中央アジアの蝗害事情: 今年はモロッコトビバッタの発生が多めになる予想
[>前回分
サバクトビバッタが猛威を振るっているさなか、他のバッタたちはどうしているのかというと
https://55096962.seesaa.net/article/202004article_14.html
というわけで、サバクトビバッタ以外にも大量発生するバッタはいるが、ほぼ年イチ発生なのでサバクトビバッタほど爆発的な増殖はしないようだ。というところまでが前回の話。
今回はもう一歩進んで、じゃあ今年の発生状況はどうなの? というところ。
モニタリングしているサイトはこちら。
サバクトビバッタと同じくFAOがレポートを出しているが、サバクトビバッタほど短いサイクルでは発生しないためか、季節ごとのレポートになっている。シーズン入りは孵化が始まる春。成虫になる夏までは細かく1カ月ごとのレポートが上がり、夏から翌年の春にかけてはまとめてリポートする、という流れのようだ。
http://www.fao.org/locusts-cca/current-situation/en/

==========================================
※再々再度になりますが※
サバクトビバッタは中国には入っていません。(途中の山脈を越えられません)
また、アフリカで大量発生している群れとパキスタン近辺で発生している群れは別です。
サバクトビバッタが中国に向かっている! とか、パキスタンのバッタの群れにアヒル軍を投入する! はデマニュースです。
ですが、毎年中央アジアで発生している別のバッタが存在します。そいつらの一部は中国の端っこまでは入れます。
今回はその「別のバッタ」の話です。
==========================================
今年の発生状況として、また気温が高かったことからモロッコトビバッタの発生が例年より早いという。
また、冬から春にかけて暖かく乾燥した天気が続いたため、孵化の量も多そうだとのこと。現在の発生個所はアフガニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン(そしておそらくトルクメニスタン)とのこと。図の中でピンク色がかかってるとこが発生個所だ。ちなみにほぼ同時期に発生するイタリアトビバッタ(和名は違うかもしれない)と、トノサマバッタの仲間も同時にモニタリングされており、色別で表示されるようになっている。

モロッコトビバッタの生息域はこちら。
ギリギリで中国にも入れることになっているが、とても微妙な表示になっている。この場所に何があるかというと…天山山脈とアルタイ山脈だ。

そう、このバッタもやはり、高い山は越えられない。
ただ元からいる場所が中央アジアなのと、サバクトビバッタよりは寒冷な気候に適応しているために山の隙間の盆地までは入り込めるようなのだ。なので「サバクトビバッタがウイグルに!」は完全なデマだが、今からのシーズンなら「モロッコトビバッタが中国国境に迫る!」なら捌に嘘ではない。まぁ国境に迫ってもそこから先には入れないのだが…。

なお、モロッコトビバッタもイタリアトビバッタもトノサマバッタも、バッタなので、成虫になって羽根が生えるまでは飛翔することは出来ない。 寿命が長いということは、成虫になるまでにかかる時間が長く、必然的に駆除しやすい期間も長くなるということだ。そのため、これらのバッタはそれほど大きなニュースになることもなく、毎年地道に密かに処理され続けている。
参考までに、こちらが2019年の夏の発生状況と駆除のデータだ。
去年はイタリアトビバッタが中国とカザフスタンの国境付近で発生していたことがわかる。

黒海沿岸の拡大図。ロシアの一番南のちょっと出っ張ったとこが集中的にやられているのが分かる。ここにバッタが大量発生するというのは今回調べてみるまで分からなかった。というか、前々から疑問に思っていたロシアのバッタ研究所の謎がようやく解けた。ロシアにもバッタは大量発生するんだ…。


ちなみに、この中央アジアのバッタ対策には日本も協力している。
タジキスタン、キルギス及びアフガニスタン向け無償資金贈与契約の締結:バッタ対策を通じた食糧安全確保及び農家の生計改善
https://www.jica.go.jp/press/2015/20151026_01.html
この記事が2015年のもので、支援が36カ月を予定しているため既に終了しているかもしれないのだが、FAOのサイトではまだパートナーとして表示されているので期間延長されているのかも。今年のサバクトビバッタの被害ばかり報道されているが、中央アジアからロシア南部にかけて毎年農作物が食い荒らされており、ひそかに戦いはつづけられていたのだ。派手なニュースにばっかり目を取られていては、バッタの本当の恐ろしさは見えてこない。そう、人とバッタの戦いは、たとえニュースが途切れても、アフリカが沈静化したとても、決して終わることはないのだ。…バッタが存在する限り…。
******
●サバクトビバッタの進行の見方や生態については↓を参照。
イナゴの群れが中国に到達! というクソみたいなデマが流れていたので、バッタの進行の見方を解説する
https://55096962.seesaa.net/article/202002article_20.html
イナゴの群れは夏には中国に到達! というクソみたいなデマが流されるので、もう少しバッタについて説明する
https://55096962.seesaa.net/article/202003article_7.html
サバクトビバッタが猛威を振るっているさなか、他のバッタたちはどうしているのかというと
https://55096962.seesaa.net/article/202004article_14.html
というわけで、サバクトビバッタ以外にも大量発生するバッタはいるが、ほぼ年イチ発生なのでサバクトビバッタほど爆発的な増殖はしないようだ。というところまでが前回の話。
今回はもう一歩進んで、じゃあ今年の発生状況はどうなの? というところ。
モニタリングしているサイトはこちら。
サバクトビバッタと同じくFAOがレポートを出しているが、サバクトビバッタほど短いサイクルでは発生しないためか、季節ごとのレポートになっている。シーズン入りは孵化が始まる春。成虫になる夏までは細かく1カ月ごとのレポートが上がり、夏から翌年の春にかけてはまとめてリポートする、という流れのようだ。
http://www.fao.org/locusts-cca/current-situation/en/
==========================================
※再々再度になりますが※
サバクトビバッタは中国には入っていません。(途中の山脈を越えられません)
また、アフリカで大量発生している群れとパキスタン近辺で発生している群れは別です。
サバクトビバッタが中国に向かっている! とか、パキスタンのバッタの群れにアヒル軍を投入する! はデマニュースです。
ですが、毎年中央アジアで発生している別のバッタが存在します。そいつらの一部は中国の端っこまでは入れます。
今回はその「別のバッタ」の話です。
==========================================
今年の発生状況として、また気温が高かったことからモロッコトビバッタの発生が例年より早いという。
また、冬から春にかけて暖かく乾燥した天気が続いたため、孵化の量も多そうだとのこと。現在の発生個所はアフガニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン(そしておそらくトルクメニスタン)とのこと。図の中でピンク色がかかってるとこが発生個所だ。ちなみにほぼ同時期に発生するイタリアトビバッタ(和名は違うかもしれない)と、トノサマバッタの仲間も同時にモニタリングされており、色別で表示されるようになっている。
モロッコトビバッタの生息域はこちら。
ギリギリで中国にも入れることになっているが、とても微妙な表示になっている。この場所に何があるかというと…天山山脈とアルタイ山脈だ。
そう、このバッタもやはり、高い山は越えられない。
ただ元からいる場所が中央アジアなのと、サバクトビバッタよりは寒冷な気候に適応しているために山の隙間の盆地までは入り込めるようなのだ。なので「サバクトビバッタがウイグルに!」は完全なデマだが、今からのシーズンなら「モロッコトビバッタが中国国境に迫る!」なら捌に嘘ではない。まぁ国境に迫ってもそこから先には入れないのだが…。
なお、モロッコトビバッタもイタリアトビバッタもトノサマバッタも、バッタなので、成虫になって羽根が生えるまでは飛翔することは出来ない。 寿命が長いということは、成虫になるまでにかかる時間が長く、必然的に駆除しやすい期間も長くなるということだ。そのため、これらのバッタはそれほど大きなニュースになることもなく、毎年地道に密かに処理され続けている。
参考までに、こちらが2019年の夏の発生状況と駆除のデータだ。
去年はイタリアトビバッタが中国とカザフスタンの国境付近で発生していたことがわかる。
黒海沿岸の拡大図。ロシアの一番南のちょっと出っ張ったとこが集中的にやられているのが分かる。ここにバッタが大量発生するというのは今回調べてみるまで分からなかった。というか、前々から疑問に思っていたロシアのバッタ研究所の謎がようやく解けた。ロシアにもバッタは大量発生するんだ…。
ちなみに、この中央アジアのバッタ対策には日本も協力している。
タジキスタン、キルギス及びアフガニスタン向け無償資金贈与契約の締結:バッタ対策を通じた食糧安全確保及び農家の生計改善
https://www.jica.go.jp/press/2015/20151026_01.html
"本事業の目的は、タジキスタン共和国、キルギス共和国、アフガニスタン・イスラム共和国の3か国で、バッタの大量発生の早期捕捉のためのモニタリング、駆除及びバッタ被害への対応能力の向上を行うものです。JICAがFAOに資金を供与し、FAOタジキスタン事務所、FAOキルギス事務所及びFAOアフガニスタン事務所が連携して本事業を実施します。
農業はこれらの国において就労人口の約3分の2が従事している重要な生計手段ですが、農業分野のGDPに占める割合は各国とも25パーセント程度と低く、農業生産性の向上は、農民の生活向上と貧困削減に直結した課題となっています。
農業生産性が低い理由の一つとして、定期的に大量発生するバッタによる農作物被害があります。その被害は拡大傾向にあり、タジキスタンでは2011年に15.8万ヘクタール、アフガニスタンでは同年に22.7万ヘクタール、キルギスでは2008年に16.3万ヘクタールの農地が被害を受けています。"
この記事が2015年のもので、支援が36カ月を予定しているため既に終了しているかもしれないのだが、FAOのサイトではまだパートナーとして表示されているので期間延長されているのかも。今年のサバクトビバッタの被害ばかり報道されているが、中央アジアからロシア南部にかけて毎年農作物が食い荒らされており、ひそかに戦いはつづけられていたのだ。派手なニュースにばっかり目を取られていては、バッタの本当の恐ろしさは見えてこない。そう、人とバッタの戦いは、たとえニュースが途切れても、アフリカが沈静化したとても、決して終わることはないのだ。…バッタが存在する限り…。
******
●サバクトビバッタの進行の見方や生態については↓を参照。
イナゴの群れが中国に到達! というクソみたいなデマが流れていたので、バッタの進行の見方を解説する
https://55096962.seesaa.net/article/202002article_20.html
イナゴの群れは夏には中国に到達! というクソみたいなデマが流されるので、もう少しバッタについて説明する
https://55096962.seesaa.net/article/202003article_7.html