大量発生したサバクトビバッタがコンテナに紛れ込んで中国に! というデマが流されるので、バッタの繁殖特性について説明する
先月、隣のパキスタンで繁殖していたサバクトビバッタが国境を越えてインドに到達したことで、忘れてた人たちもまたバッタに食いつき始めた感じが。この問題、難しいのはインドとパキスタンが交戦中で、国境付近のバッタの群れにそう簡単に対処できないってことなんですよ。「ドローンを飛ばした」とさらっと書いていますが、ドローンで駆除できるようになるまでには、長い道のりがありました…。
作物食い尽くすバッタの大群、ドローンで追跡・殺虫剤散布 インド
https://www.jiji.com/jc/article?k=20200527040119a&g=afp

詳しくはこことか過去記事を検索すると出てくると思いますが、インドは、長らくドローンを規制していました。規制が緩和されたのは近年です。緩和されても、自由に個人が所有して飛ばしまくれるわけではないし、外国人旅行者の持ち込みも制限されています。また国境付近で許可なく飛ばすと捕まります。
同じような規制は、隣国との関係が緊張しているヨルダンやエジプト、聖地の管理に頭を悩ませているサウジアラビアなど少なくない国で見られます。今回インドがバッタ駆除のためにドローン飛ばしているのは、それだけ本気であり、この問題を深刻にとらえているからだと思います。
ちなみにドローン買った(買い足した?)のは先月で、「いま繁殖してるバッタが成長したらこっちに来る予想だから待機してる」とニュースは流れていました。決して無策だったわけではないです。パキスタン側の駆除が間に合わなかったのと、イラン高原とアフガンの間の治安のよくない地域からの追加分はどうにもならんかったのです…。
今回のバッタ大発生の一つの原因は「気候変動による雨の増加」ですが、もう一つの原因は「政情不安のため対処できない国/地域がある」ということです。気候変動だけが原因なら今まで年々増えてきているはずですが、そうなっていないのは、今までは初期段階で駆除出来ていたからなんです。
今回も、初期の発生がイエメンやソマリアじゃなかったら、ここまで酷くなってなかったかもしれないです。
[>バッタの動きはここで追えます
locust watch
http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html
これからのバッタの動き予測

また今回は春以降、国際情勢以外にも、コロナ騒ぎが少し関係しています。
都市が封鎖されてしまい殺虫剤などの資材の準備が遅れたり、殺虫剤を撒くためのヘリや小型飛行機のパイロットをよそから連れてきた場合に二週間の検疫期間をもうけなくてはならなかったりと、不運が重なったこともあるようです。(とはいえ駆除が功を奏し、かなりの面積の作物を守れたのも事実です。成功した地域のニュースは流れてこないので直接は見えませんが。)
*****
というわけで今回の本題に入ります。
「アフリカで大量発生したバッタが中国に来る!」と散々デマを流していた人たちがいい加減諦めるのかと思ったら、妙な主張始めてました…。
「コンテナや荷物に紛れ込んで中国に上陸する!」
「人間が運べば山なんて越えられる!」
なんか、どーしてもバッタを中国に行かせたいみたいなんですけど、サバクトビバッタはヒアリと違って荷物に紛れ込んだくらいじゃ他所の国に定着出来ないです。もうデマにいちいちつっこむのも面倒くさいんですけど、ガチでデマを流している人たちもいるようなので、一応牽制しときます。
そもそもの前提の話からします。
サバクトビバッタを含め、大規模な群れを形成するバッタは、群れになると毒々しい黄色に色が変わり、より攻撃的になり、混雑を避けるために長距離移動をするようになります。しかし移動先で混雑状態が解消されれば、元に戻ります。
コンテナに紛れ込んだ時点でサバクトビバッタは「群れ」ではなくなりますよね? ということは、普通の(緑色の)バッタの状態に戻るんです。
群れでは無くなったサバクトビバッタは、普通のバッタです。
蝗害は、ちょうどいいタイミングで雨が降って幼虫が一気に孵化したり、食べ物が少なくなってきた時に少ない食べ物に密集したりして「同種のバッタの過密な群れ」が形成された時に、そのストレスを起因として発生します。バッタの色が変わり、攻撃的になり、混雑状態から逃れようとして長距離の移住をするようになるわけです。群れてないならそういった行動は出ませんし、色も変わりません。特に長距離を飛ぶこともなく、ご近所でまったり虫生を終えます。
また、バッタはアリのように、1匹の女王から何万匹も発生するような生態ではありません。最大限がんばって1匹から数十匹に増えるレベルです。奇跡的に繁殖出来たとしても、無慈悲な冬が全てをリセットするので定着することはないです。卵が孵化できる能力を維持できるのが最大2カ月なので、場合によっては孵化すらしないでしょう。また、もし奇跡に奇跡が重なって、温室など冬でも暖かいところで世代を繋げたとしても、数が少ない時は緑色で、ごく普通のバッタなので、何の脅威にもなりません。
毒を持ってるわけじゃないし、刺すとか噛むとかもないし、多くの人は見ても気づかず、変わったトノサマバッタがいるなーくらいで終わると思います。
この特性が判ってれば、荷物に紛れ込んで運ばれるかも~とか、ショボすぎるデマは流せないですよ。もし仮にサバクトビバッタを人間がどこか別の場所へ運んだとしても、その先で普通のバッタに戻って死んでいくだけなんで…。
----------------
[>色の変わる写真は、前回までの解説分見て下さい。
イナゴの群れは夏には中国に到達! というクソみたいなデマが流されるので、もう少しバッタについて説明する
https://55096962.seesaa.net/article/202003article_7.html
-----------------
そして、「バッタが山にぶつかってUターンしている」という情報を流している人もいましたが、それも間違いです。単に繁殖地をぐるぐる往復しているだけ。
そして、以前(3月)に沸いていたバッタの群れと、現在(6月)の群れは別です。なぜなら、バッタの寿命が卵から成虫までで3カ月強しかないから。
サバクトビバッタのライフサイクルは以下のようになっています。12週=3カ月で次サイクルに入ります。

条件次第で寿命は多少変わりますが、現在の大量発生しているバッタたちはほぼこのサイクルで活動しており、要するに3カ月ごとに群れが発生するので、大量発生が終わるまで3カ月ごとにニュースが流れることになります。
羽根が生えるのは成虫になってから。つまり8週目のところに書かれている「ADULT(SWARMS)」からが、ニュースになるような「あちこち飛び回る」蝗害です。羽根生えて飛び回りだしてから1カ月ほどで産卵を開始して、あまり長くは生きずに死んでいくんですよね。だからバッタが中国に入るはもちろん、日本なんて気にしなくてもいいレベルです。寿命的に、どれだけ頑張って飛んでも距離が限られるので…。
ではバッタの群れがどうやって拡散・前進しているかというと、世代交代を繰り返しながら少しずつ範囲を広げています。
前にも出した気がしますが、サバクトビバッタの繁殖地は以下の図のとおりです。繁殖に適した範囲は、この黒い線の中だけ。そして通常時に繁殖する場所が、茶色と緑で網がけした部分です。(普段と違う時期に雨が降るなどすると、この黒い範囲内で繁殖地が増える)
成虫は飛んで繁殖地を出ることができますが、繁殖できない場所から先へは広がれません。繁殖地の外では、1世代で到達できる場所までが、被害の可能性の在り得る範囲となります。

http://www.geocurrents.info/place/world/mapping-locust-swarms
ですので、日本に来ることはまずありえません。
間に海があるとか、気候が合わないとかもうそうですが、それ以前に「そこまで寿命が持たない」んです…。
というわけで、ある程度の情報は出しました。あとは自分で調べてください。
これで、3カ月ごとにデマに踊らされる人が出るのを多少減らせればオッケーです。
*****
・バッタがインドに到達って、春にも言ってなかった?
→ 冬の繁殖分です。そいつらは寿命で全滅して今は春の繁殖分。
・なんか同じところずっとグルグル回ってない?
→ 春と夏の繁殖地を往復しているだけなので回ってます。この先も基本的にずっと回り続けます
・結局中国には来ない?
→ かすりもしません。バッタの動き予測にも入ってません
・中国で蝗害は起きない?
→ 中国には元々、頻繁に蝗害を引き起こすトノサマバッタがいます。もしどうしても中国で蝗害が発生してほしいのなら、今年の中国国内のトノサマバッタ予報を見てみましょう。
******
また、サバクトビバッタばかり注目されていてますが中央アジアでは別種のバッタが毎年のように大量発生します。
今年も既に対策始まってますよ。たかがバッタなんですけど影響受けてる人はかなりいるんですね。
中央アジアの蝗害事情: 今年はモロッコトビバッタの発生が多めになる予想
https://55096962.seesaa.net/article/202004article_19.html
駆除や生態の研究は、日本も支援しています。こいつらならギリギリで中国国境まで行けるんですけどね。あと、パキスタンにも支援してます。日本のマスコミが流さない(というか気づいてないかも)だけです…。
https://twitter.com/mfaizanahmad/status/1263035320506908673?s=20
作物食い尽くすバッタの大群、ドローンで追跡・殺虫剤散布 インド
https://www.jiji.com/jc/article?k=20200527040119a&g=afp
詳しくはこことか過去記事を検索すると出てくると思いますが、インドは、長らくドローンを規制していました。規制が緩和されたのは近年です。緩和されても、自由に個人が所有して飛ばしまくれるわけではないし、外国人旅行者の持ち込みも制限されています。また国境付近で許可なく飛ばすと捕まります。
同じような規制は、隣国との関係が緊張しているヨルダンやエジプト、聖地の管理に頭を悩ませているサウジアラビアなど少なくない国で見られます。今回インドがバッタ駆除のためにドローン飛ばしているのは、それだけ本気であり、この問題を深刻にとらえているからだと思います。
ちなみにドローン買った(買い足した?)のは先月で、「いま繁殖してるバッタが成長したらこっちに来る予想だから待機してる」とニュースは流れていました。決して無策だったわけではないです。パキスタン側の駆除が間に合わなかったのと、イラン高原とアフガンの間の治安のよくない地域からの追加分はどうにもならんかったのです…。
今回のバッタ大発生の一つの原因は「気候変動による雨の増加」ですが、もう一つの原因は「政情不安のため対処できない国/地域がある」ということです。気候変動だけが原因なら今まで年々増えてきているはずですが、そうなっていないのは、今までは初期段階で駆除出来ていたからなんです。
今回も、初期の発生がイエメンやソマリアじゃなかったら、ここまで酷くなってなかったかもしれないです。
[>バッタの動きはここで追えます
locust watch
http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html
これからのバッタの動き予測
また今回は春以降、国際情勢以外にも、コロナ騒ぎが少し関係しています。
都市が封鎖されてしまい殺虫剤などの資材の準備が遅れたり、殺虫剤を撒くためのヘリや小型飛行機のパイロットをよそから連れてきた場合に二週間の検疫期間をもうけなくてはならなかったりと、不運が重なったこともあるようです。(とはいえ駆除が功を奏し、かなりの面積の作物を守れたのも事実です。成功した地域のニュースは流れてこないので直接は見えませんが。)
*****
というわけで今回の本題に入ります。
「アフリカで大量発生したバッタが中国に来る!」と散々デマを流していた人たちがいい加減諦めるのかと思ったら、妙な主張始めてました…。
「コンテナや荷物に紛れ込んで中国に上陸する!」
「人間が運べば山なんて越えられる!」
なんか、どーしてもバッタを中国に行かせたいみたいなんですけど、サバクトビバッタはヒアリと違って荷物に紛れ込んだくらいじゃ他所の国に定着出来ないです。もうデマにいちいちつっこむのも面倒くさいんですけど、ガチでデマを流している人たちもいるようなので、一応牽制しときます。
そもそもの前提の話からします。
サバクトビバッタを含め、大規模な群れを形成するバッタは、群れになると毒々しい黄色に色が変わり、より攻撃的になり、混雑を避けるために長距離移動をするようになります。しかし移動先で混雑状態が解消されれば、元に戻ります。
コンテナに紛れ込んだ時点でサバクトビバッタは「群れ」ではなくなりますよね? ということは、普通の(緑色の)バッタの状態に戻るんです。
群れでは無くなったサバクトビバッタは、普通のバッタです。
蝗害は、ちょうどいいタイミングで雨が降って幼虫が一気に孵化したり、食べ物が少なくなってきた時に少ない食べ物に密集したりして「同種のバッタの過密な群れ」が形成された時に、そのストレスを起因として発生します。バッタの色が変わり、攻撃的になり、混雑状態から逃れようとして長距離の移住をするようになるわけです。群れてないならそういった行動は出ませんし、色も変わりません。特に長距離を飛ぶこともなく、ご近所でまったり虫生を終えます。
また、バッタはアリのように、1匹の女王から何万匹も発生するような生態ではありません。最大限がんばって1匹から数十匹に増えるレベルです。奇跡的に繁殖出来たとしても、無慈悲な冬が全てをリセットするので定着することはないです。卵が孵化できる能力を維持できるのが最大2カ月なので、場合によっては孵化すらしないでしょう。また、もし奇跡に奇跡が重なって、温室など冬でも暖かいところで世代を繋げたとしても、数が少ない時は緑色で、ごく普通のバッタなので、何の脅威にもなりません。
毒を持ってるわけじゃないし、刺すとか噛むとかもないし、多くの人は見ても気づかず、変わったトノサマバッタがいるなーくらいで終わると思います。
この特性が判ってれば、荷物に紛れ込んで運ばれるかも~とか、ショボすぎるデマは流せないですよ。もし仮にサバクトビバッタを人間がどこか別の場所へ運んだとしても、その先で普通のバッタに戻って死んでいくだけなんで…。
----------------
[>色の変わる写真は、前回までの解説分見て下さい。
イナゴの群れは夏には中国に到達! というクソみたいなデマが流されるので、もう少しバッタについて説明する
https://55096962.seesaa.net/article/202003article_7.html
-----------------
そして、「バッタが山にぶつかってUターンしている」という情報を流している人もいましたが、それも間違いです。単に繁殖地をぐるぐる往復しているだけ。
そして、以前(3月)に沸いていたバッタの群れと、現在(6月)の群れは別です。なぜなら、バッタの寿命が卵から成虫までで3カ月強しかないから。
サバクトビバッタのライフサイクルは以下のようになっています。12週=3カ月で次サイクルに入ります。
条件次第で寿命は多少変わりますが、現在の大量発生しているバッタたちはほぼこのサイクルで活動しており、要するに3カ月ごとに群れが発生するので、大量発生が終わるまで3カ月ごとにニュースが流れることになります。
羽根が生えるのは成虫になってから。つまり8週目のところに書かれている「ADULT(SWARMS)」からが、ニュースになるような「あちこち飛び回る」蝗害です。羽根生えて飛び回りだしてから1カ月ほどで産卵を開始して、あまり長くは生きずに死んでいくんですよね。だからバッタが中国に入るはもちろん、日本なんて気にしなくてもいいレベルです。寿命的に、どれだけ頑張って飛んでも距離が限られるので…。
ではバッタの群れがどうやって拡散・前進しているかというと、世代交代を繰り返しながら少しずつ範囲を広げています。
前にも出した気がしますが、サバクトビバッタの繁殖地は以下の図のとおりです。繁殖に適した範囲は、この黒い線の中だけ。そして通常時に繁殖する場所が、茶色と緑で網がけした部分です。(普段と違う時期に雨が降るなどすると、この黒い範囲内で繁殖地が増える)
成虫は飛んで繁殖地を出ることができますが、繁殖できない場所から先へは広がれません。繁殖地の外では、1世代で到達できる場所までが、被害の可能性の在り得る範囲となります。
http://www.geocurrents.info/place/world/mapping-locust-swarms
ですので、日本に来ることはまずありえません。
間に海があるとか、気候が合わないとかもうそうですが、それ以前に「そこまで寿命が持たない」んです…。
というわけで、ある程度の情報は出しました。あとは自分で調べてください。
これで、3カ月ごとにデマに踊らされる人が出るのを多少減らせればオッケーです。
*****
・バッタがインドに到達って、春にも言ってなかった?
→ 冬の繁殖分です。そいつらは寿命で全滅して今は春の繁殖分。
・なんか同じところずっとグルグル回ってない?
→ 春と夏の繁殖地を往復しているだけなので回ってます。この先も基本的にずっと回り続けます
・結局中国には来ない?
→ かすりもしません。バッタの動き予測にも入ってません
・中国で蝗害は起きない?
→ 中国には元々、頻繁に蝗害を引き起こすトノサマバッタがいます。もしどうしても中国で蝗害が発生してほしいのなら、今年の中国国内のトノサマバッタ予報を見てみましょう。
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また、サバクトビバッタばかり注目されていてますが中央アジアでは別種のバッタが毎年のように大量発生します。
今年も既に対策始まってますよ。たかがバッタなんですけど影響受けてる人はかなりいるんですね。
中央アジアの蝗害事情: 今年はモロッコトビバッタの発生が多めになる予想
https://55096962.seesaa.net/article/202004article_19.html
駆除や生態の研究は、日本も支援しています。こいつらならギリギリで中国国境まで行けるんですけどね。あと、パキスタンにも支援してます。日本のマスコミが流さない(というか気づいてないかも)だけです…。
https://twitter.com/mfaizanahmad/status/1263035320506908673?s=20