ベネズエラ経済が破綻に至るまでの20年。「ベネズエラ―溶解する民主主義、破綻する経済―」
かつてアメリカよりも豊かといわれ、世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラ経済がなぜ崩壊し、GDPが半減どころじゃない状態に陥ってしまったのか。これは、そんな事情を詳しく説明した本である。

ベネズエラ-溶解する民主主義、破綻する経済 (中公選書 115) - 坂口 安紀
経済よりの本かなーと思って読んでみたら、序盤はベネズエラという国の政治の変遷を説明していて、歴史本としても楽しめた。
前知識として、ベネズエラ経済が破綻する原因となったのは、一つ前の大統領チャベス氏と、その後継者で現在の大統領であるマドゥロ氏の両名である。チャベス時代は原油価格が高騰していて状況的に恵まれていたので、垂れ流されている赤字はそれほど気にならなかったし、まだ信用貸しで借金も出来ていた。しかしマドゥロ時代になると借金が返済できないまま負債が膨大になり、中国もロシアも貸し渋り回収を急ぐようになり、原油価格も下落していったため、現在の国家破綻&ハイパーインフレの状態に。
生活必需品の食料さえも手に入らず、国民の1割以上が出国。
現在のベネズエラは、540万人という膨大な難民を出している、悲惨な状況だ。これ、別に内戦や天変地異が起きたわけではないんである。…ただの自爆でこれなんである。これがほんの数十年前には南米で一番発展していた先進国なんですよ。
https://www.japanforunhcr.org/lp/venezuela
「どうしてこんなことになったのか」。
それがこの本の主題であるが、内容が、なんとも…なんとも…絶句する。国会を通さないブラックな予算とか、国会を掌握するために反対派を選挙に参加させないとか、もうむちゃくちゃ。政府の赤字を補填するために中央銀行に札を刷らせまくるとか、そりゃあインフレになりますわ、としか。
さらに、外貨獲得のための主力である石油会社の売り上げさえも、赤字の補填に使おうとして利益吸いまくった結果、収益を投資に回せず設備が老朽化したとか、国営化して経営牛耳ろうとしてデキるトップを切って子飼いの将軍とか配属した結果、経営が破綻したとか、なんかもうアレでアレすぎて、誰だよこんなクソシナリオ書いたのは、って言いたくなるレベルの失敗を積み重ねている。
民主主義はあっという間に失われ、選挙は形骸化し、「選挙で選ばれた」ことになっている大統領はただの独裁者へと変貌した。
せっかく資源はあるのに、その資源を生かすための方法を分かっていなかったというか、経済の知識がぜんっぜん無かったんだろうな、としか。いや日本も、東日本大震災のあたりの政権がガチでこのレベルだったので全然笑えないんですけどね。
また、チャベス/マドゥロ政権が左派で社会主義を目指していたところから、その手の思想に共感を持つ人たちが妙に援護して、「ベネズエラの経済危機はアメリカの制裁のせいだ」のような論陣を張ることがあるが、政策の内容を見ればそもそもダメすぎることがすぐに判ると思う。というか分からないレベルなら、制裁のせいで何がどうなって経済が悪化するのか、の合理的な説明も出来ないはずだ。
数字で見れば、実は原油価格の下落より以前からGDPのマイナス成長が始まっていることが分かる。
アメリカの制裁は、どちらかというと最後の一押しというか、デフォルト間際で取引を強制的に停止させて傷を負わないよう撤退しうようなもののだと思う。この時点で、ベネズエラは中国やロシア、キューバといった、アメリカと対立している国と強い親交を結ぶ方向にシフトしているので、ぶっちゃけ、このくらい読んでおけよとしか言いようがない。

あと、過去記事とか。
なぜハイパーインフレのジンバブエでは餓死者が出ず、ベネズエラでは大量に出ているのか、という話。
国家経営がほぼ破綻したベネズエラ、その知られざる悲惨さ
https://55096962.seesaa.net/article/201806article_13.html
企業の利益を、事業を継続させるためのシステムメンテナンスなどに必要な部分に投資せずに国家が吸い上げまくると、こうなるという、とても分かりやすい事例。国家事業に対して「無駄」だの「勿体ない」だのすぐに言いたがる人は、ベネズエラさんの自爆っぷりを10000回目に焼き付けてもらいたいです。
ベネズエラの大停電から学ぶ、インフラのメンテナンスの大事さ
https://55096962.seesaa.net/article/201903article_11.html
あとベネズエラ行った時の記録
https://55096962.seesaa.net/article/201810article_2.html
2018年9月はほんとにギリギリのタイミングでしたね…
その時点でもうブラジル側の国境沿いには難民キャンプ出来てたし、ベネズエラからブラジルへ食料の買い出しに出る人の行列すごかったし、現地では紙幣が出回っておらず全部ドルかブラジルレアルの支払いでした。

ベネズエラ-溶解する民主主義、破綻する経済 (中公選書 115) - 坂口 安紀
経済よりの本かなーと思って読んでみたら、序盤はベネズエラという国の政治の変遷を説明していて、歴史本としても楽しめた。
前知識として、ベネズエラ経済が破綻する原因となったのは、一つ前の大統領チャベス氏と、その後継者で現在の大統領であるマドゥロ氏の両名である。チャベス時代は原油価格が高騰していて状況的に恵まれていたので、垂れ流されている赤字はそれほど気にならなかったし、まだ信用貸しで借金も出来ていた。しかしマドゥロ時代になると借金が返済できないまま負債が膨大になり、中国もロシアも貸し渋り回収を急ぐようになり、原油価格も下落していったため、現在の国家破綻&ハイパーインフレの状態に。
生活必需品の食料さえも手に入らず、国民の1割以上が出国。
現在のベネズエラは、540万人という膨大な難民を出している、悲惨な状況だ。これ、別に内戦や天変地異が起きたわけではないんである。…ただの自爆でこれなんである。これがほんの数十年前には南米で一番発展していた先進国なんですよ。
https://www.japanforunhcr.org/lp/venezuela
「どうしてこんなことになったのか」。
それがこの本の主題であるが、内容が、なんとも…なんとも…絶句する。国会を通さないブラックな予算とか、国会を掌握するために反対派を選挙に参加させないとか、もうむちゃくちゃ。政府の赤字を補填するために中央銀行に札を刷らせまくるとか、そりゃあインフレになりますわ、としか。
さらに、外貨獲得のための主力である石油会社の売り上げさえも、赤字の補填に使おうとして利益吸いまくった結果、収益を投資に回せず設備が老朽化したとか、国営化して経営牛耳ろうとしてデキるトップを切って子飼いの将軍とか配属した結果、経営が破綻したとか、なんかもうアレでアレすぎて、誰だよこんなクソシナリオ書いたのは、って言いたくなるレベルの失敗を積み重ねている。
民主主義はあっという間に失われ、選挙は形骸化し、「選挙で選ばれた」ことになっている大統領はただの独裁者へと変貌した。
せっかく資源はあるのに、その資源を生かすための方法を分かっていなかったというか、経済の知識がぜんっぜん無かったんだろうな、としか。いや日本も、東日本大震災のあたりの政権がガチでこのレベルだったので全然笑えないんですけどね。
また、チャベス/マドゥロ政権が左派で社会主義を目指していたところから、その手の思想に共感を持つ人たちが妙に援護して、「ベネズエラの経済危機はアメリカの制裁のせいだ」のような論陣を張ることがあるが、政策の内容を見ればそもそもダメすぎることがすぐに判ると思う。というか分からないレベルなら、制裁のせいで何がどうなって経済が悪化するのか、の合理的な説明も出来ないはずだ。
数字で見れば、実は原油価格の下落より以前からGDPのマイナス成長が始まっていることが分かる。
アメリカの制裁は、どちらかというと最後の一押しというか、デフォルト間際で取引を強制的に停止させて傷を負わないよう撤退しうようなもののだと思う。この時点で、ベネズエラは中国やロシア、キューバといった、アメリカと対立している国と強い親交を結ぶ方向にシフトしているので、ぶっちゃけ、このくらい読んでおけよとしか言いようがない。

あと、過去記事とか。
なぜハイパーインフレのジンバブエでは餓死者が出ず、ベネズエラでは大量に出ているのか、という話。
国家経営がほぼ破綻したベネズエラ、その知られざる悲惨さ
https://55096962.seesaa.net/article/201806article_13.html
企業の利益を、事業を継続させるためのシステムメンテナンスなどに必要な部分に投資せずに国家が吸い上げまくると、こうなるという、とても分かりやすい事例。国家事業に対して「無駄」だの「勿体ない」だのすぐに言いたがる人は、ベネズエラさんの自爆っぷりを10000回目に焼き付けてもらいたいです。
ベネズエラの大停電から学ぶ、インフラのメンテナンスの大事さ
https://55096962.seesaa.net/article/201903article_11.html
あとベネズエラ行った時の記録
https://55096962.seesaa.net/article/201810article_2.html
2018年9月はほんとにギリギリのタイミングでしたね…
その時点でもうブラジル側の国境沿いには難民キャンプ出来てたし、ベネズエラからブラジルへ食料の買い出しに出る人の行列すごかったし、現地では紙幣が出回っておらず全部ドルかブラジルレアルの支払いでした。