17年ゼミと13年ゼミの発生周期から知る地球と昆虫の長い歴史

17年ゼミの大量発生のニュース見て、そういやあいつら何で周期で発生するんだっけ? と思ったのがキッカケで、本とか読んでみたら面白かった。はるか何千万年という地球の気候変動の歴史が、昆虫の分布と生態系の進化に関わっていた。

17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る! (サイエンス・アイ新書) - 吉村 仁
17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る! (サイエンス・アイ新書) - 吉村 仁

本買うまでは面倒、って人はこのあたりの記事を読むといいけど、本のほうは昆虫の進化についての概要も入っているので本のほうがオススメ。

17年周期、13年周期で大発生!! 「素数ゼミ」の謎を日本の研究者が解明した!!
https://tenki.jp/suppl/romisan/2016/08/18/14811.html

ざっくり言うと、17年とか13年とかの周期で大発生するセミたちは、氷河期の厳しい環境に耐えるためにそのように進化した

気候が寒くなると虫は暖かいほうへ南下するのがセオリーだ。
しかし北米の場合、氷河期にはまだメキシコあたりは水没していて、南下したくても海に阻まれて出来なかった。結果、湧水があるなどの理由で比較的温暖な限られたスポットに少数が点在して生き残るしかなかった。そうしたスポットで、少数しかいないセミたちが確実に出会って交尾するために生み出した進化が「羽化する時期を合わせるタイマーを遺伝子に仕込む」という戦略。

ちなみに日本のセミなどは、このタイマーが存在しない。気温が高ければ早く成虫になって早く鳴き始めるし、冷夏の年はなかなか成虫にならないという気温依存の生態になっている。(これは他の多くの虫でも同じ)
しかしこれだと、虫の成長の遅い寒冷な気候の続く氷河期では不利になる。同種の異性と出会える確率が下がってしまうからだ。

タイマーを手に入れたセミたちは、最初は15年とか16年とかもいたらしい。
しかし、別の長さのタイマーを持つセミと出会って間違えて交尾してしまうと、遺伝子がまじりあってタイマーがズレるのだ。

たとえば、15年ゼミと18年ゼミの周期が一致するのは90年ごと。90年ごとに多くの「雑種」が生まれてしまい、タイマーが毎回ブレる。
すると、同種のセミと出会える確率がどんどん減っていき、長い年月のうちに絶滅してしまう。

17年や13年という「素数」の周期のセミだけが残ったのは、発生年が素数であり、他の周期のセミと交雑することがほとんど無いまま氷河期を終えたからだったのだ。つまり素数ゼミは、「素数」周期で発生するからこそ生き残れた。これは発見した人も凄いし、数学との合わせ技の理論に「な、なるほど…!」と唸ってしまう。


しかし氷河期はとっくに終わり、今や温暖な時代である。
温暖ゆえにセミたちはめちゃくちゃ増える。
かくて生息域は広がり、増えすぎたセミは人間に「邪魔」と言われる始末となった。

なお、同じ17年ゼミや13年ゼミでも微妙に発生年が異なるらしく、現在のところこのようになっている。
この範囲内でもかなり限られた場所に棲息しているようだが、それは元々、この周期発生が「限られた数しかいない同種と出会う」ために進化したことと関係しているらしい。
氷河期には、羽化した場所にじっとしていないと交尾相手と出会えなかった。だから今もその特性のまま、生まれた場所から離れないのだそうだ。

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また、この本には、北米やヨーロッパが広さのわりに昆虫の多様性が少ないということ、ブリテン島は動植物とも数が限られるということなども出てくるが、それは氷河期による大量絶滅のせいだという。
北米はメキシコ湾が障壁となり、ヨーロッパはピレネー山脈や地中海などが障壁となり、さらにアフリカ側にはサハラ砂漠もある。寒くなったからといって昆虫が容易に南下できる環境ではなく、逆に、温暖化しても新しい種が南から北上してきづらい。

しかし日本は寒くなると大陸と陸続きになったり、島嶼が飛び石のようになっていたりで、昆虫は入ってきやすかった。どんどん入ってきては、氷河期になるたびに暖かい場所に集中して避難してそれぞれ独立種になっていくのを繰り返し、結果、日本は広さのわりに昆虫が多種多様になったと考えられるのだそうだ。

そして近縁種が多くなってくると、間違った種と交雑しないためにそれぞれの種がオリジナリティを出していく。
日本はセミの種類が多く、それぞれ鳴き声が違うが、それは自分の種の声にだけ反応するためなのだそうだ。

 そう、これはちょっとびっくりしたのだが、セミは「仲間の声を聞き分けている」らしい。

そんなばかな、と思ったが、17年セミや13年ゼミも鳴き声で種を区別しているらしく、著者が実際にやってみているので納得するしかない。あと、ツクツクボーシは世界でも唯一、「歌う」セミだそうで、他の国のセミはそんなに複雑な鳴き方はしないとか。他の種のセミが同時に鳴く中で、自分の種の声を目立たせるための工夫なのだ。

ちなみにスズムシやマツムシなど、秋の虫たちの声がそれぞれ違って複雑なのも、他の種と区別をつけるための進化なのだとか。
鳴く種が1種類しかいないような地域では、虫の声も単調なほうに進化するのだという。


いやあ…昆虫の世界も奥が深いんだな…。
あと進化圧とか、そうか、こう働くのか…みたいなシミジミとした気分になった。

セミたちの生存のための戦略と、生き残りをかけた苦労、知らなくてゴメンな。
あと、そんな苦労して編み出した戦略を「うるせぇ」とか「多すぎ」とか言っちゃってほんとにゴメンな。しかも人間、さいきんキミたちのこと食ったりしてるからな。17年もかけて地上に出てきたと思ったら食われるとか無いよな、わかる。その気持ちはわかるけど、この新参の裸のサルを許してほしい。ぼくらは「何でも食う」っていう戦略で生き残ってきた種族だから…。


地球の歴史とセミたちの進化の歴史。
今年の夏は、いつになく神妙な気持ちでセミの声が聴けるかもしれません。(まぁたぶん三日くらいで「うるせぇ!」ってなるんだろうけど)

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