チリ(1) 遥かなる旅路 日本からチリへ至る道


「イースター島へ行ってくる。」といえば、たいていの人は、「ああモアイ像のあるとこね。と分かってくれると思うのだが、じゃあイースター島ってどこにあんの? というとパッと思いつく人は、きっとそういないと思う。

ここにあるんだよ!
(図参照)

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イースター島があるのは太平洋のド真ん中。
チリ共和国の属し、最寄りの土地であるチリ本土まで約3700キロ。飛行機で5時間半。とにかく遠い。

日本からここへ行くには、まずアメリカのいずれかの都市で乗り継ぎをして、つぎにチリの首都サンティアゴまで飛ばなくてはならない。ここまでで飛行時間は20時間オーバー。軽く痔になりかけるくらいエコノミー席に座ってなきゃならない地球の反対側である。



単なる乗り継ぎでもアメリカ入国審査を通らなくてはならず、テロ対策だなんだでアメリカの入管が厳しくなっているのでやたらと時間をとられる。
日本→アメリカの飛行機と、アメリカ→南米の飛行機のターミナルが違ってて移動に時間がかかるんだっちゅーに入管がチンタラしていたおかげで、行きは乗り継ぎ猶予120分のうち、離陸15分前にダッシュで駆け込むという無茶な状態に。空港ダッシュは人生何度目だ。

敢えて言おう。

米国の入管は中国人グループのいない列に並べ。

あいつら絶対入管とモメて時間取られるから…。
どこ行くんだ? →トランジットだよ。チリ行きの航空券がここにあるよ。次のフライトまであと40分しかねーんだとっとと通せ! →5分で終了
こんなんでいいだろ、こんなんで。おいらとか3分で終わるのになんなんだよあのモメっぷり。



と、そんなこんなで色々ありつつ、とりあえず無事にチリに到着。日本は気温30度オーバーの真夏でも、南米は今が冬。空港に半袖で降り立つととても目立つ。ていうか超寒い。速攻で長袖に着替えて町に出る。

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閑散と着いたのが日曜の朝だったので、町はこんな感じで閑散としている。

どうもチリの人は、休日は郊外に行ってるor昼まで寝てるものらしい。治安が良い悪い以前に人がいねぇ(笑


ホテルはやってたので、荷物を預けて、午後のチェックインタイムまで町に遊びに出かけることにする。ちなみに町は観光地の集まる旧市街と、繁華街やオフィスの集まる新市街に大きく分かれる。治安がいいのは新市街側なので、宿は新市街でとるとおぬぬめ。

とりあえず、新市街から旧市街へ地下鉄に乗ってGO。サンティアゴの地下鉄はおフランス製で最近できたものだそうで、新しくてとても快適。論同のめちゃくちゃ狭い地下鉄なんかと比べても、広いし綺麗だ。スリが多いとか治安悪いとか言われていたけど、そんな気配は全然なし。よほどスキのある旅行者がスられたのだろうか…?
地下鉄の切符はどこまで乗っても一定額。ただし朝夕のラッシュタイムだけはちょっと値段が上がる。

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若干ギリシャ風旧市街のはし、モネダ宮殿前に到着。ここからサンタルシアの丘方面に適当に歩いてみる。(ちなみに写真のコレは、モネダ宮殿じゃなくてそのへんにあった建物。)

モネダ宮殿、サンタ・ルシアの丘など、夜にライトアップされてるのを見ればそこそこ「おおー」って感じなんだが、昼間はそうでもないというか… うんまぁヨーロッパの中心都市に比べるとね。

チリは日本同様の地震国なので、旧市街といっても古い建物はあまりない。というかサンティアゴ自体、それほど見所があるわけではない。南米といえど、ここにも欧米式グローバルスタンダードが浸透していて、街中には、ものめずらしいものはあまり無い。まぁスペイン統治時代が長い国でもあることだし。。

この町は、純粋に「建物」とか「歴史」とかを「見て」楽しむのではなく、後述するようにアンデス山脈の見下ろす高地の一部としての市街地、という立地条件を楽しむ場所だと思う。

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町歩きを続けてみよう。

なににもいない・・・休日の旧市街は、こんな感じだ。
人がいないかわりにやたらと犬がいる。猫はすくない。

ナポリのように大量のゴミが捨ててあるとかはないものの、道路事情はあまりよろしくなく、ガタガタ。そして町中が落書きだらけ。アートな落書きで有名なのは沿岸のバルパライソの町のはずだが、ここでもアートな落書きが町中に施されている…

旧市街の中心部にあるアルマス広場では、この国でもプロ市民(笑)の皆さんが朝っぱらから頑張っており、歌って踊って何かを訴えていた。どうも水力発電建設反対運動のようだ。

チリは自国で石炭がとれるので大半が火力発電なのだが、枯渇の危険もあり近年では水力への移行も検討している。ただ河川が少ないこと、漁業も主力産業で特にサケの養殖に力を入れていることから、根強い反対運動もあるらしい。どこの国も電力事情は複雑なのだ。

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広場のカテドラルでイスパニア語のミサを見て、そのあと中央卸売市場へ。
主に新鮮な魚介を取扱う市場なのだが、日本の築地のような感じで半ば観光地と化している。

もさっと!
雨風をしのげるよう、建物内に市場が集まっているのだが。
…なんていうか、ものすごいカオスな感じで見た目はあまり美しくないというか、不衛生感満載というか……。

あの雑多な山盛りの魚を見て、果たして魚が食いたいと思えるかというと疑問。ものすごい生臭い臭気のただよう中に食堂なんかがあるわけで、ちょっとあまりお勧めはできない。日本人と見るや、めっちゃ声かけてくるんだけどね。

市場の入口付近にある「エル・ガレオン」というレストランがガイドブックに載っていたが、値段がかなりボッタな感じだったので結局寄らなかった。ただ、一皿のボリュームがかなりあるようだったので、人数が多いなら多少ボッタ価格でもアリなのかも。


「タラバ食う? タラバ?」って日本語で誘われて、値段見たら一杯1万ペソ(なんと数千円!)くらいでお安かったんだが……タラバ一杯を一人で完食できる自信はありません、ハイ。
ていうか、向こうの人、何にでもレモンかけすぎだろ何だよあのレモンの山。

チリの郷土料理の味は、わりとタンパク。塩味に香辛料を効かせた感じでシンプルだ。
目立つものといえば山盛りレモンと、あとアボカドペースト。あつあつのフォカッチャ状のパンにアボカドのペーストをつけて食べる付け合せが何にでもついてきて、これがまたうまい。ていうかメインディッシュの魚がわりとタンパクな味なので、この付け合せがむしろメイン。
ちなみにアボカドペーストはホットドッグにもモリモリに入っており、屋台で食うホットドックはアボカドの緑+ケチャップの赤+マスタードの黄色というカラフルな三色状態。旧市街の中心・アルマス広場の端にビッシリ並んでいるホットドッグ屋は一度試してみるといいかと。ホットドッグ+コーラ1000ペソ(約2ドル)という安価。

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おやさいもりもり通りを一本渡ると、野菜や香辛料を売るお店が並ぶ市場に。
個人的にはこっちのほうが興味深かった。

・南米でしかもインカ文化圏なのにイモが少ない(1-2種類しかない)
・アボカドがやたらと積まれている
・かぼちゃでけぇ
・トウガラシもでけぇ
・ていうかトウガラシの色がやばい
・パクチー食うの?!

インカ文化圏だから市場はイモだらけなんだろーと思ったら全然そんなことなかった。トウモロコシすらなく。アボカドとカボチャ。ひたすらアボカドとカボチャ。何なの、どういうことなの…

ただし、分量がおかしい以外、野菜は、そんな珍しいものは無く、わりと見たことのあるものばっかだった。ある意味安心。


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もふもふぱさぱさこちらは町中で記念撮影に応じていた、いい笑顔のリャマたん。ちっちゃい子なら背中に乗せてもらえるらしい。
遭遇スポットは、中央市場付近とサン・クリストバルの丘のケーブルカー乗り場付近。

このあたりは市場なので地元民もいるし、観光客も来てるし、休日でも賑やか。ここを過ぎてサン・クリストバルの丘の方へ歩き出すとまた人がいなくなり、ちょっとスラムっぽい雰囲気にもなってくる。

でも裏路地でも信号がちゃんとあって、それなりに守られているというのが。
エジプトさんとかオーストリアさんとか、ほんと酷かったからな。;;

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面白いことに、町内で自転車というものを全然みない。不法駐輪すらない。みんな車かバイクなんだ。で、ガソリンは日本円で150円-200円くらい、まぁ日本とだいたい同じくらいなんだけど、南米の所得から考えるとかなりの高額なはず。それでも車に乗るんだなぁ…と。

もちろん地下鉄やバスも利用者はかなりいるんだけど、それでも町中は完全に車社会というイメージ。そして道路事情があまりよろしくない…。うーむ。

ちなみに走ってる車はトヨタよりスバル、ダイハツ、スズキあたりが多い。

町を歩いていると、どこに行ってもアンデス山脈が目に付く。
この圧倒的な存在感。

ちなみに手前のビルは現在建設中、サンティアゴで一番高いビルになる予定の300mくらいのものだそうな。

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国土の東側はずっとアンデスなんで、雪をいただいた山が東側の視界を端から端まで埋め尽くしている。高さは一番高いとこで6000mオーバー、そりゃ徒歩で気楽に越えられるわけがない。山の向こう側は別の国。

チリ行ってみたいなーと思ったのは、この「町の片側がバカ高い山で壁みたいに区切られている」っていう世界を体験してみたかったからでもあるんだけど。
予想以上の威圧感というか存在感というか。振り返るといつもそこにヤツ(高峰)がそびえている、って、なかなか凄い世界なんだよね。毎日窓から富士山見えてる、くらいのノリで。町の人は、山の白い部分(雪)を見て、あぁ今日は寒いから山のほうは雪なんだなー、とか、さいきんあったかくなってきたから雪だいぶ溶けたなーもう春だなー、とか季節を知るらしい。そのへんはきっと、古代から変わらない感覚なんだと思う。

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