アルプス周辺の「杭上集落」の起源は? 最古の時代の記録が分析される

まずアルプス周辺に杭上集落という独特の形式の村が、7千年以上も前に存在していたというのを初めて知ったのだが、今回は、その独特の形式が何処から来たのか、という話である。

概要はこのへんとかで見ると分かる。日本でも古代には高床式の建物は存在したが、このヨーロッパの事例は、農耕民が敢えて湖上に住んでるというところが非常に面白い。漁労はあまりやらず、あくまで農耕メイン。人間相手の防衛の痕跡もなさそうなので、狼など野生動物から身を守るためか、湖畔の狭い土地を居住スペースと折半するよりは、居住スペースを水上に移して陸地は、極力、畑にするために、このような生活様式を選んだのだと思われる。

北イタリアからスイス、ドイツ南部、リヒテンシュタインなど11カ国にまたがる広い範囲の氷河湖に同様の形式の集落が存在するという。

アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%97%E3%82%B9%E5%B1%B1%E8%84%88%E5%91%A8%E8%BE%BA%E3%81%AE%E5%85%88%E5%8F%B2%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%9D%AD%E4%B8%8A%E4%BD%8F%E5%B1%85%E7%BE%A4

アルプス山脈周辺の先史時代の杭上家屋群
https://visitaly.jp/unesco/siti-palafitticoli-preistorici-dellarco-alpino/

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最盛期は紀元前4,300年だが、最も古い集落だと4,700年くらい前だとか。
で、その古い集落から出てきた穀物が、どうやら北イタリアの遺跡で出てくるものと同じらしいのだ。なので、北イタリアから農耕民が北へ移動してきたか、この建築様式が北イタリア方面から伝わった可能性も出てきた。

時代は何千年も違うが、北イタリアの干潟には、のちにヴェネツィアという人工の杭の上に作られた都市国家が建設される。「湖上に集落作ればいいじゃん」という発想自体は、もしかしたら、北イタリアでは伝統ある発想の一つだったのかもしれない。

要約記事

7,000-Year-Old Grains Hints At Origin Of Swiss Pile Dwellings
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2022/03/7000-year-old-grains-hints-at-origin-of.html

元論文

Neolithic occupations (c. 5200-3400 cal BC) at Isolino Virginia (Lake Varese, Italy) and the onset of the pile-dwelling phenomenon around the Alps
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352409X22000384?via%3Dihub

分析されている集落はココ

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こんな感じで、水中の泥の中から穀物が回収出来る遺跡らしい。
日本だと全部腐ってなくなってそうだな…

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この集落は、二つ三つが見つかっているわけではない。なんと全部で111箇所も登録されている。一大ブームというか、日本で言う「高床式」とか「寝殿造」のように、一つの時代を象徴する、確固たる居住様式だったのだ。
にも関わらず、その起源が未だに分かっていない。
今回、農耕民繋がりでよそから伝来した可能性も示唆されたが、果たして、影響を与えただけなのか、人も移動してきたのか。他にも影響を与えた地域や文化はないのか。

この研究の行方は、とても面白そうなのだ。


(つか、スイスってあんま行きたいとこないなーと思ってたけど、湖の遺跡は見に行ってみたいなー。いつか…コロナが明けたら…。)

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