DNA分析×統計学、オーストラリア先住民と南米先住民の間に共通の遺伝子が発見される
記事
https://www.sciencemag.org/news/2021/03/earliest-south-american-migrants-had-australian-melanesian-ancestry

元論文
https://www.pnas.org/content/118/14/e2025739118#ref-2
この話は、南米先住民のいくつかのグループと、オーストラリアの先住民との遺伝子の間に関連性が見つかった、という話である。約6万年前にオーストラリアに到達した人たちと、約2万年前にアメリカ大陸に到達した人たちの間の共通遺伝子ということは、二つの集団が分岐する前に存在した因子ということになるだろう。
このシグナル(ある特定の遺伝的な変異)は、「祖先」を意味するypikuéraにちなんで「Yシグナル」と呼ばれているらしい。
男系で遺伝するY遺伝子のことではないので注意だ。
この研究はどうやっているかというと、基本的には統計的な手法になっている。
統計学やった人なら判ると思うが、「有意に関係があると言えるか」「ただ偶然似ているだけか」を計算して、偶然ではない可能性が高い、という結果が出た集団を洗い出している。下の図で、赤色の濃いところが「関連性があると確実に言える」集団。色が薄いほど繋がっている可能性が低くなる。赤色の〇がバラけていることから、かつては南米全体に同じ遺伝的変異(Yシグナル)を持つ集団が広がっていて、その後、近代の移住者などによって上書きされていったのではないか、という説になっているのだ。
ヒトの全ゲノムが解析されたのもそう昔ではないはずなのだが、最近はコンピュータの分析性能も上がってきて、こういうのがさほど時間かけずに出せるようになったんだなぁ…と、しみじみ。
今回の研究から、南米への移住は、少なくとも2つの流れによって形成されていると考えられる、という。
一つはベーリング海峡付近にいたアジア人との共通祖先から分離した第一波。これはおそらく二万年前くらいだと言われている。(もっと古く、三万年前説を唱える人もいる。)
もう一つは、その共通祖先と東南アジアの人が混血した第二波。
赤色とピンク色の分布がそのまま第一波と第二波になっているのか、両者の混血の結果なのかは分からないようだ。
これは、言語学や民族学の面からも提示されている説と同じなので、既存説を強化する形になっていると思われる。
今回の研究から、南米への初期の移民は、旧来言われていたように海岸沿いに南下して最初に海岸沿いに定住したことが示唆されている。これも、沿岸沿いの遺跡で見つかる石器などから推測されていた旧来の説と一致する。氷河期が終わる前、まだ陸地の大半が氷におおわれていた頃も最初の移住者たちは海伝いに、海の幸を頼りに居住地を広げていった航海者だったようだ。
奇しくも、遥かな海を越えてオーストラリアへたどり着くために必要とされたスキルと同じ「渡海術」だった。もしかしたら彼らは、共通祖先から別れる時点ですでに、このスキルを獲得していたのかもしれない。
…と、かっこよくシメておいてなんなのだが、数万年も前となると、共通祖先から引き継いだ遺伝的な変異がさらに変異して幾つかのサブグループに分かれているようなので、その変異が本当に共通祖先から来た者なのか、偶然似ているように見えるだけの産物なのかは、確率論になってしまう。
論文は統計学的に有意な数字をとって出されているはずだが、統計の数字マジックという可能性もまだ残されてはいる。
ただ、この研究自体、2015年に出た研究結果の検証として出されているようなので、まるっと間違えている可能性は低いかな…と…元データの分析の妥当性までは私の能力ではちょっと判断できないので。
統計学とか得意な研究者の人は、元データから見て検証してください(ガチ研究
https://www.sciencemag.org/news/2021/03/earliest-south-american-migrants-had-australian-melanesian-ancestry

元論文
https://www.pnas.org/content/118/14/e2025739118#ref-2
この話は、南米先住民のいくつかのグループと、オーストラリアの先住民との遺伝子の間に関連性が見つかった、という話である。約6万年前にオーストラリアに到達した人たちと、約2万年前にアメリカ大陸に到達した人たちの間の共通遺伝子ということは、二つの集団が分岐する前に存在した因子ということになるだろう。
このシグナル(ある特定の遺伝的な変異)は、「祖先」を意味するypikuéraにちなんで「Yシグナル」と呼ばれているらしい。
男系で遺伝するY遺伝子のことではないので注意だ。
この研究はどうやっているかというと、基本的には統計的な手法になっている。
統計学やった人なら判ると思うが、「有意に関係があると言えるか」「ただ偶然似ているだけか」を計算して、偶然ではない可能性が高い、という結果が出た集団を洗い出している。下の図で、赤色の濃いところが「関連性があると確実に言える」集団。色が薄いほど繋がっている可能性が低くなる。赤色の〇がバラけていることから、かつては南米全体に同じ遺伝的変異(Yシグナル)を持つ集団が広がっていて、その後、近代の移住者などによって上書きされていったのではないか、という説になっているのだ。
ヒトの全ゲノムが解析されたのもそう昔ではないはずなのだが、最近はコンピュータの分析性能も上がってきて、こういうのがさほど時間かけずに出せるようになったんだなぁ…と、しみじみ。
今回の研究から、南米への移住は、少なくとも2つの流れによって形成されていると考えられる、という。
一つはベーリング海峡付近にいたアジア人との共通祖先から分離した第一波。これはおそらく二万年前くらいだと言われている。(もっと古く、三万年前説を唱える人もいる。)
もう一つは、その共通祖先と東南アジアの人が混血した第二波。
赤色とピンク色の分布がそのまま第一波と第二波になっているのか、両者の混血の結果なのかは分からないようだ。
これは、言語学や民族学の面からも提示されている説と同じなので、既存説を強化する形になっていると思われる。
今回の研究から、南米への初期の移民は、旧来言われていたように海岸沿いに南下して最初に海岸沿いに定住したことが示唆されている。これも、沿岸沿いの遺跡で見つかる石器などから推測されていた旧来の説と一致する。氷河期が終わる前、まだ陸地の大半が氷におおわれていた頃も最初の移住者たちは海伝いに、海の幸を頼りに居住地を広げていった航海者だったようだ。
奇しくも、遥かな海を越えてオーストラリアへたどり着くために必要とされたスキルと同じ「渡海術」だった。もしかしたら彼らは、共通祖先から別れる時点ですでに、このスキルを獲得していたのかもしれない。
…と、かっこよくシメておいてなんなのだが、数万年も前となると、共通祖先から引き継いだ遺伝的な変異がさらに変異して幾つかのサブグループに分かれているようなので、その変異が本当に共通祖先から来た者なのか、偶然似ているように見えるだけの産物なのかは、確率論になってしまう。
論文は統計学的に有意な数字をとって出されているはずだが、統計の数字マジックという可能性もまだ残されてはいる。
ただ、この研究自体、2015年に出た研究結果の検証として出されているようなので、まるっと間違えている可能性は低いかな…と…元データの分析の妥当性までは私の能力ではちょっと判断できないので。
統計学とか得意な研究者の人は、元データから見て検証してください(ガチ研究