妖精は砂漠に踊る。ナミブ砂漠に出来る謎の「フェアリー・サークル」、有毒植物説は否定される

今回の話の舞台となるナミブ砂漠は、アフリカの南西、ナミビアの沿岸部に広がる、世界最古とも言われる砂漠である。
砂漠という名前で、確かに砂地が広がってはいるのだが、海から霧が流れてくるため雨ではなく霧によって水分が補給され、様々な動植物が生息することが出来る。ここの小動物は朝方に体の表面についた霧滴を舐めて水分補給していたりする。
詳しくは、↓このあたりの資料とか見て欲しい。

ナミブ砂漠の驚異の自然とその歴史
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejgeo/13/1/13_377/_pdf


さて、そのナミブ砂漠なのだが、植物が生える時に何故かフェアリー・サークルと呼ばれる謎の円形脱毛症が出来る。
その理由が分からなくて、何十年も学者たちが研究している。

Feenkreise_Namibia.jpg

シロアリの活動によって出来る! とか、毒成分を出す植物のせい! とか、今まで幾つかの説が出て騒がれたことはあったものの、どれも異論が出ており、決定打ではない。 論文は、出た時点では「答え」ではなく、そこから追試を重ねて論文の内容が検証され、多くの学者が「うん、確かにそうだね」となった時点で定説となる。アクセス数稼ぎの記事とかだと、論文が出た時点でいきなり「ついにxxの謎が明らかに!」から入っちゃうけど、世の中に出回っている論文はほとんどがあとで否定されます…。

というわけで今回も否定の論文なのだが、有毒な成分を出す植物ユーフォルビア(Euphorbia)によって一時的に植物の生えられない場所が出来る、という説が完全に否定されている。

Origin Of Fairy Circles: Euphorbia Hypothesis Disproved
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2021/06/origin-of-fairy-circles-euphorbia.html

11.PNG

その検証のやり方が実に地道なのである。
かつて「ユーフォルビアのせいで周囲に植物が生えなくなるのでは」という論文が書かれた時に目印に立てたピンの場所を探し出して、40年ぶりにそこに戻って、ほんとにフェアリーサークルが出来ているかを確認したのだ。なんと40年越しの調査である。
その結果、ユーフォルビアの周囲にフェアリーサークルは出来ておらず、ユーフォルビアの成長とフェアリーサークルの成長も一致していなかった、というのだ。

砂漠の植物はもともと成長がゆっくりなので、数年単位での観察ではあまり意味がないが、40年越しの定点観測となると信用できると思う。


というかそもそも、このフェアリーサークル自体、ゆっくり出来てゆっくり消えていく、数十年単位の現象で、輪の寿命は30-60年と言われる。過酷な環境だし、出来るところを観察するのも難しい現象なのだ。
ただ、今ならネットワークカメラとかドローンとか使えるので、カメラ仕掛けとけば地面の変化は追えるんじゃないかな…?

地球上には、まだまだ知られざる謎がある。この謎がいつか解ける日はくるのだろうか。


****
なお、デス・バレーの動く石の謎は近年、ガチで解明されました。これは動くところまで映像に入ってるので異論は出なかったやつ。
GPSは偉大だった。

https://wired.jp/2014/09/01/death-valley-sailing-rocks/

この記事へのトラックバック