ヨーロッパの青銅器時代の短剣、戦士のステータスシンボルではなくお肉切り分け用だった可能性が高まる。

今までは見た目で用途を分類されていた副葬品に入ってる刃物、刃に残ってる使用痕や有機物の痕跡から用途を割り出す手法が考案された、という話。
今回の分析では北イタリアで発見された約4000年前の10本の薄手のナイフについてが対象で、いずれも有機物は動物の脂肪などと判明。動物の屠殺や肉の切り分けなどに使われていた、という結論になった。
これは見た目じゃ分からん…。

Research finally answers what Bronze Age daggers were used for
https://phys.org/news/2022-04-bronze-age-daggers.html

Organic residue analysis reveals the function of bronze age metal daggers
https://www.nature.com/articles/s41598-022-09983-3

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分析方法にPico-Sirius Red solutionというのが出てくるが、これは日本語だと「ピクロシリウスレッド染色」となるらしい。
残留している微細な動物の体組織を染色して検出する手法だそうで、こんな方法が遺物の分析に使われているのは見たことがなかった。比較的乾燥して寒冷なヨーロッパだからこそ残ってるのでは? アジアの遺物は無理じゃない? という気もするが、ひとつの可能性を示唆している。

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また、これらの有機物は刃先やサビの中、かつて柄があった場所などに集中しているようで、レプリカ短剣を作って実際に屠殺などの肉の処理に使ってみたところ、同じような残り方をしたらしい。

そもそもの話、戦士のステータスシンボルなどと考えられてきたのは、短剣のうえ刃も薄く、あまり実戦的に見えないことからだったと思う。
確かに戦闘用ではなかったのだが、まさかのお台所用品。もしくは、手元の小物を加工するのにも使われたとすれば万能ナイフ的な扱いの日用品だったことになる。

もちろん今回は1つの遺跡から出てきたたった10本の分析なので、ヨーロッパ全域の青銅器時代の似た短剣すべてが同じ用途だったとは言い切れない。しかし、同じ分析を他の遺跡でもやっていけば、これまで様々な説のあったこのテのナイフが、ステータスシンポルや儀礼用品だったのか、日用品だったのか、憶測ではなくある程度の確信を持って言えるようになるはずだ。

このナイフから人間と戦った痕跡が出てきたとしても、その数が少なければ特殊な用途と言うことが出来る。
なにしろ、現代においても、包丁で人を襲う人はいるわけだし。



個人的には、この短剣/ナイフは刃が薄すぎるので、動物相手に使ってたんなら家畜の屠殺用か皮剥ぎ用だったんじゃないかなと思っている。
そうだとすれば、家畜を飼い始めた頃から出現するのでは、とも思うので、いつ頃からこのタイプの埋葬が出現するのか調べると、用途について外堀を埋めていけるかもしれない。

知ってるようで実は知らないことは沢山ある。
たとえ、ありふれた遺物だったとしても、知っていることは実は間違っているかもしれない。

科学的な新手法が出てくるたびに見える世界は変わっていく。それもまた面白いところ。