あなたの知らないイネの世界。「イネの歴史」を読んでみた
元々は、「イネって作物以前に植物としてはどーなんだっけ」と植物学の資料を探していたのだった。
そんで農学者の人が書いてる本を見つけた。イネの研究は日本がかなり進んでいて、資料は豊富なので助かる。
イネの歴史 (学術選書) - 佐藤 洋一郎
この本は、「イネの原種オリザはもともと薄暗い森を好む植物だった。」という、一般的にあまり知られていない話からスタートする。
水田のイメージがあるにも関わらず、イネはもともと水が嫌いな植物だという。(というかそもそも水田でイネを育てる地域がかなり限られているらしい)
そして元々多年草で、秋になっても実は株は生きている、という話も出てくる。
イネの種類は世界中に様々だが、遺伝的に系統をたどることが難しいものも多い、という。
作物的にはジャポニカとインディカの二種で分けられることが多いが、どうも両者は交雑している部分があり、見た目や味では厳密に分けることが出来ない、という。また、この二種は掛け合わせることが出来ない程度に遺伝的に離れているのだとも。
植物としてのイネの進化や、栽培化の過程についてはまだ分からないことも多いらしいのだが、ひとまず今のところ起源地は長江流域で落ち着いている。問題はそこからどうやって広まっていったのか、だ。
著者の考えでは、栽培化は長い時間をかけてゆっくり進み、その間に東西に広まっていき、途中で現地の野生イネと偶然の交配を起こして種類が増えていった、となっているようだ。自然交配で雑種が生まれるのが可能だとすれば、それこそ野生ウマのごとく、実はいま地球上にあるほとんどの「野生イネ」は純粋な野生種ではなくどこかで栽培種の遺伝子が混じっているのではないか、とは思うが、そこはまだ研究されていないらしい。
植物学としての話のほか、遺跡から出てくる稲作の証拠についての話もあり、たとえば縄文時代の原始的な稲作の話なんかも出てくる。
(かつては稲作を弥生時代の始まりとしていたものの、今ではもはやその区分は使えなくなってきている。)
また、現代のアジアでのコメの食べ方の日本との違いなど文化面での言及もあった。
とにかく色んな知識を詰め込んだイネの本である。研究途中で結論の出ていない話も多いが、イネについて幅広く知識を集めたい人にはおすすめの一冊だ。
ただ、アフリカで栽培されているイネについての記述はほぼ無く、ちょっと薄いなーと思った。
アジアの野生米は探しにいっててもアフリカまでは行ってない、っていう研究者はよくいる。というかほぼ全員の研究者が、アフリカのコメはアジアのコメがいつかの段階で持ち込まれたものだろう、くらいに思ってる感触がある。
でもニジェール川流域の水稲栽培の歴史は意外に古くて、たかが数千年前にぽそっと持ち込まれた程度では説明がつかないと思うのだ。遺跡と絡んで出土するコメの研究はほとんどされておらず、論文を探しても全容の判るものが出てこないのだが…そして自分もニジェール川流域は対して詳しくないので確信を持って言うことは出来ないのだが…、アフリカにも、ミレットやソルガム、ヤムイモなど独自に栽培化された植物がたくさんある。なので、イネだけ別の地域から持ち込まれたものと考える理由がない。原種がそこにあったなら栽培化の手順は踏まれるはずだ。そして、そうでなければ現地の気候に適した都合のよう作物として定着することは出来ないと思う。
アメリカやオーストラリアに渡ったジャポニカ米など、海外展開されたイネについても書いてある本だったので、あとちょっと、あとちょっと西へ進出して、アフリカン・ライスも視野に入れてもらいたい…主に私の興味のために…。
そんで農学者の人が書いてる本を見つけた。イネの研究は日本がかなり進んでいて、資料は豊富なので助かる。
イネの歴史 (学術選書) - 佐藤 洋一郎
この本は、「イネの原種オリザはもともと薄暗い森を好む植物だった。」という、一般的にあまり知られていない話からスタートする。
水田のイメージがあるにも関わらず、イネはもともと水が嫌いな植物だという。(というかそもそも水田でイネを育てる地域がかなり限られているらしい)
そして元々多年草で、秋になっても実は株は生きている、という話も出てくる。
イネの種類は世界中に様々だが、遺伝的に系統をたどることが難しいものも多い、という。
作物的にはジャポニカとインディカの二種で分けられることが多いが、どうも両者は交雑している部分があり、見た目や味では厳密に分けることが出来ない、という。また、この二種は掛け合わせることが出来ない程度に遺伝的に離れているのだとも。
植物としてのイネの進化や、栽培化の過程についてはまだ分からないことも多いらしいのだが、ひとまず今のところ起源地は長江流域で落ち着いている。問題はそこからどうやって広まっていったのか、だ。
著者の考えでは、栽培化は長い時間をかけてゆっくり進み、その間に東西に広まっていき、途中で現地の野生イネと偶然の交配を起こして種類が増えていった、となっているようだ。自然交配で雑種が生まれるのが可能だとすれば、それこそ野生ウマのごとく、実はいま地球上にあるほとんどの「野生イネ」は純粋な野生種ではなくどこかで栽培種の遺伝子が混じっているのではないか、とは思うが、そこはまだ研究されていないらしい。
植物学としての話のほか、遺跡から出てくる稲作の証拠についての話もあり、たとえば縄文時代の原始的な稲作の話なんかも出てくる。
(かつては稲作を弥生時代の始まりとしていたものの、今ではもはやその区分は使えなくなってきている。)
また、現代のアジアでのコメの食べ方の日本との違いなど文化面での言及もあった。
とにかく色んな知識を詰め込んだイネの本である。研究途中で結論の出ていない話も多いが、イネについて幅広く知識を集めたい人にはおすすめの一冊だ。
ただ、アフリカで栽培されているイネについての記述はほぼ無く、ちょっと薄いなーと思った。
アジアの野生米は探しにいっててもアフリカまでは行ってない、っていう研究者はよくいる。というかほぼ全員の研究者が、アフリカのコメはアジアのコメがいつかの段階で持ち込まれたものだろう、くらいに思ってる感触がある。
でもニジェール川流域の水稲栽培の歴史は意外に古くて、たかが数千年前にぽそっと持ち込まれた程度では説明がつかないと思うのだ。遺跡と絡んで出土するコメの研究はほとんどされておらず、論文を探しても全容の判るものが出てこないのだが…そして自分もニジェール川流域は対して詳しくないので確信を持って言うことは出来ないのだが…、アフリカにも、ミレットやソルガム、ヤムイモなど独自に栽培化された植物がたくさんある。なので、イネだけ別の地域から持ち込まれたものと考える理由がない。原種がそこにあったなら栽培化の手順は踏まれるはずだ。そして、そうでなければ現地の気候に適した都合のよう作物として定着することは出来ないと思う。
アメリカやオーストラリアに渡ったジャポニカ米など、海外展開されたイネについても書いてある本だったので、あとちょっと、あとちょっと西へ進出して、アフリカン・ライスも視野に入れてもらいたい…主に私の興味のために…。