古代エジプト末期、ミイラづくり工房の発掘まとめ

ここ何年か続けられていた、エジプト・サッカラのミイラ工房の発掘が進み、状況が次第に明らかになってきている。
いま発掘しているのは紀元前600年頃の工房跡のようだが、同じ場所で時代がばらけていて、今までに発掘された場所だと末期王朝~ペルシア支配時代あたり。

これまでのエジプト学では、ミイラづくり工房ついては主にギリシャの歴史家ヘロドトスの著述を中心に考えられてきた。
ヘロドトスによれば、ミイラづくりにいわば松竹梅のような値段差があり、裕福な人と貧しい人では処理の仕方が異なること、職人たちがビジネスライクに仕事をしていることなどが細かく語られていた。発掘されているミイラ工房はヘロドトスの生きた時代にも近い。工房の状況から、彼の記述した内容のかなりの部分が証明されようとしている。

古代エジプトの巨大葬儀ビジネス、発掘により解明
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/051800299/

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位置関係はこう。
ピラミッドの間に工房が作られており、ここが、古代から死と関わる神聖な場所であり続けたことが分かる。
また、ミイラづくりは大変匂うものなので、生きた人間の住む町の近くでは出来ないのだが、ここなら郊外にあたるので匂いが生活の邪魔になることもなかっただろう。

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ミイラ工房のすぐそばには、作られたミイラが収められた墓もあり、それが「不動産ビジネス」と記事内で書かれているゆえんだ。
日本で言うなら、葬儀屋と寺社を同時に経営しているようなものである。ミイラを作り、墓に収め、そして永代供養までしてくれるワンストップ受注。ミイラのランクや副葬品、墓スペースはご予算次第。もちろん、職人たちは古いミイラの装飾品を再利用していただろうし、こっそり手抜きすることもあったかもしれない。ミイラの中に入れる護符なんて何個か抜けてても誰も気づかないだろうしね。末期王朝あたりから雑なミイラが増えていくのは、こうしたビジネスライクなミイラ工房が増えて、庶民のほうも楽に永遠を手に入れようとしはじめたことと関係しているのかもしれない。


*ここまでの発掘経緯の記事をいくつか

サイス王朝のミイラづくり施設、サッカラ・ウナス王のピラミッド近くで発見される
https://55096962.seesaa.net/article/201807article_18.html

発見された頃の記事。

サッカラでスカラベのミイラ(大量)発見 & なぜかコガネムシになっている記事
https://55096962.seesaa.net/article/201811article_13.html

人間以外のミイラの発見の話。

エジプト・サッカラで発見されたミイラと、儀式の形骸化の過程
https://55096962.seesaa.net/article/201907article_5.html

あまりレベルの高くないミイラ職人による雑なミイラが作られていたという話。

Egypt announces new discoveries, studies at the Mummification Workshop Complex at Saqqara
https://www.egypttoday.com/Article/4/85371/Egypt-announces-new-discoveries-studies-at-the-Mummification-Workshop-Complex

今年の記事で、新たなシャフトから沢山の棺や副葬品が見つかったという話。


発掘はまだ続きそうなので、来年以降もまだまだ何か出てくるかもしれない。
引き続きウォッチしていこうと思う。


…ところで、ヘロドトスのミイラづくり職人の話がだいたい正しかったとするならば、「美人が死んだときは職人が死体で致さないように死後数日経ってから引き渡す」というゴシップめいた話も実話だったりするのだろうか…。

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