蘇った古代エジプト人と恋をしたい?/日本にミイラを持ち込むには。
そーいえばはるか昔に「オーパーツ・ラブ」っていうラノベあったよな…確かよくある冴えない男子のもとにミイラから蘇ったセクシーエジプト王女がやってくるやつ…と思ってググってみたら、だいたい合ってた。そういやこんなストーリーだった気がする…

オーパーツ・ラブ 〜いけません! ファラオさま〜 (オーパーツ・ラブシリーズ) (スーパーダッシュ文庫) - ゆうき りん, 酒井 ヒロヤス
…いわゆるハーレムものというやつだね。うん。
というのはさて置いて、ここで注目したいのは「父から棺が届いた」「中身は古代エジプト王女(のミイラ)」という点である。
果たしてそれは現実として可能なシチュエーションなのか。
A. 可能です。
古代エジプトの棺(中身入り)はオークションで買えます。
税関を通して手続きすれば、個人輸入も出来ます。
最近だと、ちょうど、こんなニュースがあった。
旅行代理店トーマスクック破産→創業者由来のコレクション売りに出される(古代エジプト遺物)
https://55096962.seesaa.net/article/202008article_8.html
このような感じで、遺物を持ってたお金持ちの家系や会社が放出すると、資産として流出することが考えられる。
しかし、現在ではエジプト遺物はエジプトからの持ち出しが禁止されているため、売り買いできるのは「それ以前」にエジプトから持ち出されていたことが証明できるものに限られる。
最近だと、クリスティーズに出品された遺物の出自が怪しいということで、エジプトからクレームがついた事件もあった。
クリスティーズのオークションにツタンカーメン像の頭部出品、エジプトさんが物言い
https://55096962.seesaa.net/article/201906article_12.html
持ち出しが禁止される方向に動き始めたのは、1925年頃。ツタンカーメン王墓の発見を契機としている。
発掘者が墓を私物化し、勝手に遺物を持ち出したり、好き放題やりはじめたので、エジプト側が制約を強めようとしたのだ。
そして、ユネスコの「文化財の不法な輸出、輸入及び所有権譲渡の禁止及び防止に関する条約」の採択が1970年、発効が1972年となっており、これ以降だと完全にアウト。最近起きたエジプト革命の時代にかなり大規模に盗掘が行われていた問題もあるが、その頃に発掘されたものと分かれば、エジプトに返さなければならない。
最近では、メトロポリタン美術館がこれに引っかかり、購入した棺を返還している。
メトロポリタン美術館、詐欺に遭う。
https://55096962.seesaa.net/article/201902article_23.html
…よって、作中に登場する「王女入りの棺」は、おそらく19世紀後半に流出したもの、かつ、貴族や神官ではなく「王女」なので、元いた時代にもよるがおそらくプロ盗掘者の犯行によって掘り出されたと考えられる。ちなみに、そのへんの盗賊が適当に掘り出したものだと、ミイラをバラバラにしてアクセサリーだけひっぺがしたり、首や腕といった持ち帰りやすいパーツだけ旅行者に売り払ったりするので、残念ながら王女は復活することが出来ない。有名どころでラスール一家あたりがロイヤル・カシェから運び出したものの一つ、とかかなこれ…。
王や王女のミイラが外国に流出することはあるのか? という疑問も出て来るだろうが、実例がある。
”ファラオ奪還” ― ラメセス1世ミイラの返還と、現在の博物館建造ラッシュの裏にあるエジプト事情
https://55096962.seesaa.net/article/200810article_16.html
ラメセス1世のミイラは2003年にエジプトに返還されている。
閉鎖されようとしていた博物館の片隅にヒッソリいたのが発見されたという経緯。
また、各地の博物館や美術館に眠っている王族らしきミイラでも、名前の判っていないものがある。
失われたファラオ様 古代エジプト、知られざる王たちの物語。
https://55096962.seesaa.net/article/201608article_10.html
そのため、王女のミイラが手に入る可能性は、ゼロではない。
しかしまあ、蘇るかどうかはともかくとして、完品のきれいなミイラが日本に入って来ることって、なかなかないと思うのです。
現実は…厳しい…。
こんなかんじに↓なってることも多いので…。
「ネフェルタリ王妃のヒザの裏」ラメセス二世の嫁のミイラ、鑑定される
https://55096962.seesaa.net/article/201612article_8.html
なお、「手に入るかどうか」と「買えるかどうか」は別問題である。
棺つきのミイラ完品となると相当お値段が張る。試しに某オークションサイトで、最近売りに出されていたミイラの生首のお値段を見ると、400ドルほどであった。ネックレス1つで150ドル、棺が2000ドルなど… う、うーん…。 このラノベの主人公宅、間違いなく富豪だよな…?
そりゃそんだけ資産あれば引きこもりにもなりますわ。不労所得で一生食ってけるわ。と、夢のないことをちょっと思ってしまうあたり、ぼくも大人になったなあと おもいます。
あと真面目な話をすると、日本は湿気が多いため、木棺が湿気で歪みやすいのに注意。
自宅の床や押し入れに転がしとくと数年でダメになるので、設備の整ったところで保管しましょう…。最低でもクーラーはかけて…。

オーパーツ・ラブ 〜いけません! ファラオさま〜 (オーパーツ・ラブシリーズ) (スーパーダッシュ文庫) - ゆうき りん, 酒井 ヒロヤス
"御堂獏は、いわゆる“ひきこもり”少年。幼なじみの亜弐をイライラさせつつも、不登校を続けている。ある日、世界を放浪中の考古学教授である父・晩三郎からあやしげな棺が届いた。中から現れたのはなんと、古代エジプトの王女・イプネフェルさま(半裸)だった!?「わらわを甦らせし褒美として、わらわに仕えることを許そうぞ」「あ、ありがたき、幸せ―って、ち、違うっ!」亜弐とペットのみーこもまきこんで、おかしな主従関係が始まった。"
…いわゆるハーレムものというやつだね。うん。
というのはさて置いて、ここで注目したいのは「父から棺が届いた」「中身は古代エジプト王女(のミイラ)」という点である。
果たしてそれは現実として可能なシチュエーションなのか。
A. 可能です。
古代エジプトの棺(中身入り)はオークションで買えます。
税関を通して手続きすれば、個人輸入も出来ます。
最近だと、ちょうど、こんなニュースがあった。
旅行代理店トーマスクック破産→創業者由来のコレクション売りに出される(古代エジプト遺物)
https://55096962.seesaa.net/article/202008article_8.html
このような感じで、遺物を持ってたお金持ちの家系や会社が放出すると、資産として流出することが考えられる。
しかし、現在ではエジプト遺物はエジプトからの持ち出しが禁止されているため、売り買いできるのは「それ以前」にエジプトから持ち出されていたことが証明できるものに限られる。
最近だと、クリスティーズに出品された遺物の出自が怪しいということで、エジプトからクレームがついた事件もあった。
クリスティーズのオークションにツタンカーメン像の頭部出品、エジプトさんが物言い
https://55096962.seesaa.net/article/201906article_12.html
持ち出しが禁止される方向に動き始めたのは、1925年頃。ツタンカーメン王墓の発見を契機としている。
発掘者が墓を私物化し、勝手に遺物を持ち出したり、好き放題やりはじめたので、エジプト側が制約を強めようとしたのだ。
そして、ユネスコの「文化財の不法な輸出、輸入及び所有権譲渡の禁止及び防止に関する条約」の採択が1970年、発効が1972年となっており、これ以降だと完全にアウト。最近起きたエジプト革命の時代にかなり大規模に盗掘が行われていた問題もあるが、その頃に発掘されたものと分かれば、エジプトに返さなければならない。
最近では、メトロポリタン美術館がこれに引っかかり、購入した棺を返還している。
メトロポリタン美術館、詐欺に遭う。
https://55096962.seesaa.net/article/201902article_23.html
…よって、作中に登場する「王女入りの棺」は、おそらく19世紀後半に流出したもの、かつ、貴族や神官ではなく「王女」なので、元いた時代にもよるがおそらくプロ盗掘者の犯行によって掘り出されたと考えられる。ちなみに、そのへんの盗賊が適当に掘り出したものだと、ミイラをバラバラにしてアクセサリーだけひっぺがしたり、首や腕といった持ち帰りやすいパーツだけ旅行者に売り払ったりするので、残念ながら王女は復活することが出来ない。有名どころでラスール一家あたりがロイヤル・カシェから運び出したものの一つ、とかかなこれ…。
王や王女のミイラが外国に流出することはあるのか? という疑問も出て来るだろうが、実例がある。
”ファラオ奪還” ― ラメセス1世ミイラの返還と、現在の博物館建造ラッシュの裏にあるエジプト事情
https://55096962.seesaa.net/article/200810article_16.html
ラメセス1世のミイラは2003年にエジプトに返還されている。
閉鎖されようとしていた博物館の片隅にヒッソリいたのが発見されたという経緯。
また、各地の博物館や美術館に眠っている王族らしきミイラでも、名前の判っていないものがある。
失われたファラオ様 古代エジプト、知られざる王たちの物語。
https://55096962.seesaa.net/article/201608article_10.html
そのため、王女のミイラが手に入る可能性は、ゼロではない。
しかしまあ、蘇るかどうかはともかくとして、完品のきれいなミイラが日本に入って来ることって、なかなかないと思うのです。
現実は…厳しい…。
こんなかんじに↓なってることも多いので…。
「ネフェルタリ王妃のヒザの裏」ラメセス二世の嫁のミイラ、鑑定される
https://55096962.seesaa.net/article/201612article_8.html
なお、「手に入るかどうか」と「買えるかどうか」は別問題である。
棺つきのミイラ完品となると相当お値段が張る。試しに某オークションサイトで、最近売りに出されていたミイラの生首のお値段を見ると、400ドルほどであった。ネックレス1つで150ドル、棺が2000ドルなど… う、うーん…。 このラノベの主人公宅、間違いなく富豪だよな…?
そりゃそんだけ資産あれば引きこもりにもなりますわ。不労所得で一生食ってけるわ。と、夢のないことをちょっと思ってしまうあたり、ぼくも大人になったなあと おもいます。
あと真面目な話をすると、日本は湿気が多いため、木棺が湿気で歪みやすいのに注意。
自宅の床や押し入れに転がしとくと数年でダメになるので、設備の整ったところで保管しましょう…。最低でもクーラーはかけて…。