日本の伝統工芸の一つ、漆器について調べてみた覚書き

この間、19世紀にフランスに渡り活躍した日本の漆職人の話を読んだ。
その後、日本の漆産業は衰退しつつあるらしい、という話を見かけて、なるほど、漆器なんて料亭の会食でもなきゃ見かけないよな。と思った。いや、正確に言うとうちにも、ばあちゃんから貰った漆塗りのお菓子入れ(深めの盆)があるんだけど、正月とかでもないと使う気がしない…。なんか桐の箱に入っててやたら高級だし。

しかし確かに漆といえば伝統工芸、しかも縄文時代から受け継がれている息の長い文化なのだ。
せっかくだしちょっと調べてみるかな。と思い、軽く調べてみた。


■漆器の作り方
いいカンジの動画があった。これ見てると、「なるほど…これは高級品なわけだ…」と納得する。
ちなみに珪藻土を使い、器のふちに布を貼るのは、輪島塗りに特徴的なやり方らしい。

サイエンスチャンネル 漆の器ができるまで
https://www.youtube.com/watch?v=6r1YJy0yzXQ


■漆の原料はウルシの木の樹液だが、種類が違う

ざっくりと頭の中に、日本に今ある漆の木は中国原産と考えられていること、東南アジアにも類似した漆の木と漆塗りがあることは知っていた。
だが改めて調べてみると、どうも気候条件によって日本で漆の樹液はたくさんとれて質もいいらしい。東南アジアのものはあまりよくない、という。
さらに調べてみると、漆の木の種類だけでなく、成分も違うらしい。

 日本/中国のウルシ →ウルシオールUrushiol
 アンナンウルシ →チチオールthitsiol
 ビルマウルシ→ ラッコールlaccol

漆の樹液と言えば「かぶれる」がよく言われることだが、かぶれの原因成分が実は種類によって違っていたのだ。


■他の樹液と併用することがある

ウルシの樹液は1本あたり1回の季節でとれる量が限られるうえに、それほど大量に採れるものでもない。しかも塗料にするためには精製が必要。貴重で高価だった。
そのため、廉価な漆器を作るため、下地に柿渋など別の木の樹液を塗ることがあったという。江戸時代の庶民の食器などに使われた手法がそれ。
柿渋に含まれるのは保存に使えるタンニンなので、下塗りにタンニンを分厚く盛り上げて木材の補強と防水をし、上塗りに薄く漆を使う、というやり方だったようだ。


■海外に輸出された漆器の「ジャパン」は本来、まがい物を意味する言葉だった


16世紀以降、日本の美術品はアメリカやヨーロッパに多数輸出される。中でも日本の漆器は人気のある高級品だったという。
その際に日本を含むアジアから輸入された漆器が「ジャパン」と呼ばれていたことから、現在では「ヨーロッパでジャパンと呼ばれ憧れられた漆器」といったポジティブな捉え方をよく見かける。

しかし調べてみると、どうもこの言い方、元々はコチニールで朱色にするなどして作られた偽物のことを指していたらしい。贋作とか偽物というと悪いイメージになるが、産業敵に大量生産されていたなら「廉価版」とか「コピー品」になるだろうか。
特に17世紀イギリスでは工場で日本の漆器のコピー品を大量生産していたそうで、その製品のことを「ジャパン」と言ったそうなのだ。

つまり歴史的には、本物の日本の漆器を意味する言葉というよりは、大量生産された「日本風のコピー品」としての「ジャパン」と、本物の高級品である漆器の「ジャパン」という呼び方がある。現代ではコピー品が本物に混ぜられることはないため、高級品というポジティブな意味合いだけが残ったのだと思う。


というわけで、軽く調べてみただけでも、知らなかったことが色々と出てきた。これ大昔からやってたのって凄いなあ。プラスチックなんか無かった時代だと、耐水性の高い一生モノの道具として、高級でも需要はあったのだろう。

ただ、現代の暮らしで使うかっていうと・・・・・・・・・・・・うん。

見て綺麗だとは思うけど、手入れとか、使う場面考えるとちょっと日常使いは難しいねやっぱり・・・・・。

この記事へのトラックバック