古代エジプト王の冠はなぜ残っていないのか。~各王ごとに作っていたはずなのに?
古代エジプトの王の冠は、下エジプトを意味する「赤冠」と上エジプトを意味する「白冠」を合体させ、二つの国の統治者という意味で「二重冠」だ。
こういうやつ。
被っているところのイメージ図としては、こんな感じ。
それなりに硬い材質でないと形が潰れてしまうので、木の枠に布を貼るとか何か工夫をして作ってたのだと思われる。
ただ、これは実物が一つも残っていないので、実際どういう材質で、どう作られていたのかが分かっていない。
従来の説では、「王冠は生きている王の冠だから、墓に入れて死後の世界に持っていくことは無かったはずだ」というものが多かった。
でも死者の国の王であるオシリス神だって、冠は被っているのだ。
あと、ツタンカーメンの墓からは、「普段着」と言うべきネメス冠については見つかっている。
こういうやつ。
だとしたら、二重冠が見つからないのは不自然に思える。壁画への登場回数の多さをそのまま信じるのであれば、何かの儀式のたびに頻繁に見に付けていたはず。しかも構造上、王の頭の形や幅に合わせて毎回、作り直す必要があったはずで、特に幼い頃に即位した王などは、子供時代の冠から順番に、少しずつ大きくなっていく歴代の冠を持っていたはずなのだ。次の王に持ち越すわけにもいかないのだから、処分するとすれば墓に入れるしかない。
実際、ツタンカーメンの墓からは子供服も出てきているのだ。
そこでちょっと考えてみた。
可能性としては、以下の3つだ。
【仮説1】何らかの宗教上の理由や慣習により、王が生前に身に着けたものの中で一部のものは墓に入れずに別の処分方法で処分されていた。
→ただ、これは、子供時代の下着や儀礼用の装身具、使った杖全部を墓に突っ込んでいたツタンカーメン王墓の事例を見ると、ちょっと考えづらい。
【仮説2】二重冠は壁画に描く際の「お約束」であり、実際に身につけられることは無かった。
→実は、これが一番ありそうな気がしている。エジプトといえばこれでしょ、と言われているほど代表的な、幅の広いネックレスですら、実際はほとんどが埋葬のために作られる「身につけることの出来ない飾り」であったことが、最近の研究で分かってきているからだ。
古代エジプト絵でよくある幅広の首飾り、実は言うほど身につけてなかったかもしれない
https://55096962.seesaa.net/article/201805article_22.html
実物として存在しなかったのなら、出土しないのも当然、ということになる。
【仮説3】想定されているものと材質や見た目がかなり異なる
→実は今までに出土はしているけれど、想像していたものと違いすぎて誰も気がついていない、という説、そこまで形がガッチリしたものではなく、一見して布の塊にしか見えないような作りだったりすると、「用途不明な織物」としてしか記録されていないかもしれない。
最近、壁画てよく見る「頭に載せてるアレ」の実物らしきものが見つかったが、その用途や材質も想定とは少し異なっていた。
ついにあの謎の物体の実物が? 古代エジプトの「頭の上に載せてる謎のアレ」
https://55096962.seesaa.net/article/201912article_12.html
以上、3つほど仮説をたててみた。
個人的には、神や王が被っている冠は、大部分が「概念的なもの」「伝統的な図式」であって、実用ではなかったと思うのだ。ていうか複雑でデカい冠、本当に頭に載せたら、首が折れるか、バランス難しくて立ち上がることも出来ないんじゃないかと思うんだよね…。
ちなみに、有名な黄金の髪飾りも、金の純度が高いので、本当に髪につけたとしたら重すぎるということが分かっている。
その者、黄金の頭飾りを身に着けて。 ~不可能と呼ばれた「髪飾り」を装備する覚悟とは
https://55096962.seesaa.net/article/201112article_17.html
古代エジプトの壁画に描かれた世界というのは、実際の社会を反映している部分と、理想や概念である部分とが入り混じっているのでは、と思うのだ。
こういうやつ。
被っているところのイメージ図としては、こんな感じ。
それなりに硬い材質でないと形が潰れてしまうので、木の枠に布を貼るとか何か工夫をして作ってたのだと思われる。
ただ、これは実物が一つも残っていないので、実際どういう材質で、どう作られていたのかが分かっていない。
従来の説では、「王冠は生きている王の冠だから、墓に入れて死後の世界に持っていくことは無かったはずだ」というものが多かった。
でも死者の国の王であるオシリス神だって、冠は被っているのだ。
あと、ツタンカーメンの墓からは、「普段着」と言うべきネメス冠については見つかっている。
こういうやつ。
だとしたら、二重冠が見つからないのは不自然に思える。壁画への登場回数の多さをそのまま信じるのであれば、何かの儀式のたびに頻繁に見に付けていたはず。しかも構造上、王の頭の形や幅に合わせて毎回、作り直す必要があったはずで、特に幼い頃に即位した王などは、子供時代の冠から順番に、少しずつ大きくなっていく歴代の冠を持っていたはずなのだ。次の王に持ち越すわけにもいかないのだから、処分するとすれば墓に入れるしかない。
実際、ツタンカーメンの墓からは子供服も出てきているのだ。
そこでちょっと考えてみた。
可能性としては、以下の3つだ。
【仮説1】何らかの宗教上の理由や慣習により、王が生前に身に着けたものの中で一部のものは墓に入れずに別の処分方法で処分されていた。
→ただ、これは、子供時代の下着や儀礼用の装身具、使った杖全部を墓に突っ込んでいたツタンカーメン王墓の事例を見ると、ちょっと考えづらい。
【仮説2】二重冠は壁画に描く際の「お約束」であり、実際に身につけられることは無かった。
→実は、これが一番ありそうな気がしている。エジプトといえばこれでしょ、と言われているほど代表的な、幅の広いネックレスですら、実際はほとんどが埋葬のために作られる「身につけることの出来ない飾り」であったことが、最近の研究で分かってきているからだ。
古代エジプト絵でよくある幅広の首飾り、実は言うほど身につけてなかったかもしれない
https://55096962.seesaa.net/article/201805article_22.html
実物として存在しなかったのなら、出土しないのも当然、ということになる。
【仮説3】想定されているものと材質や見た目がかなり異なる
→実は今までに出土はしているけれど、想像していたものと違いすぎて誰も気がついていない、という説、そこまで形がガッチリしたものではなく、一見して布の塊にしか見えないような作りだったりすると、「用途不明な織物」としてしか記録されていないかもしれない。
最近、壁画てよく見る「頭に載せてるアレ」の実物らしきものが見つかったが、その用途や材質も想定とは少し異なっていた。
ついにあの謎の物体の実物が? 古代エジプトの「頭の上に載せてる謎のアレ」
https://55096962.seesaa.net/article/201912article_12.html
以上、3つほど仮説をたててみた。
個人的には、神や王が被っている冠は、大部分が「概念的なもの」「伝統的な図式」であって、実用ではなかったと思うのだ。ていうか複雑でデカい冠、本当に頭に載せたら、首が折れるか、バランス難しくて立ち上がることも出来ないんじゃないかと思うんだよね…。
ちなみに、有名な黄金の髪飾りも、金の純度が高いので、本当に髪につけたとしたら重すぎるということが分かっている。
その者、黄金の頭飾りを身に着けて。 ~不可能と呼ばれた「髪飾り」を装備する覚悟とは
https://55096962.seesaa.net/article/201112article_17.html
古代エジプトの壁画に描かれた世界というのは、実際の社会を反映している部分と、理想や概念である部分とが入り混じっているのでは、と思うのだ。