天空の国チベット ~ラサの見どころ
ラサの見どころというタイトルをつけたが、一般的な意味での見どころではない。
というかそういうの求めている人は普通の旅行案内でも見て欲しい。
まず見どころとして中国人街とチベット人街の雰囲気の違い。
ラサ周辺は両者が半々に住んでいて、中国人は中国政府から命じられて補助金もらって移民してきている人たちだ。居住するところは新規で政府が建ててくれた家。なので中国人街は新しいビルが立ち並んでおり、チベット式の家の塗り分けなどは行われておらず、基本的に中国人しか住んでいない。
子育て支援とかでマンション群の中に遊園地作られてるのは、さすがにどうかとちょっと思ったw
チベット人街は家の壁が真っ白に塗られていて窓枠が黒い。強烈な日差しと寒冷な気候の高地ならではの色合い。
家の色合いや雰囲気が全く違うので街が二分されているのがすぐに判る。なお民族衣装の人が出歩いているのもチベット人街。
ツアーで連れて行かれるレストランはほとんどが中華料理屋で、チベット人の店には連れて行ってくれないが、ネパールが近いということでルパール料理の店や、インドから入ってきたというカレーの店(インドカレーなのでスープみたいなやつ)はある。
また外資のファストフードとしてケンタッキーとピザハットがあった。意外と現地の人も買ってるから驚き。
そして何より密かな見どころとして、これまでの写真にも散々写っているが、監視カメラの多さはぜひ堪能してもらいたい。
というか裏路地にまで仕掛けられていて。何でこんなとこにあんの?? みたいな疑問さえ浮かぶ。監視国家中国の面目躍如といった感じ。ちょっとかわいい感じのオブジェに擬態しているやつもあったりして、一応は景観に配慮してるっぽいところも。
もちろん人間の監視もいっぱいいる。カメラを向けると怒られるらしいのだが、あまりにも居すぎるので風景を撮ると普通に入り込む。
尚、カメラで映すなとはいわれるのだが、見ているだけだと別に何も言われない。
じーっと装備などを見ていると、道に迷ったの? みたいに声かけてくれる人がいたり、気にせずスマホゲーでひたすら遊んでいる(!)人がいたり、熱いお茶飲みながらおしゃべりに夢中で周囲見て無かったりと、公僕の様態も色々。たぶん彼らの多くは、「何かあったとき」に上から指示があってはじめて動きだすタイプなんだろうなと思った。普段はなんとなくそこにいるだけ。いるだけで高いお給料をもらえるのでわりといい商売なのかもしれない。
ただ、ラサなどチベット各地に移住してきている中国人にも苦労はあるという。
まず標高が高い。クッソ寒い。
標高的に富士山より高いくらいの場所なので、空気が薄い上に曇りの日は氷点下10度より下まで下がる。そして冬場は降雨がないため極端に乾燥している。
一週間ほどチベットに滞在して分かったのだが、「高地沙漠」の言葉そのままに、とにかく乾燥がヤバいのである。
保湿クリームを塗っても指が割れていくし、リップクリームなしでは唇が割れてしまう。日が出ると日焼けがハンパない。そして高地は体から水分がどんどん蒸発していくため、水を飲み続けないとすぐに倒れてしまう。あまりに過酷な環境のため、冬になると中国人の公務員はみんな低地に帰ってしまうという。冬場のチベットには、住民・観光客とも中国人が少ない。
中国さんは公務員をチベットに送り込む際に、高度に応じたお手当を出しているというが、日本でいう僻地手当や離島手当のようなものだろう。そうでもしなきゃ人が集まらないのだ。
チベットでは、強制併合したチベットをいかに「中華人民共和国」システムに押し込むか、という、中国の苦労をあちこちで垣間見ることができる。
移住者を増やし、監視をし、言論弾圧や思想教育を繰り返し、それでもまだ納得のいく結果が出せていない。だから寺院の入り口には必ず監視を置くし、寺の壁にスローガンを貼り付ける。そもそもチベットは元は吐蕃王国だった場所で、かつては中国の一王朝に迫る権勢を誇っていた。中国文化からの影響を受けている部分もあるとはいえ、たかが50年やそこらで確固たる文化や長い信仰の歴史のある地域を完璧に制御下に置こうとするのが無理だろう。
チベットにも変化の波は押し寄せている。僧侶の数が制限されて極端に減らされていたりする(ポタラ宮ではたったの50人!)ことから、文化の継承という面では難しい時代にあると思う。
しかし、イキってばんばんスローガン掲げまくってる前を、昔ながらの巡礼のやり方でのんびり参拝している地元の人たちを見ると、うんまぁあと50年かけてもここが中国になるかっていうと、ならないだろうなぁ…という思いのほうが強かった。中国はチベットの同化のためにコストを払い続けるだろうが、果たして、そのコストに見合うだけの成果は得られているのだろうか。なんだか逆に中国さんのほうを心配したくなる状況だった。
最後に、特にラサを観光する上でとても大事なことを一つ。
中国を旅行する際のコツとして「思想は表に出さなければ、持っていることが分からないので規制されない」。
つまり知っていても敢えて口にしないのが大事である。道端で、デカい声で中国共産党のチベット支配を批判するとかNG中のNG。
そういう場合は、自分ではなく現地ガイドさんに迷惑がかかる。チベット人のガイドさんたちは、「何を言っていいか」「いけないか」を教育された上でライセンスを貰っている。つまり言いたくても言えないことは沢山あると最初から知っておくべきなのだ。彼ら彼女らは普通に見張られてもいるし、何か粗相をしでかした客がいた場合、誰がツアーガイド(責任者)だったのかと探られて吊るしあげられることになる。
だから、「ダライ・ラマの亡命についてどう思いますか」のようなことをダイレクトに質問するのは失礼極まりない。事前に勉強しておくこと、直接言わなくても言い回しから察することは大事。
(たとえば、「xx寺の古い仏像は文化大革命までは存在しました」「xx寺では文化大革命で仏像が破壊されました」「古い仏像はxx寺にありましたが、文化大革命で消失しました」と言い方を変えてなぜか3回繰り返している時は、それが重要な事項なのだと察することが出来る。)
(「ここでは言えないです」「私は知りません(明らかに知っていることに対して)」と言っている時は、盗聴器が仕掛けられている。実際、後日「今なら言えます」と教えてくれたことがある)
中国には思想や言論の自由は存在しない。
外国人でも容赦なく拘束されて行方不明になる。ニュース見てると分かると思うけど。
そういう国だとリスクを理解した上で旅行してください。
というかそういうの求めている人は普通の旅行案内でも見て欲しい。
まず見どころとして中国人街とチベット人街の雰囲気の違い。
ラサ周辺は両者が半々に住んでいて、中国人は中国政府から命じられて補助金もらって移民してきている人たちだ。居住するところは新規で政府が建ててくれた家。なので中国人街は新しいビルが立ち並んでおり、チベット式の家の塗り分けなどは行われておらず、基本的に中国人しか住んでいない。
子育て支援とかでマンション群の中に遊園地作られてるのは、さすがにどうかとちょっと思ったw
チベット人街は家の壁が真っ白に塗られていて窓枠が黒い。強烈な日差しと寒冷な気候の高地ならではの色合い。
家の色合いや雰囲気が全く違うので街が二分されているのがすぐに判る。なお民族衣装の人が出歩いているのもチベット人街。
ツアーで連れて行かれるレストランはほとんどが中華料理屋で、チベット人の店には連れて行ってくれないが、ネパールが近いということでルパール料理の店や、インドから入ってきたというカレーの店(インドカレーなのでスープみたいなやつ)はある。
また外資のファストフードとしてケンタッキーとピザハットがあった。意外と現地の人も買ってるから驚き。
そして何より密かな見どころとして、これまでの写真にも散々写っているが、監視カメラの多さはぜひ堪能してもらいたい。
というか裏路地にまで仕掛けられていて。何でこんなとこにあんの?? みたいな疑問さえ浮かぶ。監視国家中国の面目躍如といった感じ。ちょっとかわいい感じのオブジェに擬態しているやつもあったりして、一応は景観に配慮してるっぽいところも。
もちろん人間の監視もいっぱいいる。カメラを向けると怒られるらしいのだが、あまりにも居すぎるので風景を撮ると普通に入り込む。
尚、カメラで映すなとはいわれるのだが、見ているだけだと別に何も言われない。
じーっと装備などを見ていると、道に迷ったの? みたいに声かけてくれる人がいたり、気にせずスマホゲーでひたすら遊んでいる(!)人がいたり、熱いお茶飲みながらおしゃべりに夢中で周囲見て無かったりと、公僕の様態も色々。たぶん彼らの多くは、「何かあったとき」に上から指示があってはじめて動きだすタイプなんだろうなと思った。普段はなんとなくそこにいるだけ。いるだけで高いお給料をもらえるのでわりといい商売なのかもしれない。
ただ、ラサなどチベット各地に移住してきている中国人にも苦労はあるという。
まず標高が高い。クッソ寒い。
標高的に富士山より高いくらいの場所なので、空気が薄い上に曇りの日は氷点下10度より下まで下がる。そして冬場は降雨がないため極端に乾燥している。
一週間ほどチベットに滞在して分かったのだが、「高地沙漠」の言葉そのままに、とにかく乾燥がヤバいのである。
保湿クリームを塗っても指が割れていくし、リップクリームなしでは唇が割れてしまう。日が出ると日焼けがハンパない。そして高地は体から水分がどんどん蒸発していくため、水を飲み続けないとすぐに倒れてしまう。あまりに過酷な環境のため、冬になると中国人の公務員はみんな低地に帰ってしまうという。冬場のチベットには、住民・観光客とも中国人が少ない。
中国さんは公務員をチベットに送り込む際に、高度に応じたお手当を出しているというが、日本でいう僻地手当や離島手当のようなものだろう。そうでもしなきゃ人が集まらないのだ。
チベットでは、強制併合したチベットをいかに「中華人民共和国」システムに押し込むか、という、中国の苦労をあちこちで垣間見ることができる。
移住者を増やし、監視をし、言論弾圧や思想教育を繰り返し、それでもまだ納得のいく結果が出せていない。だから寺院の入り口には必ず監視を置くし、寺の壁にスローガンを貼り付ける。そもそもチベットは元は吐蕃王国だった場所で、かつては中国の一王朝に迫る権勢を誇っていた。中国文化からの影響を受けている部分もあるとはいえ、たかが50年やそこらで確固たる文化や長い信仰の歴史のある地域を完璧に制御下に置こうとするのが無理だろう。
チベットにも変化の波は押し寄せている。僧侶の数が制限されて極端に減らされていたりする(ポタラ宮ではたったの50人!)ことから、文化の継承という面では難しい時代にあると思う。
しかし、イキってばんばんスローガン掲げまくってる前を、昔ながらの巡礼のやり方でのんびり参拝している地元の人たちを見ると、うんまぁあと50年かけてもここが中国になるかっていうと、ならないだろうなぁ…という思いのほうが強かった。中国はチベットの同化のためにコストを払い続けるだろうが、果たして、そのコストに見合うだけの成果は得られているのだろうか。なんだか逆に中国さんのほうを心配したくなる状況だった。
最後に、特にラサを観光する上でとても大事なことを一つ。
中国を旅行する際のコツとして「思想は表に出さなければ、持っていることが分からないので規制されない」。
つまり知っていても敢えて口にしないのが大事である。道端で、デカい声で中国共産党のチベット支配を批判するとかNG中のNG。
そういう場合は、自分ではなく現地ガイドさんに迷惑がかかる。チベット人のガイドさんたちは、「何を言っていいか」「いけないか」を教育された上でライセンスを貰っている。つまり言いたくても言えないことは沢山あると最初から知っておくべきなのだ。彼ら彼女らは普通に見張られてもいるし、何か粗相をしでかした客がいた場合、誰がツアーガイド(責任者)だったのかと探られて吊るしあげられることになる。
だから、「ダライ・ラマの亡命についてどう思いますか」のようなことをダイレクトに質問するのは失礼極まりない。事前に勉強しておくこと、直接言わなくても言い回しから察することは大事。
(たとえば、「xx寺の古い仏像は文化大革命までは存在しました」「xx寺では文化大革命で仏像が破壊されました」「古い仏像はxx寺にありましたが、文化大革命で消失しました」と言い方を変えてなぜか3回繰り返している時は、それが重要な事項なのだと察することが出来る。)
(「ここでは言えないです」「私は知りません(明らかに知っていることに対して)」と言っている時は、盗聴器が仕掛けられている。実際、後日「今なら言えます」と教えてくれたことがある)
中国には思想や言論の自由は存在しない。
外国人でも容赦なく拘束されて行方不明になる。ニュース見てると分かると思うけど。
そういう国だとリスクを理解した上で旅行してください。