古代エジプトの医療パピルス一覧めも
医療パピルスといえばエーベルス・パピルスとか有名だけど、他にも実はあるんだよね。
いつかまとめようと思ってたら丁度いいジャーナルが落ちていたのでそこから翻訳して置いておくよ。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1319562X21005027#b0730
あとWikipediaだとこのへんにまとまっている。海外のエジプトマニア勢こまめに更新してるからなぁ…
まあでも自分で調べないと頭には入らないので。
https://en.wikipedia.org/wiki/Egyptian_medical_papyri
****************************************************
●カフーン・パピルス
Kahun papyrus
紀元前1825年ごろ
婦人科、避妊、妊娠の技術など。手術を伴わない医療。
避妊薬の作り方が出てくるので、おそらくこの時代にはもう避妊の考え方があった。
●エドウィン・スミス・パピルス
Edwin Smith papyrus
紀元前1825年ごろ
外科手術を伴う医療に関するパピルス。
外傷の縫合についての記述が詳しい。
●ベルリン・パピルス
Berlin papyrus(Berlin Papyrus 6619)
紀元前1900–1700年ごろ
20世紀初頭にサッカラで発掘されたコレクションの中の医療部分。
古代エジプト本でよく出てくる、麦におしっこをかけて妊娠中の子供の性別を占うという話は、このパピルスに出てくる。
(ただし、子供の性別占いの記述自体は他のパピルスでも扱われている。)
●ラメセウム医療パピルス
Ramesseum medical papyri
紀元前1700年ごろ
目の病気、婦人科疾患、子供の病気など生活の中で多い病気について詳細に書かれている。
手足の弛緩や筋肉の病気(手足が萎えるなど)についても出てくる。
●エーベルス・パピルス
Ebers papyrus
紀元前1600年ごろ
テキスト量が多く有名なもの。
蠕虫症、眼科、皮膚科、婦人科、産科、歯科、外科と、あらゆる医療分野についてのまとまった資料。
うつ病治療まで書かれている。
おそらく医学生のための勉強用テキストだろうと言われている。
●ハースト・パピルス
Hearst papyrus
紀元前1550年ごろ
地方都市で見つかったことや、あまり体系だてて書かれていないことから、開業医の覚書だろうと言われているもの。
呪文とセットで遣う治療法なども書かれており、民間治療も混じっている可能性がある。
ここに書かれている治療が、おそらく町の医師がたくさん対応しなくてはならなかったよくある病状。
●エルマン・パピルス
Erman papyrus
紀元前1550年ごろ
婦人科医療に関するパピルス。
出産、乳児の健康や、子供を守るための呪文(日本でいうところの「おまじない」の感覚に近いと思われる)が書かれている。
●カールスバーグ・パピルス
Carlsberg papyrus
紀元前1400年ごろ
目の病気や妊娠に関する内容。
●ロンドン・パピルス
London papyrus
紀元前1300年ごろ
医学的な内容と魔術的なものが半々。
皮膚の治療や火傷についての内容が出てくる。また流産予防なども書かれている。
●ブルクシュ・パピルス/大ベルリン・パピルス
Brugsch Papyrus
紀元前1300年ごろ
エーベルス・パピルスとだいたい同じ内容
●ライデン・パピルス
Leiden Papyrus
紀元前1300年ごろ
●チェスター・ビーティ・パピルス
Chester Beatty Medical Papyrus
紀元前1200年ごろ
これは有名なやつなので翻訳があちこちに落ちている。
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だいたいこのあたりを探れば、古代エジプトの医療レベルや傾向は分かる。
というか有名所をいくつか見てみると、内容がほぼぼ被っていることに気づくと思う。
おそらく大元は、「色々やってみてこれが効いた。なぜ効いたかはよくわからん」的な知識の集大成なのだと思う。それが伝統医療として、何千年も書き伝えられていたわけだ。医療レベルは現代からは比べ物にならないが、古代世界では十分に高かったのだと思う。
それから、妊娠・出産や新生児の病気など、現代においても決して簡単ではなく、死亡に結びつきやすいセンシティヴな部分の医療が手厚いのには驚かされる。妊婦のメンタルケアと思しき記述もあるし。(呪文、という形でだけど) 古代世界の妊婦や新生児の死亡率の高さを考えると、そこを体系づけられた医療でカバー出来たのはすごいと思うんですよね。
古代世界でエジプトの医師の評価が高かったのも納得できるのです。
いつかまとめようと思ってたら丁度いいジャーナルが落ちていたのでそこから翻訳して置いておくよ。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1319562X21005027#b0730
あとWikipediaだとこのへんにまとまっている。海外のエジプトマニア勢こまめに更新してるからなぁ…
まあでも自分で調べないと頭には入らないので。
https://en.wikipedia.org/wiki/Egyptian_medical_papyri
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●カフーン・パピルス
Kahun papyrus
紀元前1825年ごろ
婦人科、避妊、妊娠の技術など。手術を伴わない医療。
避妊薬の作り方が出てくるので、おそらくこの時代にはもう避妊の考え方があった。
●エドウィン・スミス・パピルス
Edwin Smith papyrus
紀元前1825年ごろ
外科手術を伴う医療に関するパピルス。
外傷の縫合についての記述が詳しい。
●ベルリン・パピルス
Berlin papyrus(Berlin Papyrus 6619)
紀元前1900–1700年ごろ
20世紀初頭にサッカラで発掘されたコレクションの中の医療部分。
古代エジプト本でよく出てくる、麦におしっこをかけて妊娠中の子供の性別を占うという話は、このパピルスに出てくる。
(ただし、子供の性別占いの記述自体は他のパピルスでも扱われている。)
●ラメセウム医療パピルス
Ramesseum medical papyri
紀元前1700年ごろ
目の病気、婦人科疾患、子供の病気など生活の中で多い病気について詳細に書かれている。
手足の弛緩や筋肉の病気(手足が萎えるなど)についても出てくる。
●エーベルス・パピルス
Ebers papyrus
紀元前1600年ごろ
テキスト量が多く有名なもの。
蠕虫症、眼科、皮膚科、婦人科、産科、歯科、外科と、あらゆる医療分野についてのまとまった資料。
うつ病治療まで書かれている。
おそらく医学生のための勉強用テキストだろうと言われている。
●ハースト・パピルス
Hearst papyrus
紀元前1550年ごろ
地方都市で見つかったことや、あまり体系だてて書かれていないことから、開業医の覚書だろうと言われているもの。
呪文とセットで遣う治療法なども書かれており、民間治療も混じっている可能性がある。
ここに書かれている治療が、おそらく町の医師がたくさん対応しなくてはならなかったよくある病状。
●エルマン・パピルス
Erman papyrus
紀元前1550年ごろ
婦人科医療に関するパピルス。
出産、乳児の健康や、子供を守るための呪文(日本でいうところの「おまじない」の感覚に近いと思われる)が書かれている。
●カールスバーグ・パピルス
Carlsberg papyrus
紀元前1400年ごろ
目の病気や妊娠に関する内容。
●ロンドン・パピルス
London papyrus
紀元前1300年ごろ
医学的な内容と魔術的なものが半々。
皮膚の治療や火傷についての内容が出てくる。また流産予防なども書かれている。
●ブルクシュ・パピルス/大ベルリン・パピルス
Brugsch Papyrus
紀元前1300年ごろ
エーベルス・パピルスとだいたい同じ内容
●ライデン・パピルス
Leiden Papyrus
紀元前1300年ごろ
●チェスター・ビーティ・パピルス
Chester Beatty Medical Papyrus
紀元前1200年ごろ
これは有名なやつなので翻訳があちこちに落ちている。
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だいたいこのあたりを探れば、古代エジプトの医療レベルや傾向は分かる。
というか有名所をいくつか見てみると、内容がほぼぼ被っていることに気づくと思う。
おそらく大元は、「色々やってみてこれが効いた。なぜ効いたかはよくわからん」的な知識の集大成なのだと思う。それが伝統医療として、何千年も書き伝えられていたわけだ。医療レベルは現代からは比べ物にならないが、古代世界では十分に高かったのだと思う。
それから、妊娠・出産や新生児の病気など、現代においても決して簡単ではなく、死亡に結びつきやすいセンシティヴな部分の医療が手厚いのには驚かされる。妊婦のメンタルケアと思しき記述もあるし。(呪文、という形でだけど) 古代世界の妊婦や新生児の死亡率の高さを考えると、そこを体系づけられた医療でカバー出来たのはすごいと思うんですよね。
古代世界でエジプトの医師の評価が高かったのも納得できるのです。