テラ火山の大噴火はいつ起きたのか。古代エジプトの歴史との関係とは

サントリーニ島・テラ火山の噴火年代が絞り込まれ、候補が紀元前1611年、1562-1555年、1538年の3つに減った、という話。
この噴火の年代がなぜ重要かというと、破局的な大噴火なので、この噴火が起きたあたりで東地中海世界の文明がかなり大きな打撃を受けているはずだから、なのだ。

Researchers Home In On Thera Volcano Eruption Date
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2022/05/researchers-home-in-on-thera-volcano.html

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※右がテラ火山。左はアラスカのAniakchak II

かつては紀元前1200年頃に起きたのではと言われており、「海の民」をはじめとする難民の群れを生み出し、ヒッタイト滅亡の原因を作ったという説まであった。また、クレタ文明の衰退に関与しているという説が唱えられたこともある。
しかしその後の研究で、年代が紀元前1600年頃まで遡り、むしろエジプトの絶対王権の抱懐ピラミッド時代の終焉の引き金を引いている可能性のほうが言及されるようになった。

今回は、候補年代の一つだった紀元前1628年がAniakchak IIというアラスカの火山の噴火によるものだったと特定されたことで消え、残り3つになったという話。ちなみに、この3つはいずれも地球上のどこかで大規模な噴火があったことが確実視されている年代で、氷床コア(年代順に降り積もった永久凍土の層から切り出した円柱状のもの。いわば地球の気候カレンダー)から測定されている。

ただし、人間が住んでいない地域の大規模噴火だと何の記録にも残らないし、氷河の下に埋もれている火山や海底に沈んでしまった火山などは存在すら見つからないので、テラ火山でないとすれば他のどの火山が関係しているのかの特定が困難なのだ。
残された候補の年代がどう絞り込めるかは、まだ見つかっていないかもしれない未知の大噴火の痕跡が見つかるかどうかにかかっている。


で、残る候補なのだが、自分は前の2つのどっちかじゃないかと思っている。
理由は、エジプトの「第二中間期」という王権が不安定な時代の開始次期と終了次期からだ。

サントリーニ島とエジプトの距離はこのくらい。噴火のあった頃には、一時的な気候の寒冷化や降灰の影響は避けられなかったはずだ。
太陽信仰の国、しかも現世で起きる大きな出来事には王が責任を持つというような神権政治をやってた時代においては、王権の揺らぎに繋がった可能性はそれなりにあるのではないかと思っている。
紀元前1600年頃から、古代エジプトでは王権が弱体化し、次々と王が立つ時代が続く。誰を王にしても気候が改善しなかった、という状況なら…話を作りすぎかな、とは思うが、なんかこう…アリじゃないかな…? 的な。

直前までピラミッドばんばん建ててる時代なのに、急激に王権が衰えていくの、今までの「ピラミッド建てすぎて財政破綻」とか「気候変動で収穫量が減った」とか「王族が増えすぎて権限が分散」とかの説もわかるんだけど、もう一つくらい大きな外的要因が欲しいなって。



というわけで、このへんの研究は10年もあれば書き換わっている可能性あるので今後も注目ですね。
地道な研究で歴史が少しずつ見えてくるの面白いよね。