「世界最古」はともかく研究としては面白い。中国で飼育されたかもしれない7,000年前のガチョウの骨

お察しの通り「エジプトで飼育されたより古い」っていう部分に引っかかってガタッて立ち上がった中の人ですよ。
論文検索でエジプトワード引っ掛かるととりあえず見るから…。

世界最古の家禽はガチョウ!?
~約 7000 年前の中国の遺跡からガン類の家禽化の証拠を複数確認~
https://www.um.u-tokyo.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/2022/03/20220308.pdf

↑このPDFのプレスリリースが分かりやすい。

元論文としてはこれ

Multiple lines of evidence of early goose domestication in a 7,000-y-old rice cultivation village in the lower Yangtze River, China
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2117064119

長江の河口に近い地域の遺跡から発見したガン類の骨から、渡りをするには若すぎる若鶏の骨が混じっていたり、骨から食べていたものを分析したところ野鳥と違ってコメを食べてた可能性があることなどから、飼育の試みが成されていたのでは? という話になっている。
古代エジプトでの猫の飼育の話や、イヌがどこで家畜化されたのか、ウマの起源地は? など、色んな家畜の「はじまり」を今まで追いかけてきた中で見ても、分析手法は妥当。

論文のほうを読んでみて面白かったのが、分析対象となる骨の中に「Medullary Bone」、骨髄骨が無くて、これは繁殖期の雌はあえて殺さないようにしてたからでは、と推測されていたところ。
調べてみると骨髄骨というのは、繁殖期にある鳥類の雌にだけ存在する特別な骨で、その骨のカルシウムを元にして卵のカラを形成するのだとか。知らなかった…。鳥って卵生む時に骨(というかカルシウムの塊)が1-2ヶ月だけ体内に増えるんだ…。

難点としては、分析されている数が少なすぎるところ。たまたま数羽だけ、短期間だけペットとして飼ってた、みたいなのもあり得るので、本当に飼育しようとしていたのかどうかは、もう少し広い範囲で、近隣の遺跡も含めて同じ傾向が見られるかを調べる必要があるかと。もし近隣の遺跡でも同じような骨が出てくるとか、この遺跡でも年代を跨いで出土するのなら、確かに飼育化の初期段階にあったと言えるのでは。

遺伝子分析などはこれからやるらしいので、続報に期待かな。


あとエジプトのガチョウ飼育は、古王国時代までは遡るはずなので、4500年から5000年前までは言えるかと…。
まあそこの最古か最古じゃないかはどうでもいいんだけど。うん。



おまけ

家畜化された馬の起源論争、ついに決着か。現代に繋がる主流の馬の起源地が特定される
https://55096962.seesaa.net/article/202110article_18.html

エジプト人は知られているより早い段階でネコを飼育していた? 6000年前の猫の骨が発見される
https://55096962.seesaa.net/article/201403article_26.html

小さな鳩の大冒険 飼育された鳩の歴史を調べてみた
https://55096962.seesaa.net/article/201803article_26.html

犬の起源はニ系統?(※現時点での暫定結果) やっぱりまた来た次の結果。
https://55096962.seesaa.net/article/201606article_7.html

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