ミイラから調べるプントの国/古代エジプトの狒々のミイラから輸入元が調査される
プントの国、とは、古代エジプト人が交易していたアフリカ内部のどこかにあった国である。
特にハトシェプスト女王の葬祭殿に描かれた、貢物と高貴な人々の行列が有名だ。しかし、古代エジプト人が「プント」と呼んだ国がどこにあったのかは、まだ特定されていない。
輸入していたものがキリンやペリカン、ヒヒなどの珍しい動物で、植物では黒檀や乳香、紅海沿岸に生えるヤシだったことから、おそらく現在のエリトリア~ソマリアあたりの海岸に面した国だっただろう。と考えられているが、この地域の発掘はそもそもあまり進んでいない(というか正常が安定しない)ので、現地で直接的な証拠を見つけることができない。
そこで間接的な色んな証拠を集めているのだが、今回はなんと輸入した狒々のミイラから、プントの場所を特定しようとしている。いや…まあ、確かにエジプトさん物持ちいいから、出来なくはないんだけど…人骨と同じ手法ってヒヒにも使えるんだ…。
Mummified Baboons Shine New Light On The Lost Land Of Punt
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2020/12/mummified-baboons-shine-new-light-on.html
P. hamadryas baboonなので和訳するとマントヒヒ。現在の棲息範囲はこのへん。
従来からプントの国はこのへんだったはずという定説なので、この中から範囲を絞り込んで、アフリカ側の、記事にある赤く塗られた範囲のどこかが故郷だろう、としているのがこの研究。
使っているのは成長する際に身体の中に取り込んだ鉱物を使って、その鉱物の出所の地域が故郷だと特定する方法だ。人間の歯は、いっかい生えたら一生使う。従って、歯の成長の際に取り込んだ成分は、死ぬまでそのまま歯の中に留まっている。これによって、歯が形成される際に暮らしていた「故郷」を特定できる。
考古学では人骨に使われているのはたまに見かける。地質学と考古学の中間のような手法だ。
人骨のストロンチウム同位体比に関する基礎的研究とその考古学的応用
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19300301/
これ猿に使ってるのは初めて見たな(笑) いやまあ、確かに理屈上は出来るんでしょうけど。
分析した猿の中にはエジプトで育ったものもいたようで、おそらく飼育設備があったのだろうという話も出ていた。連れて来た珍しい猿を繁殖させていたのだろう。
しかし、ここまで地域を絞り込んでも、やはりプントの国の場所と実態は判らない。
何故なら猿の生息地がきっちりプントの国の勢力圏に重なっているとは限らず、隣接地域だった可能性もあるし、プントの国が、のちの「シェバの女王の国」のように、イエメンから北部エチオピアまで紅海をまたがって広がっている国だった可能性もあるからだ。
そして、今回の結果が、プントの国にあやかって「プントランド」と名乗っている地域から微妙にズレているのもあとあとモメそうな気はした。
謎多きプント、果たしてその実態が分かる日は来るのだろうか…。
*****
参考
動物からプントの国の位置を特定する試みとしては、最近だとこんなのが。
・プントの国はいずこなりや 古代エジプトに持ち込まれたヘビクイワシの証拠、見つかる
https://55096962.seesaa.net/article/201806article_26.html
このあたりの地域でエジプトとの関わりといえばアクスム王国。
アクスムはわりと有名だけど、他の近隣の勢力についての情報がほとんど無いんだよなあ。
・アクスム石柱群とエジプト風遺物の関係
https://55096962.seesaa.net/article/201905article_5.html
特にハトシェプスト女王の葬祭殿に描かれた、貢物と高貴な人々の行列が有名だ。しかし、古代エジプト人が「プント」と呼んだ国がどこにあったのかは、まだ特定されていない。
輸入していたものがキリンやペリカン、ヒヒなどの珍しい動物で、植物では黒檀や乳香、紅海沿岸に生えるヤシだったことから、おそらく現在のエリトリア~ソマリアあたりの海岸に面した国だっただろう。と考えられているが、この地域の発掘はそもそもあまり進んでいない(というか正常が安定しない)ので、現地で直接的な証拠を見つけることができない。
そこで間接的な色んな証拠を集めているのだが、今回はなんと輸入した狒々のミイラから、プントの場所を特定しようとしている。いや…まあ、確かにエジプトさん物持ちいいから、出来なくはないんだけど…人骨と同じ手法ってヒヒにも使えるんだ…。
Mummified Baboons Shine New Light On The Lost Land Of Punt
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2020/12/mummified-baboons-shine-new-light-on.html
P. hamadryas baboonなので和訳するとマントヒヒ。現在の棲息範囲はこのへん。
従来からプントの国はこのへんだったはずという定説なので、この中から範囲を絞り込んで、アフリカ側の、記事にある赤く塗られた範囲のどこかが故郷だろう、としているのがこの研究。
使っているのは成長する際に身体の中に取り込んだ鉱物を使って、その鉱物の出所の地域が故郷だと特定する方法だ。人間の歯は、いっかい生えたら一生使う。従って、歯の成長の際に取り込んだ成分は、死ぬまでそのまま歯の中に留まっている。これによって、歯が形成される際に暮らしていた「故郷」を特定できる。
考古学では人骨に使われているのはたまに見かける。地質学と考古学の中間のような手法だ。
人骨のストロンチウム同位体比に関する基礎的研究とその考古学的応用
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19300301/
これ猿に使ってるのは初めて見たな(笑) いやまあ、確かに理屈上は出来るんでしょうけど。
分析した猿の中にはエジプトで育ったものもいたようで、おそらく飼育設備があったのだろうという話も出ていた。連れて来た珍しい猿を繁殖させていたのだろう。
しかし、ここまで地域を絞り込んでも、やはりプントの国の場所と実態は判らない。
何故なら猿の生息地がきっちりプントの国の勢力圏に重なっているとは限らず、隣接地域だった可能性もあるし、プントの国が、のちの「シェバの女王の国」のように、イエメンから北部エチオピアまで紅海をまたがって広がっている国だった可能性もあるからだ。
そして、今回の結果が、プントの国にあやかって「プントランド」と名乗っている地域から微妙にズレているのもあとあとモメそうな気はした。
謎多きプント、果たしてその実態が分かる日は来るのだろうか…。
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参考
動物からプントの国の位置を特定する試みとしては、最近だとこんなのが。
・プントの国はいずこなりや 古代エジプトに持ち込まれたヘビクイワシの証拠、見つかる
https://55096962.seesaa.net/article/201806article_26.html
このあたりの地域でエジプトとの関わりといえばアクスム王国。
アクスムはわりと有名だけど、他の近隣の勢力についての情報がほとんど無いんだよなあ。
・アクスム石柱群とエジプト風遺物の関係
https://55096962.seesaa.net/article/201905article_5.html