二千年前の絵師のお仕事~ミイラ・ポートレートの絵師と素材とは。
あまりに大量にありすぎて見慣れているけれど、実はあまり研究されてこなかったというミイラ・ポートレート。
古代エジプト末期(正確にはローマ属領時代)に作られた、ミイラの顔の部分にはめこむ、死者の生前の似顔絵である。
西洋美術と古代エジプトの伝統美術の中間にあるようなこの似顔絵は、専門がどっちに入るのかもよく分からず、あまり専門家もいなかったらしい。最近の分析によって、少しずつこの似顔絵の裏に存在した「似顔絵絵師の集団」や「画材調達ルート」が明らかにされつつある。
(…というかこれ、考古学じゃなくて美術史の研究ってカテゴリーに入るの…?)
Unraveling the mysteries of ancient Egypt's spellbinding mummy portraits
https://edition.cnn.com/style/article/egyptian-mummy-portraits/index.html
これらの絵は、紀元後1世紀~3世紀ごろにたくさん作られた。ギリシャ人入植地もあったファイユームのものが有名だが、それ以外の地域でも見つかっている。ミイラからひっぺがされて別売りされてしまっているケースが多いのだが、ミイラとセットになった幾つかの発見から、生前の顔をある程度忠実に再現し、かつ「目を大きくする」「皺を消す」など、まるで現代の写真修正のような手が加えられていることが明らかになってきた。目にハイライト入れたり、まつげ増量したり、美肌効果を取りいれていたり、まるでプリクラや証明写真のような効果w そのせいもあって、ちょっとマンガっぽい。
エジプトがギリシャ化していた時代のミイラマスク「ファイユームの肖像画」はどこまで生前の姿に忠実か
https://55096962.seesaa.net/article/201512article_1.html
最近の研究では、これらの似顔絵は絵画の一つとして、描き方や材質が分析されている。
死者のために大量の絵を描くには、おそらく専門の職人がいて、葬儀社の一部として工房を持っていたはずだ。そして死者が出た際に注文を受けて、ミイラ作ってる間に仕上げて納品しなくてはならなかったのである。いきなり大量の死人が出てめっちゃくちゃ忙しい時もあれば、死人が出なくて閑古鳥の時期もあったはずで…。…古代の絵師さんも大変だな?!
さらに絵を描くキャンパスとなる木材のほとんどはエジプト外からの輸入品で、画材(絵具)は、成分からして一部は北ヨーロッパからはるばる運ばれていたことが判明しているという。
各工房ごとに流れ作業で似顔絵が生産されていた可能性や、工房ごとの美術スタイルの差異、絵具は専門の工程で大量生産されていた可能性など、ミイラの付属品としてではなく「絵画」としてポートレートを分析する視点は言われてみれば今まで見かけなかった研究かもしれない。とても面白い。いや、ていうか言われてみれば確かにこれ、この時代の一つの美術様式なんだよなぁ…。
人気絵師さんがいて、「ワシは絶対あの絵師さんの似顔絵であの世に行きたいんじゃ!」とか順番待ちの予約入れるとかも、あったかもしれないね。ミイラ似顔絵師がぐっと身近になる研究なのでした。
古代エジプト末期(正確にはローマ属領時代)に作られた、ミイラの顔の部分にはめこむ、死者の生前の似顔絵である。
西洋美術と古代エジプトの伝統美術の中間にあるようなこの似顔絵は、専門がどっちに入るのかもよく分からず、あまり専門家もいなかったらしい。最近の分析によって、少しずつこの似顔絵の裏に存在した「似顔絵絵師の集団」や「画材調達ルート」が明らかにされつつある。
(…というかこれ、考古学じゃなくて美術史の研究ってカテゴリーに入るの…?)
Unraveling the mysteries of ancient Egypt's spellbinding mummy portraits
https://edition.cnn.com/style/article/egyptian-mummy-portraits/index.html
これらの絵は、紀元後1世紀~3世紀ごろにたくさん作られた。ギリシャ人入植地もあったファイユームのものが有名だが、それ以外の地域でも見つかっている。ミイラからひっぺがされて別売りされてしまっているケースが多いのだが、ミイラとセットになった幾つかの発見から、生前の顔をある程度忠実に再現し、かつ「目を大きくする」「皺を消す」など、まるで現代の写真修正のような手が加えられていることが明らかになってきた。目にハイライト入れたり、まつげ増量したり、美肌効果を取りいれていたり、まるでプリクラや証明写真のような効果w そのせいもあって、ちょっとマンガっぽい。
エジプトがギリシャ化していた時代のミイラマスク「ファイユームの肖像画」はどこまで生前の姿に忠実か
https://55096962.seesaa.net/article/201512article_1.html
最近の研究では、これらの似顔絵は絵画の一つとして、描き方や材質が分析されている。
死者のために大量の絵を描くには、おそらく専門の職人がいて、葬儀社の一部として工房を持っていたはずだ。そして死者が出た際に注文を受けて、ミイラ作ってる間に仕上げて納品しなくてはならなかったのである。いきなり大量の死人が出てめっちゃくちゃ忙しい時もあれば、死人が出なくて閑古鳥の時期もあったはずで…。…古代の絵師さんも大変だな?!
さらに絵を描くキャンパスとなる木材のほとんどはエジプト外からの輸入品で、画材(絵具)は、成分からして一部は北ヨーロッパからはるばる運ばれていたことが判明しているという。
各工房ごとに流れ作業で似顔絵が生産されていた可能性や、工房ごとの美術スタイルの差異、絵具は専門の工程で大量生産されていた可能性など、ミイラの付属品としてではなく「絵画」としてポートレートを分析する視点は言われてみれば今まで見かけなかった研究かもしれない。とても面白い。いや、ていうか言われてみれば確かにこれ、この時代の一つの美術様式なんだよなぁ…。
人気絵師さんがいて、「ワシは絶対あの絵師さんの似顔絵であの世に行きたいんじゃ!」とか順番待ちの予約入れるとかも、あったかもしれないね。ミイラ似顔絵師がぐっと身近になる研究なのでした。