アマゾンの文明と南米の文化圏の広がり/知っておくと良い前提知識

なんだか最近、アマゾンに文明が!のようなニュースを見かけることが多くなった気がする。
たとえばこういうやつである。

アマゾン奥地でこれまで知られていなかった「古代都市」の遺跡を上空からのLIDAR調査で発見
https://gigazine.net/news/20220526-lidar-reveals-amazonian-urban-settlements/

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‘Mind blowing’ ancient settlements uncovered in the Amazon
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01458-9
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この文明圏(モホス文明と呼ばれていた)自体はけっこう前から知られており、日本語でも研究書が出ているくらいなのだが、知名度が低いため「アマゾンのジャングル=アマゾン川流域のどこか」というイメージをもっている人が多い。

アマゾン文明の研究―古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか - 実松 克義
アマゾン文明の研究―古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか - 実松 克義

だが、この文明圏はジャングルの中ではないし、アマゾン川の本流の場所にも無い。

アマゾン川というのは、数多くの支流が合流して最後に海かと思うような奔流となる河川である。一般的に「アマゾン川」と呼ばれるのはブラジルのマナウスより下流。
今回の遺跡はモホス文明に所属とされているので、アマゾン川沿いにはなく、支流の一つの、ずーっと上流、アンデス山脈のふもとの平原にある。

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発見された遺跡の位置はここ。

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ちなみに本文中に出てくる「カサラベ文化」というのはモホス文明圏の一つの区分のようだが、私は初耳だった。
ググってもあまり資料は出て来ないので、名付けられてから日が浅く、この区分を使っている学者が少ないのか、もともとマイナーな分野なので露出が少ないか、だと思う。

Figura-1-Mapa-de-distribucion-de-la-tradicion-ceramica-Casarabe-asociada-a-los.png
https://www.researchgate.net/figure/Figura-1-Mapa-de-distribucion-de-la-tradicion-ceramica-Casarabe-asociada-a-los_fig1_305985695

■アマゾン文明と言いつつアマゾン川ではなくアマゾンの支流の一つの上流

■場所はアンデス山脈のふもと


この二点をしっかり押さえておくと、今回の遺跡の立ち位置が理解できると思う。
そう、のちにインカ帝国の版図となるアンデス文明圏に隣接する文化圏に所属しているのだ。

*ちなみにアンデス文化圏の広がりがコレであり、今回の遺跡は、この図と重なるか、まさに同時期に隣接する位置にある。
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なので、普通に考えたら関係はしている。というか影響しあっているはずだ。
複雑な社会や立派な構造物が出てきたとしても、すぐ隣のアンデス文明では既にプレ・インカの各種文化が百花繚乱な時期なのだから、そりゃそうだろうな…という感じだ。

むしろ数十年前までこの隣接地域が研究の空白地帯だったのが手落ちだっただけで、新たな発見は出て来るべきものが出てきていると考えるべきだと思う。

問題は、というか個人的に疑問に思っているのは、この「アマゾン文化圏」と呼ばれている地域は、プレ・インカに入れなくていいのか? といいうことだ。
モホス地域の遺跡からは、ペルーのコトシュ遺跡にある「交差した手の神殿」と同じように「交差した手」を信仰する文化があった、と読んだことがある。文化が一部繋がってる可能性がある。とすると全く別の文化圏扱いにしていいのかどうか、それだけのオリジナリティがあると言えるのかどうか。

それと、今回見つかっている遺跡は湿地帯の中に町を作っているが、このやり方はメキシコシティの前身となるテノチティトランによく似ている。メソアメリカ文明とアンデス文明のハイブリッドのような状態なので、二つの一次文明の影響を受けた二次文明という可能性もあるのでは…とか思っている。
その辺りの扱いは、今後の研究次第、なのだろうか。

※ここでは便宜上「一次文明」という言葉を使うが、出典元はトィンビーの「歴史の研究」である。
ただ文化というのは相互影響のもとで発展していくものなので、そもそも文明に昇格する瞬間などあるのかどうか、ということと、「一次」「二次」と分けることに意味があるかについては、微妙だと思っている。

https://55096962.seesaa.net/article/202106article_11.html