天空の国チベット ~青海省・西寧

さて、チベットの玄関といえば、中国に占領される以前の"首都"だったラサだが、そこにたどり着くには大きく分けて空路と陸路の2つがある。
空路だといきなり3,600m以上の場所に降り立つことになり、高山病は避けられない。が、陸路で多少順応しておけば、すこし確率は下げられる。
何より自分は、青海省と西蔵自治区(チベットのこと)を結ぶ、青蔵鉄道というものに乗ってみたかった。

青蔵鉄道については、ググれば色々と情報は出てくると思う。
中国さんご自慢の高速鉄道の一路線で、観光で行くお金持ちは寝台列車に乗り、ラサに巡礼に行くチベット人など近所の人たちは座席のみの列車に乗る。乗る駅にもよるが、西寧(シーニン)からラサまで約21時間と、とても長い時間を車内で過ごすことになる。お察しの通り切符の値段はけっこう高い。

で、まずは上海で乗り継ぎして西寧まで辿り着く。
空港でガイドさんと合流して、そこからパッケージツアーの観光開始だ。

西寧の時点で高度は2,000mを越えており、実は最低気温はラサよりも低い。
ここから本気の冬装備が必要となる。

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空港には高度3,000m以上で飼育されるヤクという牛が宣伝されている。
ヤク牛の肉の入った肉ラーメンはここの名産のようなもので寒い日には美味しい…。

実はこの青海省にも、チベット族の人が沢山住んでいる。
しかしラサから遠く離れており、元々部族が若干異なるため、話し言葉はほぼ通じないのだという。(書き言葉は同じなので筆談は可能) この現象は、四川省や雲南省など現在の「チベット自治区」の外に住むチベット族全般で発生しており、また、チベット自治区内でも地方によって方言の差異があるらしい。これは日本国内でも東北弁と京都弁と琉球弁の違いがある、というようなニュアンスだろうか。いちおう標準語はラサで話されているチベット語だが、ラサのチベット人が他の地域のチベット人と喋る時には、漢語や日本語(日本語ガイドさんの場合)など、別の言語で意思疎通をはかる場面が見られる。


青海省でオススメの観光地は「西蔵文化博物館」(TIBETAN CULTURE MUSEUM)。
入場料は30元くらいだったか、めちゃくちゃ空いていて人がいないわりに、かなり見どころのある展示があった。3Fのタンカ(仏画)を売りにしているようだが、特に古いものでもないのでぶっちゃけそこはそれほどでもなく、2Fの考古学資料と民族衣装がポイント。
各地に住むチベット族の衣装を展示しているフロアが凄いのだ。

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衣装には子安貝が縫い付けられているものが多い。
海から遠く、海を見ないまま一生を終えることも多いチベット人にとって、貝はよほど貴重なものだったのか。
また、寺院の巡礼者の中には、実際にここに展示されているものに近い晴れ着姿の人もいたり、このままの細いみつあみを重ねた髪型の人がいたりして、おおーっ となる。

尚、一番印象に残ったのは、こちらのモヒカンのラマ僧でした…w

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ここには、中国の「闇」を感じさせてくれる展示もひっそり紛れている。
中国の西の方に住む部族一覧と、それぞれの部族の指導者の顔写真"晒上げ"があるのだが、説明文を読むと「愛国」「忠国」といったワードが飛び交い、う、うん…。みたいな感じになる。チベット族の指導者にはダライ・ラマなんて影も形も出てこない。ちなみにチベット自治区内では亡命しているダライ・ラマ14世の話題は「禁止」。ガチで盗聴器ついてるので、試してみたい人は試してみるといいと思います、自己責任で。


青海省には回族、つまりイスラム教徒も多い。
イスラム教徒の街というのがあって、そこに行くとちょっぴり中東ライクな街を見ることができる。イスラム教の寺院もあり、普通にアザーンが流れている。暑い国と違いここはめちゃくちゃ寒いので、みんなダウンを着こんで礼拝にやってくる。

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中国国内はどこもそうだが、宗教施設の周りは特に監視カメラが多い。
ぱっと撮っただけでも必ず数か所にカメラが見える。何かあった時に怪しい人間を追跡するためなのだろう。さすがは監視国家。

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また、中国は「スローガンの国」でもあるため、街中のあちこちに、それはそれはもうしつこいくらいに、お馴染みの赤文字でスローガンが書かれまくっている。これぞ中国! とはいえ、あとから考えてみると、チベット自治区内に比べれば、ここはまだスローガンが少なめなほうであった。


この日は西寧を一日観光して、夜便の青蔵鉄道でラサまで移動予定。
日が暮れる頃に駅に到着すると、駅はものものしい警備の中にあった。べつに最近テロがあったとかではなく、中国の鉄道駅はどこも警備が厳しく、外国人は長距離切符を簡単に買えないようになっている。自分も、切符は代理店を通して買ってもらった。
青蔵鉄道の乗り方や列車の旅についてはまた次回。

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続く

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