ストーンヘンジは元はウェールズに建てられていたものの再利用。という話は、実は新説ではないという話

最近流れていたこの説、実は5年前にはもうあったんだぞ。という話をしたい。
そして一部の人に勘違いされてるっぽいのだか、別にストーンヘンジ自体が移動してきたわけではない。使われている石材の一部が、かつて別の場所で使われていた可能性が見えてきた。というものなのだ。

ストーンヘンジの起源に新説、石はリユース品だった
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/021500073/

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この説は、ストーンヘンジに使われている石材が、かつて別の場所で別のストーンサークルに使われていたのではないか、というものである。
現在のところ、少なくとも一部の石は別のサークルから持って来たもののようだが、ストーンヘンジそのものが別の場所に建てられていたわけではない。ここが重要だ。

ストーンヘンジに使われている石のうち、ブルーストーンと呼ばれる石ははるばるウェールズから運ばれてきたと考えられている。柔らかい石材ではなく、重量もかなりあるものをはるばる何百キロも彼方から運んできたというのは、恐ろしく手間暇がかかっているし、費やされた労働力もハンパないだろう。それゆえ、どのように、どういう目的で建造されたかは想像力をかきたてられるものなのだが、今回の説では、いったん採石場に近いウェールズに小規模なサークルを建て、そのうちの一部を現在のストーンヘンジに再利用した、という内容になっている。

そして、記事内をよく読めば書かれているとおり、この説自体は既に2011年には検討されていた。
5年前の記事でこれである。なので、昨日今日出て来た新説というわけではないし、これで定説が覆るとかいう話でもない。

ストーンヘンジはもともと別の場所にあった? 調査結果で明らかに
https://www.huffingtonpost.jp/2015/12/09/stonehenge-may-have-been-built-somewhere-else-_n_8766028.html

※ちなみに、この記事も発見の内容を勘違いしていて、ストーンヘンジに使われている石の「一部」に再利用の可能性があるだけなのに、ストーンヘンジそのものが別の場所から持ってこられたかのごとく「二番目のストーンヘンジ」と書いてしまっている。

尚、ストーンヘンジという名前を使う場合はイギリスのソールズベリーにあるものを指すが、ストーンサークル自体はブリテン島を中心に、アイルランドやフランスなどに数多く存在する。そのため、ストーンヘンジ自体が別の場所から持って来られたというよりは、実は今あるストーンヘンジが、前段となる小規模な幾つものストーンサークルから石を寄せ集めた集合体である可能性のほうが在り得そうに思われる。

また、ストーンサークルに限らずとも、既に存在していた巨石構造物は、そのへんに幾つもあった可能性もある。
ブリテン島というのはそのへんに巨石がぽつんと建っている場所がよくある。こんな感じで。

巨石―イギリス・アイルランドの古代を歩く - 山田 英春
巨石―イギリス・アイルランドの古代を歩く - 山田 英春

はるばる遠方から運んできて一気に作り上げたのではなく、最初に採石場に近い場所で何か組み立てて、そこから石を運び出して新しい石も足して作り直し、巨大化させていく…このプロセスだと、なぜストーンヘンジのような巨大なものが、石の原産地から遠い場所に作られたのかという説明も付けやすい。また、ストーンヘンジが何世代にも渡って作り続けられたのも謎では無くなる。ストーンヘンジという最終形を思い描いて作業したわけではなく、何度も作り直してたら"結果"としてストーンヘンジになった、ということだからだ。

まだまだ研究は途上で、これからさらに10年はかかると思うけれど、いつかストーンヘンジの「謎」の答え合わせが出来る日が。来るのかもしれない。

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[>関連しそうな話

ストーンヘンジは作られて50年しか経ってない捏造遺跡! と大騒ぎされていたのだが
https://55096962.seesaa.net/article/201708article_23.html

土台にコンクリ入れてるんだから原型じゃない、とか騒ぐのは、世の中に存在する遺跡や遺物の修復・復元の状況を知らん人だけかと。

アイルランドで新たにストーンサークルの痕跡が見つかる。
https://55096962.seesaa.net/article/201807article_24.html

「島のケルトは実はケルトじゃなかった」から派生する諸問題~"ケルト神話"がケルト神話じゃなくなります
https://55096962.seesaa.net/article/201705article_23.html

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