16世紀にメキシコで流行した疫病は何だったのか。病原体の検出から辿る科学×考古学

世界的な病原菌の流行ということもあって、最近わりと疫病関連の研究をトレンドで見ることが多いなーという感じなのだが、辿っていたら、少し前の研究で、メキシコで16世紀に流行し、アステカ人を激減させた原因の一つがサルモネラ菌ではないか、という話を見つけた。

https://www.archaeology.org/issues/298-1805/trenches/6524-trenches-mexico-colonization-salmonella

日本語での記事
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/011800021/?P=1
※ただし、「ココリツリの病原体を特定」という記事タイトル自体は、ちょっと飛ばし記事気味。これが本当にココリツリかどうかは、同じ病気でもっと大量に亡くなっている証拠が見つからないと難しい。

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コンキスタドール(スペインからの征服者)がやってきた以降、アステカ周辺ではココリツリ(Cocoliztli)と呼ばれる疫病の蔓延があり、人口が激減している。その病気はもしかしたら単一の原因ではないかもしれないのだが、当時亡くなった人たちの遺骨から病原体のDNAを検出して病名を特定しようとする研究をやっていたらしいのだ。

参考: ココリツリ
https://en.wikipedia.org/wiki/Cocoliztli_epidemics

人口減がハンパないが、実際こんな感じだったらしい。
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ちなみに南米の他地域もかなりの人口減。

参考: スペイン人の南米開拓時における人口減少の資料その2
https://55096962.seesaa.net/article/200909article_5.html


実際、これらの人口減の原因を一つに絞るのは難しいと思う。以前からチフスやインフルエンザ、天然痘などいくつもの病気が候補としてあげられてきたが、それらの複合要因ということは有り得るだろう。というか、100年で人口が90%も減少するほどなのだから、単一の病気というのはなかなか考えにくいのではないかと思う。エボラ出血熱だってそこまで致死率高くないし…。(もっとも、16世紀当時の医療知識では、現代ほど人命救えなかった可能性もあるだろうが)

探してみたけど続きの研究が見つからなかったので、この説はまだ一つの可能性に留まるとは思われるが、遺体から病原体を探す研究はわりと最近のトレンドになっているので、ぜひコロナの落ち着いた暁には…続きを…。

#最近の技術なら、RNAの検出も出来るんじゃないかなあ
#500年前なら、古代史的には比較的新しいし。

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