サウジアラビアの「謎の地上絵」、その後の続報もないのでまとめておくことにした

数年前、サウジアラビアの「謎の地上絵」の話題が流れた。
だが、その後の続報も出てこないし、この手の研究は数十年かかることもあるものなので気長に眺めているしかない。でもたぶんその間に記録は消えてしまう。(特に新聞記事とかは…。)

というわけで、忘れないうちに少し纏めておこうと思う。
「地上絵」とされているのは、こういうものだ。

A Close-Up on Mysteries Made of Stone in Saudi Arabia’s Desert
https://www.nytimes.com/2017/11/17/science/saudi-arabia-gates.html

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サウジの砂漠に石を用いた謎の構造物400個、衛星画像で確認
https://www.afpbb.com/articles/-/3148057

サウジの砂漠に謎の構造物 400近くも グーグルアースで確認
https://www.sankei.com/world/news/171113/wor1711130029-n1.html

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何らかの人工的なものであることは間違いなさそうなのだが、年代や、誰が何のために作ったのかという肝心の部分は謎だらけだ。「ベドウィンの祖先が作ったものでは」「青銅器時代のものだろう」くらいの推定しか出てこないしのだが、そもそもこれら全てが本当に古代のものかは検証が必要だろう。世界に存在する地上絵の中には、オーストラリアの「Marree Man」のように最近作られたものがあるし、スコットランドのストーンヘンジの中に数十年前に地元民に作られたものが混じっていたという話もある。

そしておそらく、「地上絵」と呼ばれているものの中には実際は別のものも混じっていると思う。


空撮動画
https://www.youtube.com/watch?v=3ZUKPDJ1iVI

この〇の連なってるやつは丸い家の基礎部分と城壁が何世代分も重なったものじゃないかな…。上にあった土が風か雨で流されて露出した形に見えるんだけど…。

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写真などは、ここに沢山ある。
http://alsahra.org/?page_id=290#gsc.tab=0

といっても地上絵の写真いがいにも、沙漠に点在する「遺跡」類をまとめたページのようで、かつてキャラバンが使っていた拠点跡、なんてものもあった。見事な柱状節理(柱上に固まった溶岩)の写真もあったり、火口跡もあったりと、なかなか多彩な地形だ。火山由来の石が多いところにこの遺跡らしきものが存在するのが分かる。



コロナ騒ぎでおそらく中断されていると思われるが、サウジアラビアでは近年、外国隊を国内に入れて考古学調査を実施しはじめていた。既に知られているナバテア文明でさえ、有名なのは研究の進んでいるヨルダンの遺跡で、お隣のサウジアラビア側ではあまり調査がされてこなかった。イスラム教の聖地を抱え、イスラム教世界の盟主としてのアイデンティティを持つサウジアラビアでは、長らくイスラム以前の歴史にあまり注目してこなかったように思う。だから、もしこの「地上絵」が本当に古いものであったなら、サウジアラビアで先史時代の未知なる文明/文化圏が古代世界の地理に加わる可能性は十分にあると思われる。

客観的に評価できる調査隊が入って、多角的に研究できると何か出てくるんじゃないかな…。
ただ、これらが重要な遺跡だった場合に、すでに車のわだちの痕や道路などで破損しているものがあるのが気になった。保護はしないでいいんだろうか。


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参考までに、近隣で今後の調査が期待されるよくわからない遺跡たち


イランで発見された謎の「長城」の正体は? …今後の調査に期待だ!
https://55096962.seesaa.net/article/202001article_11.html

「レヴァントのストーン・ヘンジ」ルジム・エルヒリ(Rujm el-Hiri) 
https://55096962.seesaa.net/article/201711article_6.html

イランにもカッパドキアのような地下都市が…?
https://55096962.seesaa.net/article/201704article_19.html


あと多分、サウジアラビアの「地上絵」は、調査が進むとこのへんの年表に何かが付け足されるんだと思う。


サウジアラビア発掘続報 ダダン王国~ナバテア文明の前段にある謎
https://55096962.seesaa.net/article/202005article_21.html


西アジア世界の古代史の年表には、まだ空白が残っている年代/地域がそれなりにあると思う。次なる未知の文明の「発見」は、もしかしたらこういうところから生まれてくるのかもしれない。

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