【魔王軍士官用教本】上司に丸投げされた時の実践「村焼き」マニュアル ~焼き方に迷ったら~
優秀にして残酷なる同士魔族諸君。
ここでは、栄えある魔王軍士官に取り立てられた諸君らに与えられる代表的任務の一つ「村焼き」について、代表的な手法を案内している。この業界では往々にして、指令はシンプルかつ短納期であることが多い。丸投げされた現場はテンパり、とりあえず期日までに焼いとけばいいかな的な場当たり対応をしてしまいがちなのだが、本来はそれではいけない。
重要は、「丸投げされた指令の意図を正確に読み取り、目的に応じた村焼きをすること」である。

具体的に説明していこう。
まず前提として、一般的な村焼きの目的には以下のようなものが考えられる。
A)殲滅
-とにかく滅ぼす、敵を壊滅させる
B)示威行為
-焼くことで畏怖させる、抵抗の意思を封じる
C)戦略
-挟撃を防ぐ、補給を絶つなどの目的による拠点潰し
A,B,Cのいずれを想定しているかによって、適切な焼き方は異なってくる。
同士諸君らは限られた文面からどのパターンであるかを想定し、村焼きに臨まねばならない。
Aの場合に留意すべきこと
・討ち洩らし、生存者を極力無くすため
・自軍の消耗を抑え効率的に処理する
・想定外の抵抗勢力に注意
このパターンでは、「殲滅」の意味が重要となってくる。
雑な初心者は目立つ村や町から適当に焼き払ってしまい、抜け漏れが多くなるが、「殲滅」の本来の意味としては一人たりとも逃がしてはならないのである。お勧めは、小さな村から焼き払い、大きめの首都などに難民が逃げ込むように仕向けてから一網打尽にする手法である。「人間は群れやすい」という種族特性は大いに利用しよう。
また、人間の繁殖率と知能の高さについても考慮する必要がある。
過去、隠し通路や隠れ家などで逃げ延びるケースが頻繁に報告されているため、出来れば匂いを追跡できるユニットを配置しておくことをお勧めする。潜水艦や飛空艇、古代文明の遺産などを使用してくる可能性もあるため、陸路だけでなく水路、空路も同時に封鎖しておくべきである。
尚、人間は種族内での戦闘力の差が非常に大きいため、見た目は軟弱なのに異様に戦闘力の高い個体に遭遇することもある。その場合は任務の成功を最優先と考え、必要であれば撤退という選択肢も考慮してもらいたい。
Bの場合に留意すべきこと
・敵の反抗心を徹底的に折ること
・希望はなるべく目の前で潰す
・恐怖を煽りすぎるとたまに逆切れする人間が出るのに注意
人間という種族は「環境に慣れる」という能力が非常に高いため、とにかく叩けばいいだろうという浅い考えで長年かけて恐怖を与え続けていると、そのうち慣れてしまい効果が薄れる。脅しの意味で村を焼くならば、焼く村の数はなるべく少なく、より人間が重要視している場所をピンポイントで一気に焼くことをお勧めする。これにより、慣れによる効果の半減を防ぐことが出来る。
また人間は軟弱な種族であるため、英雄や勇者がいると縋りたがる習性を持っている。そうした目立つ存在がいる場合は、幾つか村を焼いておき、めぼしい人間が英雄や勇者の回りに集まり期待を一身に集めるのを待ってから派手に叩くと、効率的に心を折ることが出来る。希望を持たせてからの絶望はより深いものとなることも書き添えておく。
ただし恐怖を煽りすぎた場合の逆切れには要注意である。やぶれかぶれで自爆系の必殺技を使ってくる個体もいるため、あくまでも全力で、舐めプは厳禁である。キレる個体が出る前に速やかに蹂躙しよう。
Cの場合に留意すべきこと
・必要以上の破壊は目的にそぐわないため行わないこと
・戦略拠点を潰すためには戦略を持って対応する
・このパターンでは村の攻略難易度が高めであることが多いのに注意
このパターンは上級士官向けの任務であることが多いのだが、慢性的に人手不足な魔王軍において、部下に丸投げしてくる上司がいないわけでもない。そんな場合は、まず「何を残さなければならないか」を洗い出してほしい。酷倉庫、世界に1点しかない遺物、重要な鉱物、特殊な人材、龍脈の類などを確保するために村焼きを行う場合は、必然的に、それら残すべきものが破壊されないように行う必要がある。魔族の特性として、力任せの破壊は得意でも、適切な力加減が苦手、ということは多い。より知力の高いユニットで村焼き軍を組むといいだろう。
ただし「手加減」はご法度である。残したいものがあるために手加減してしまうと、余計な反撃の芽を残しかねない。知力ユニットに先行させたあとパワーユニットに村を焼かせるなど、手持ち戦力の編成と作業手順が重要である。
以上、初心者向けの概要を説明しておいた。
それでは最後に、例題にて理解度を確認してもらいたい。
<<例題1>>
次のような指令が来た場合、対応すべき村焼きはどれか。
本文内A~Cパターンから選びなさい。
--------------------------------
【至急】村焼きお願いします
ジミナ地方にて、勇者が誕生する兆しありとの報告がありました。
大至急、候補者を抹殺する必要があります。
次の定例会にて魔王様への報告が必要なため、大至急対応お願いします。
対象地域の村をまとめて殲滅して構いません。
よろしくお願いします。
---------------------------------
答: B
Aと回答する魔が多いのだが、将来魔王様に対抗できる可能性のある勇者を排除することは魔王に対する人間の希望を砕く行為であるため、Bが妥当である。
Aと見なして村ごと滅ぼせばいいだろうという雑な対処をした場合、ほとんどの場合において、ターゲットの勇者は主人公補正によって難を逃れてしまうので注意しよう。
<<例題2>>
次のような指令が来た場合、村焼きの際に気を付けることは何か。
--------------------------------
【魔王様勅命案件】聖なる村の巫女の確保
生贄の儀式に必要な巫女が不足しているようです。
つきましては以下、確保をお願いします。
確保場所: 聖なる村
必要数: 1人
期限: 蝕の月が始まるまで
尚、本件は儀式の邪魔をする他の巫女を全滅させる必要があるため
同日で村焼きの手配もお願いします。
ミッションランク: B
---------------------------------
答:
巫女の確保が必須任務のため、まず巫女を確保してから村を焼くこと。
うっかり巫女を全滅させてしまうと必要数1が満たせなくなる。
また、村焼きと同時に巫女の確保をしようとした場合、襲撃に気づいた巫女が逃げてしまい残りを全滅させることが出来なくなるため、巫女の確保時には隠密行動がお勧めである。
いかがだっただろうか。
村焼きは更なる出世のための登竜門である。同士魔族諸君には、心して魔王様のために励んでもらいたい。
※このマニュアルはフィクションです。実在の人物、村、団体等とは一切関係がありません。※
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類似品
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ここでは、栄えある魔王軍士官に取り立てられた諸君らに与えられる代表的任務の一つ「村焼き」について、代表的な手法を案内している。この業界では往々にして、指令はシンプルかつ短納期であることが多い。丸投げされた現場はテンパり、とりあえず期日までに焼いとけばいいかな的な場当たり対応をしてしまいがちなのだが、本来はそれではいけない。
重要は、「丸投げされた指令の意図を正確に読み取り、目的に応じた村焼きをすること」である。

具体的に説明していこう。
まず前提として、一般的な村焼きの目的には以下のようなものが考えられる。
A)殲滅
-とにかく滅ぼす、敵を壊滅させる
B)示威行為
-焼くことで畏怖させる、抵抗の意思を封じる
C)戦略
-挟撃を防ぐ、補給を絶つなどの目的による拠点潰し
A,B,Cのいずれを想定しているかによって、適切な焼き方は異なってくる。
同士諸君らは限られた文面からどのパターンであるかを想定し、村焼きに臨まねばならない。
Aの場合に留意すべきこと
・討ち洩らし、生存者を極力無くすため
・自軍の消耗を抑え効率的に処理する
・想定外の抵抗勢力に注意
このパターンでは、「殲滅」の意味が重要となってくる。
雑な初心者は目立つ村や町から適当に焼き払ってしまい、抜け漏れが多くなるが、「殲滅」の本来の意味としては一人たりとも逃がしてはならないのである。お勧めは、小さな村から焼き払い、大きめの首都などに難民が逃げ込むように仕向けてから一網打尽にする手法である。「人間は群れやすい」という種族特性は大いに利用しよう。
また、人間の繁殖率と知能の高さについても考慮する必要がある。
過去、隠し通路や隠れ家などで逃げ延びるケースが頻繁に報告されているため、出来れば匂いを追跡できるユニットを配置しておくことをお勧めする。潜水艦や飛空艇、古代文明の遺産などを使用してくる可能性もあるため、陸路だけでなく水路、空路も同時に封鎖しておくべきである。
尚、人間は種族内での戦闘力の差が非常に大きいため、見た目は軟弱なのに異様に戦闘力の高い個体に遭遇することもある。その場合は任務の成功を最優先と考え、必要であれば撤退という選択肢も考慮してもらいたい。
Bの場合に留意すべきこと
・敵の反抗心を徹底的に折ること
・希望はなるべく目の前で潰す
・恐怖を煽りすぎるとたまに逆切れする人間が出るのに注意
人間という種族は「環境に慣れる」という能力が非常に高いため、とにかく叩けばいいだろうという浅い考えで長年かけて恐怖を与え続けていると、そのうち慣れてしまい効果が薄れる。脅しの意味で村を焼くならば、焼く村の数はなるべく少なく、より人間が重要視している場所をピンポイントで一気に焼くことをお勧めする。これにより、慣れによる効果の半減を防ぐことが出来る。
また人間は軟弱な種族であるため、英雄や勇者がいると縋りたがる習性を持っている。そうした目立つ存在がいる場合は、幾つか村を焼いておき、めぼしい人間が英雄や勇者の回りに集まり期待を一身に集めるのを待ってから派手に叩くと、効率的に心を折ることが出来る。希望を持たせてからの絶望はより深いものとなることも書き添えておく。
ただし恐怖を煽りすぎた場合の逆切れには要注意である。やぶれかぶれで自爆系の必殺技を使ってくる個体もいるため、あくまでも全力で、舐めプは厳禁である。キレる個体が出る前に速やかに蹂躙しよう。
Cの場合に留意すべきこと
・必要以上の破壊は目的にそぐわないため行わないこと
・戦略拠点を潰すためには戦略を持って対応する
・このパターンでは村の攻略難易度が高めであることが多いのに注意
このパターンは上級士官向けの任務であることが多いのだが、慢性的に人手不足な魔王軍において、部下に丸投げしてくる上司がいないわけでもない。そんな場合は、まず「何を残さなければならないか」を洗い出してほしい。酷倉庫、世界に1点しかない遺物、重要な鉱物、特殊な人材、龍脈の類などを確保するために村焼きを行う場合は、必然的に、それら残すべきものが破壊されないように行う必要がある。魔族の特性として、力任せの破壊は得意でも、適切な力加減が苦手、ということは多い。より知力の高いユニットで村焼き軍を組むといいだろう。
ただし「手加減」はご法度である。残したいものがあるために手加減してしまうと、余計な反撃の芽を残しかねない。知力ユニットに先行させたあとパワーユニットに村を焼かせるなど、手持ち戦力の編成と作業手順が重要である。
以上、初心者向けの概要を説明しておいた。
それでは最後に、例題にて理解度を確認してもらいたい。
<<例題1>>
次のような指令が来た場合、対応すべき村焼きはどれか。
本文内A~Cパターンから選びなさい。
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【至急】村焼きお願いします
ジミナ地方にて、勇者が誕生する兆しありとの報告がありました。
大至急、候補者を抹殺する必要があります。
次の定例会にて魔王様への報告が必要なため、大至急対応お願いします。
対象地域の村をまとめて殲滅して構いません。
よろしくお願いします。
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答: B
Aと回答する魔が多いのだが、将来魔王様に対抗できる可能性のある勇者を排除することは魔王に対する人間の希望を砕く行為であるため、Bが妥当である。
Aと見なして村ごと滅ぼせばいいだろうという雑な対処をした場合、ほとんどの場合において、ターゲットの勇者は主人公補正によって難を逃れてしまうので注意しよう。
<<例題2>>
次のような指令が来た場合、村焼きの際に気を付けることは何か。
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【魔王様勅命案件】聖なる村の巫女の確保
生贄の儀式に必要な巫女が不足しているようです。
つきましては以下、確保をお願いします。
確保場所: 聖なる村
必要数: 1人
期限: 蝕の月が始まるまで
尚、本件は儀式の邪魔をする他の巫女を全滅させる必要があるため
同日で村焼きの手配もお願いします。
ミッションランク: B
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答:
巫女の確保が必須任務のため、まず巫女を確保してから村を焼くこと。
うっかり巫女を全滅させてしまうと必要数1が満たせなくなる。
また、村焼きと同時に巫女の確保をしようとした場合、襲撃に気づいた巫女が逃げてしまい残りを全滅させることが出来なくなるため、巫女の確保時には隠密行動がお勧めである。
いかがだっただろうか。
村焼きは更なる出世のための登竜門である。同士魔族諸君には、心して魔王様のために励んでもらいたい。
※このマニュアルはフィクションです。実在の人物、村、団体等とは一切関係がありません。※
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類似品
魔王のための「村焼き」マニュアル ~これから村を焼きに行くあなたへ~
https://55096962.seesaa.net/article/201802article_9.html
蛮族のための井戸制圧マニュアル ~毒を投入される前に~
https://55096962.seesaa.net/article/202003article_23.html