3万年前の石彫りフィギュア「ヴィレンドルフのヴィーナス」の材質が分析される

「ヴィレンドルフのヴィーナス」は、オーストリアで見つかった約3万年前の女性型の小さな像。約11センチと小さなものだが、その造形の完成度から有名だ。年代的にかなり古く、当時から人類は器用に手先を使って芸術品を作り出していたことがわかる。
その像だが、どうやら材料が現地のものではない、ということが分かってきたようだ。

Mystery Solved About The Origin Of The 30,000-Year-Old Venus Of Willendorf
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2022/02/mystery-solved-about-origin-of-30000.html

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今回はじめて材質を調査した、とのことだが、これはオーライト(別名egg stone)という柔らかい石らしい。
形成されたのはジュラ紀で、中には微小な二枚貝の化石が入っているという。成分の一致する岩石はイタリア北部、または、距離がかなり遠くなるがウクライナ近辺の地層になるとのことで、ヴィーナス像はどうやら、はるかな距離を旅して発見された場所までたどり着いたらしいのだ。

つまりは、3万年前の古代人は、像をふところに携えてアルプス山脈を越えたか、もしくはこの像自体が貴重なものとみなされて、人から人の手を渡ってはるかな距離を運ばれたことになるからだ。

これは中々に面白い発見だと思った。気候も地形も全く違う時代に、長距離の旅をする人がいたのか。もしくは交易路のような人の繋がりがあったのか。どちらもあり得るが、もし前者だとすれば、持ち主はよっぽどこの像を大事にしていたのだろうし、後者だとすれば、像に地域をこえた普遍的な価値があったことになるからだ。

ちいさな像から見えてくる古代世界の物語。答えがないだけに想像力をかきたてられる。

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