イカの持つ意外な知性と、「それでもやっぱりイカは美味しい」

イカは体に見合わない巨大な脳を持ち、社会性があり、一部の動物にしか確認されていない自己認識すら機能として持っている――
そんな内容なのに本の帯が「それでもやっぱり、イカは美味しい」になっているあたり、イカ食いまくってきた日本人ならではの胃袋の呪縛を感じてちょっと笑ってしまう。そんな本である。

イカの心を探る 知の世界に生きる海の霊長類 (NHKブックス) - 池田 譲
イカの心を探る 知の世界に生きる海の霊長類 (NHKブックス) - 池田 譲

タイトルは「イカの心」などというキャッチーなものになっているが、内容は至極マジメで、生物行動学とか脳科学の世界である。一部、発達心理学とも分野が被っており、おなじみのローレンツの学習行動なども紹介される。

イカは、ああ見えてかなり繊細で、飼育が難しいのだという。しかもほとんどの種で寿命が一年しかない。
しかしその一年の間に、体のわりに巨大な脳を発達させ、社会を築く。ちなみにセットで語られがちなタコは「タコ壺に籠もる」の言葉通りほとんどの期間を単独で過ごし、非社会的な生物に分類されている。

イカたちはどのように社会性を育てているのか。群れの中で力関係を理解し、自己認知までしているらしいその意識には、果たして「心」と呼べるものはあるのか。これは実に興味深いテーマである。

まぁ心があろうがなかろうが食うんですけど(小声

面白かったのは、アオリイカのようなツツイカの仲間たちは社会性が高いために、メスと交接するさいにメスの同意を取り付けるためまず求愛から入るということだった。
同じイカでもヤリイカのようなコウイカの仲間たちは社会性がそれほど高くなく、いちいちペアを組まない。タコは引きこもりのむっつりスケ…じゃない、先手必勝組なので、何匹ものオスが一斉にメスに交接を仕掛ける乱交状態になる。
なんとなく、タコが海女に絡みついている人気の浮世絵のシーンを思い出すところだ。タコはメスに遠慮せず絡んでゆく。紳士なイカはまず色を変えながらソッと近づいて「や ら な イ カ」と誘うところからなわけである。これはぜひ、イカVer.の浮世絵も見てみたいところだ。

あとイカの脳が孵化してからの一定期間で急速に発達していくのとか、哺乳類や鳥類ではおなじみの話だが、軟体動物でも同じとは思わなかったのでへぇーっと思った。たった一年で死んでしまう生物なのに、脳の発達過程がなかなかの作り込みで、どういう進化をしてそうなったのかは非常に興味深い。

でも中身捨ててガワだけ食うんですけど(小声


思えば我々は、日常的にイカを食べているわりにイカについてあまりにも知らなさ過ぎるのである。
ちなみにおコメについても最近、いい感じの雑学本を読んだのでついでにオススメ。

あなたの知らないイネの世界。「イネの歴史」を読んでみた
https://55096962.seesaa.net/article/202204article_10.html

ウニもあるよ!

ウニの全てが分かりすぎる。「ウニ学」
https://55096962.seesaa.net/article/202109article_12.html

あと、イカ、ウニ、コメとくればもうビールしかないですよね。ビール! ビール!!

誰がここまでしろと言った。ビールの全てを詰め込んだ「ビールの科学」
https://55096962.seesaa.net/article/202110article_14.html

脳と腹は同時に満たすべし、さすればハッピーハッピーと経典にも書いてある。皆、それぞれに良く人生を務めるべし。