究者になる」

何で手に取ったのか良く分からないが、たまに変わったジャンルの本も読みたくなる。
というわけで、海外の大学に就職したい研究者むけのハウツー本とも言うべき、こちらを読んでみた。色んな国の事情が出てくるので、もしかすると研究職以外でも海外就職を考えている人には一つの参考になるかもしれない。

海外で研究者になる-就活と仕事事情 (中公新書)
海外で研究者になる-就活と仕事事情 (中公新書)

著者は元・東京大学の先生だった人で、現在はイギリスで就職している。
ある程度、日本の大学の事情と海外の大学の事情を知っている状態だ。だからこそ、「イギリスの大学は給料か高いが税金も高い」とか「学生からの授業の評価が大事なので邪険に扱えない」といった現実的な苦労話も出てくる。また、欧米では残業はしない、なんていうのは嘘で、キャンパスで仕事してないだけで家に持ち帰ってやっているとか、日本の科研費のように比較的簡単に研究資金が貰えるわけではなく一年中資金獲得のための申請を書き続けている人もいるとか、日本のほうが楽なんだろうな、という点も見える。ツイッター()とかでさんざん海外スゴイだけ吹聴する人よりははるかに平等だ。

また、著者一人の意見だけでなく、イギリス一か国の事情だけでもなく、欧米を含む中米やアジアの事情も複数人へのインタビューから語られているのも魅力的だ。香港のほうが給料がいいからと移籍する研究者はいるが、香港は実は物価、とくに家賃がかなり高いので、単純に給料の額面だけでは比較できない、とか。考古学で他国の研究者が中米の発掘をしたい場合は、その国の研究者を共同研究者として雇う必要があるのと、経済的に豊かではないこともあり国からの補助金などが得にくいので、中米で就職すると他国のお金をアテにすることになる、とか。

全般的に言えるのは、就職したいと思う国の事情について詳しくなければそもそも話が始まらないということ。また、その国の研究者に知り合いを作ると有利なようだ。

 そう、研究者の就職は、実は 優秀な研究を出来る人が採用されるわけではない。

コネや根回しも大事。下準備も大事。最初から採用する人が決まっているのに出来レースで採用の募集がかかることもあるという。これは訳があって、研究一筋だけでは他の教員や生徒との折り合いがつかないこともあるため、大学ではやっていけないのだという。つまり研究者といえど企業に就職するのと同じように人柄審査などがあるわけだ。(このへんのやり方もお国柄があるようだが)

日本の研究者は英語力を除いても自己アピールやコミュニケーション力に劣るといわれるが、実際、それが無ければ海外では就職できないし、そもそも学会発表や人脈・コネづくりも出来ないのではないか。言われてみると至極当たり前なのだが、案外その当たり前から逃げている学生さんは多いような気がする。そんな人にとっては、何日もかけて面接されるところには就職できないだろう。


日本の大学と他の国の大学の違いや、日本のほうが便利なところ、他国の大学のほうが良さそうなところなど、色々と知ることが出来る面白い本だった。自分は研究者ではないが、これからの時代、いつなんどき海外で働く機会がくるとも限らない。ていうか自社の短期海外赴任枠で飛ばされそうになったことは既にある…。
そんな時、もしかしたら役に立つかもしれない先人たちの体験談。




(そういやインドの話は出てこなかったな…インドの大学って他国から赴任出来ないのかな…言語の壁…?)

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