サウジアラビア北部で新バビロニア最後の王ナボニドスの碑文が見つかる。(解読中)

メソポタミアだけじゃなく、サウジアラビアも一部が楔形文字文化圏に入っているので碑文が見つかる。ただ、今回はサウジで見つかった中では最長であること、「なぜか」バビロンを離れサウジアラビア北部でほぼ亡命に近い生活を送っていた新バビロニア最後の王の碑文だということで、少し特殊な意味合いを持つ。

というわけで記事とか。

Cuneiform inscription from last king of Babylon discovered in Saudi Arabia
https://www.livescience.com/longest-cuneiform-inscription-last-babylon-king-saudi-arabia.html

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この写真は上部の部分だけで、この下に碑文が続く。
一見して、境界碑(クドゥル)っぽい雰囲気を持っているなと思った。クドゥルは使われたのが古バビロニア時代なので、時代的にはズレているのだが、実際、今回この石碑が見つかった場所は、新バビロニアの国境線沿いにあたる。碑文はまだ解読中らしいが、もしかしたら似たような意味合いで置かれた可能性もあるかも。

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ナボニドス(アッカド語ではナブー・ナイド。ナブー神の名が入っている)は、ネブカドネザル2世の後継者の一人だが、直系ではなく簒奪者だった。
シリアやエジプトとの交易路の確保につとめる一方、なぜか10年もサウジアラビア北西部の都市テマに居住していたとされる。当然その間、バビロンは代理統治だ。アケメネス朝ペルシアがバビロンに迫るとさすがに帰国はしたようだが、無血開城であっさり陥落してしまう。

彼がなぜバビロンに住みたがらなかったのかは謎だが、月神シンへの信仰に傾倒していたためにバビロンの神官たちと折り合いが悪かったのでは、という説がある。この碑文にも月の印がある。信仰に関する情報も何か書かれているかもしれない。解読結果が楽しみだ。



この王をもって新バビロニアの歴史は終了し、メソポタミアは歴史の表舞台からフェードアウトする。
偉大なる王ネブカドネザル2世の死からたったの24年。ある意味で、歴史のターニング・ポイントに位置する発見と言えるだろう。


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おまけ

新バビロニア滅亡に至る流れは、このへんが分かりやすい。

古代メソポタミア全史 シュメル、バビロニアからサーサーン朝ペルシアまで (中公新書) - 小林登志子
古代メソポタミア全史 シュメル、バビロニアからサーサーン朝ペルシアまで (中公新書) - 小林登志子

ネブカドネザル2世: バビロンの再建者 (世界史リブレット人) - 重郎, 山田
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