人類学の論争:ホビットの祖先は「どこ」から来たのか? 「いつ」までそこにいたのか?

「ホビット」とは、インドネシアで見つかっている小型の人類、ホモ・フロレシエンシスの愛称である。架空の種族にちなんで名付けられた。
近年になって見つかった新種のホモ属で、現生人類との交雑はないとされている。かなり小柄で、ヒトには違い無さそうだが現生人類の系譜と何処でつながるのかが分からない。

その「ホビット」について、二つの疑問がずっと論争になっている。

Human 'hobbit' ancestor may be hiding in Indonesia, new controversial book claims
https://www.livescience.com/homo-floresiensis-hobbit-survives

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■彼らの祖先は、いつアフリカを出たのか。そもそも本当にアフリカにいたのか

これについては、以前書いた記事に詳しく書いた。
そもそもアフリカからスタートしたホモ属ではなく、ホモ・エレクトゥスから進化するのてもなく、全然別系統で、しかもずっと昔からそこにいた可能性はないのか。ということだ。

人類の起源と古人類学の常識の転換期:現在何が問題になってるかということ
https://55096962.seesaa.net/article/202204article_7.html

アフリカを出てインドネシアの島にたどり着くまでには、最後に海を渡らなければならない。そうすると、彼らの祖先は現生人類のはるか以前に渡海技術を身に着けていたことになるが、その航海技術を生かして周囲の他の島に渡ることだけは出来なかった、という謎めいた状況が生まれてしまうのだ。


■彼らは、いつまでその島で生きていたのか

今のところの有力説では、ホモ・フロレシエンシスが絶滅したのは7-8万年前とされており、現生人類が到達する少し前となっている。
しかし、もしかしたら少数でも、生き残りがその後も存在した可能性があるのでは、という説がある。そもそも絶滅の時期は化石や遺跡で確認するしかないので、はっきりとは分からないものなのだ。
考古学ではなく民俗学のジャンルで、神話伝承の中に痕跡を探し求める研究者もいるようだが、それはちょっと危険かなと思っている。何しろ口伝というものは後からどんどん変わっていくものだし、生きた存在を見なくても、化石から想像をふくらませることだって出来てしまうからだ。

いずれにせよ、もし時代が一部でも重なっていたのなら、現生人類の進出が彼らを絶滅させた可能性は、否定できなくなる。



最近、大きくなりつつあるのが、最初の疑問のほうである。
「彼らは本当にホモ・エレクトゥスの、つまり我々と同じ祖先から分岐した『そこそこ近い親戚』なのかどうか」だ。

ホビットという名の通り、彼らはかなり小柄なヒトである。しかしホモ・エレクトゥスが急激に小型化したとは考えにくい。鳥などは、島嶼に定住すると飛ぶことを忘れたり、小型化したりして亜種に進化していくものだが、それには時間がかかるのだ。ほんの数万年やそこらでそんな変化が起きるものなのか。そもそも最初から小柄なサルから進化してるのではないか。

これが、以前書いた「ホモ・xxx」と名付けられている各種ヒト属の起源は全部同じなのか、そもそも全種アフリカからのスタートなのか、という最近の論点に繋がっている。
ある意味で、人類の「多地域進化説」の復活である。現生人類がアフリカからスタートなのは間違いないのだが、親戚と思われていた他の絶滅してしまったヒトたちは、実はアフリカ以外の地域で進化している可能性があるのだ。


ほんの10年前には主要説として取り上げられることもなかった話が俎上に乗るようになる。常識はどんどん書き換えられていく。
何度も書いているけど、このジャンル、あまりに急激に変わりすぎて専門家でもヘタに本とか書けない気がするんですよね。書いてるうちに新しい発見が出てきたり、説が変動したりするから…。