コーカサス地方の古墳で発見されていた「金属製の長い棒」、ストローの可能性が示唆される
金属製のストローって何だよ? という話だが、まずはこちらを見ていただきたい。
古代エジプトの壁画における「ストロー」の使い方実例。(絵の左側にいるのはシリア人なのでヒゲがある)

https://www.theguardian.com/lifeandstyle/wordofmouth/2010/oct/27/old-ale-beer-history
ビールの壺に突っ込んで飲むための筒で、草を使うこともあったのでは、と言われている。

なぜ器に注がずにこんな飲み方をするかというと、当時は「低温殺菌」や「濾す」という製法がなく、ビールの中では常に酵母が発酵し続けている状態だったからだ。そして、現代のようなキメ細かい濾過は出来ないので、酵母の死体が常に表面に浮いてくる。なのでそれを避けてビール本体を飲むためには、ストロー突っ込むのがいちばん確実だった。
ちなみに、この時代にビールを発酵させるための酵母菌は、上面発酵といって上面で発酵を行い死んだら浮いてくるタイプ。現代の日本で使われている酵母は下面発酵といって死んだら沈むタイプになる。
今回報告されているのは、ビールの故郷であるエジプトやメソポタミアではなく中央アジアで、1897年にコーカサスのマイコップ・クルガン Maikop Kurgan (クルガンは古墳のこと)で発見されていた細長い青銅製の棒のことである。ずっとエルミタージュ博物館に「杖?」として収蔵されていたものの、中空だし細いし杖じゃないんじゃね…? と再調査して、穀物成分などが発見されたことから、おそらくストローだろう、となったとのこと。
元論文
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/party-like-a-sumerian-reinterpreting-the-sceptres-from-the-maikop-kurgan/EFEEFA5BD92653748F5A0F04CD133184
記事
Oldest Known Drinking Straws Identified
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2022/01/oldest-known-drinking-straws-identified.html
※例によってoldestとついているが、実際は「世界最古」とかではなく「コーカサス地方では最古」。このへんしか見ずに記事にしてるサイトとかは引っかかってると思うけどね…。
時代が時代だし、そもそもの当時の記録がこんな状態なところを見ると、なるほど…とちょっと納得する。
旧ソ連の考古学資料とかこういう手書きのものすっごい簡単なやつよくあるんで、ちゃんと保管してただけでもすごいかな…。

遺跡の位置はココ。アナトリアのちょっと北あたりなので、ビール全盛だった東地中海世界からそう遠くもなく納得の位置。
紀元前3,000年頃の遺跡とのことで、東地中海世界でビールが広く飲まれはじめた時代からそう遠くない時期に、ストローとともにここまでビール文化が到達していたと考えられる。

ただ、ビールは当然ながら、麦がないと出来ない。
すなわち定住農耕民の酒である。ここから東の平原に暮らす遊牧の民には縁のないものだったはずだ。そしてこの当時だと冷凍設備もないわけで、作ったビールがすぐ酸っぱくなることからしても、作られた場所からそう遠くまでは運べなかったはずだ。加工前の麦とサワードウだけ運べばなんとかなったかもしれないが…。
元論文には、マイコプ周辺の他の古墳からも類似品が見つかっているとあるが、ビール文化の広まった境界線がどこだったのかはちょっと気になる。
また、ストローが墓に納められていたことから、葬送儀礼として出席者がビールを呑んでいたのではないかということ。
だとすると、メソポタミアだけではなく、エジプト初期王朝で葬送儀礼のためにビールを大量生産していた文化との関連性も、あるかもしれない。
紀元前2,500年頃、ピラミッド作ってた頃にはピラミッド労働者の日々の食料でもあったビールだが、紀元前3,000年頃のビール工房の遺跡からすると、権力者が大量生産したビールを特定のシーンで下々に振る舞う、という儀礼があったらしく、おそらく時代ごとに「ビール」のもつ文化的な意味が少しずつ変化している。
また、現代のビール酵母が、古代の酵母とどこか別の場所の酵母のハイブリッドとして誕生した、という研究との関連性も気になる。
現状の説ではチベット高原の酵母とのハイブリッドではないかとされているが、だとすれば、どこかで酒の製法が交わる場所があったはずなのだ。
ビール酵母は人間の旅路が生み出したかもしれない。人と酵母の一万年の旅路とは
https://55096962.seesaa.net/article/202110article_9.html
たかがストローではあるものの、その裏には人類と酒の文化史が広がっている。再調査して良かったね…博物館の奥に眠ってる昔の遺物はこうやってたまに見直されるべきだと思うんだよ。
古代エジプトの壁画における「ストロー」の使い方実例。(絵の左側にいるのはシリア人なのでヒゲがある)
https://www.theguardian.com/lifeandstyle/wordofmouth/2010/oct/27/old-ale-beer-history
ビールの壺に突っ込んで飲むための筒で、草を使うこともあったのでは、と言われている。
なぜ器に注がずにこんな飲み方をするかというと、当時は「低温殺菌」や「濾す」という製法がなく、ビールの中では常に酵母が発酵し続けている状態だったからだ。そして、現代のようなキメ細かい濾過は出来ないので、酵母の死体が常に表面に浮いてくる。なのでそれを避けてビール本体を飲むためには、ストロー突っ込むのがいちばん確実だった。
ちなみに、この時代にビールを発酵させるための酵母菌は、上面発酵といって上面で発酵を行い死んだら浮いてくるタイプ。現代の日本で使われている酵母は下面発酵といって死んだら沈むタイプになる。
今回報告されているのは、ビールの故郷であるエジプトやメソポタミアではなく中央アジアで、1897年にコーカサスのマイコップ・クルガン Maikop Kurgan (クルガンは古墳のこと)で発見されていた細長い青銅製の棒のことである。ずっとエルミタージュ博物館に「杖?」として収蔵されていたものの、中空だし細いし杖じゃないんじゃね…? と再調査して、穀物成分などが発見されたことから、おそらくストローだろう、となったとのこと。
元論文
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/party-like-a-sumerian-reinterpreting-the-sceptres-from-the-maikop-kurgan/EFEEFA5BD92653748F5A0F04CD133184
記事
Oldest Known Drinking Straws Identified
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2022/01/oldest-known-drinking-straws-identified.html
※例によってoldestとついているが、実際は「世界最古」とかではなく「コーカサス地方では最古」。このへんしか見ずに記事にしてるサイトとかは引っかかってると思うけどね…。
時代が時代だし、そもそもの当時の記録がこんな状態なところを見ると、なるほど…とちょっと納得する。
旧ソ連の考古学資料とかこういう手書きのものすっごい簡単なやつよくあるんで、ちゃんと保管してただけでもすごいかな…。
遺跡の位置はココ。アナトリアのちょっと北あたりなので、ビール全盛だった東地中海世界からそう遠くもなく納得の位置。
紀元前3,000年頃の遺跡とのことで、東地中海世界でビールが広く飲まれはじめた時代からそう遠くない時期に、ストローとともにここまでビール文化が到達していたと考えられる。
ただ、ビールは当然ながら、麦がないと出来ない。
すなわち定住農耕民の酒である。ここから東の平原に暮らす遊牧の民には縁のないものだったはずだ。そしてこの当時だと冷凍設備もないわけで、作ったビールがすぐ酸っぱくなることからしても、作られた場所からそう遠くまでは運べなかったはずだ。加工前の麦とサワードウだけ運べばなんとかなったかもしれないが…。
元論文には、マイコプ周辺の他の古墳からも類似品が見つかっているとあるが、ビール文化の広まった境界線がどこだったのかはちょっと気になる。
また、ストローが墓に納められていたことから、葬送儀礼として出席者がビールを呑んでいたのではないかということ。
だとすると、メソポタミアだけではなく、エジプト初期王朝で葬送儀礼のためにビールを大量生産していた文化との関連性も、あるかもしれない。
紀元前2,500年頃、ピラミッド作ってた頃にはピラミッド労働者の日々の食料でもあったビールだが、紀元前3,000年頃のビール工房の遺跡からすると、権力者が大量生産したビールを特定のシーンで下々に振る舞う、という儀礼があったらしく、おそらく時代ごとに「ビール」のもつ文化的な意味が少しずつ変化している。
また、現代のビール酵母が、古代の酵母とどこか別の場所の酵母のハイブリッドとして誕生した、という研究との関連性も気になる。
現状の説ではチベット高原の酵母とのハイブリッドではないかとされているが、だとすれば、どこかで酒の製法が交わる場所があったはずなのだ。
ビール酵母は人間の旅路が生み出したかもしれない。人と酵母の一万年の旅路とは
https://55096962.seesaa.net/article/202110article_9.html
たかがストローではあるものの、その裏には人類と酒の文化史が広がっている。再調査して良かったね…博物館の奥に眠ってる昔の遺物はこうやってたまに見直されるべきだと思うんだよ。