古代エジプトの「河馬牙」工芸品について

古代エジプトの工芸品には、象牙ならぬ河馬牙のものが沢山ある。本物の象牙はアフリカ南部の奥地から輸入するしか無いため高価で数も少ないが、河馬はナイル川にそれなりの数が暮らしており、入手しやすかったのだ。

ちなみに象牙はivoryというが、河馬牙の場合は Hippopotamus ivory とか Hippo ivory と呼ばれ、ivory という言葉自体は使われている。

https://www.britishmuseum.org/collection/object/Y_EA18175
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この、象牙に比べてキツい曲線がカバの牙の特徴だ。同様の遺物はかなり数が多く、あちこちの博物館で見つかると思う。
カバの牙を割って作ったこの遺物は、「Magic wand」と名前をつけられていることが多いが、おそらく妊婦のための護符で、カバの女神タウェレトが助産婦の女神とされたことと関係している可能性がある。(ちなみにカバはオスもメスも牙があるが、この護符にメスの牙だけを使ったわけではなさそう)

カバの牙はこんな感じなので、あの独特の半円形をした護符として使えるのは、1頭あたり2本だけ。もちろん生きているうちに捕獲してキバだけ切り取ることは出来ないので、狩りで殺してから採ることになるだろう。

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護符が大量にあるということは、それだけ大量のカバも狩られていたはずだということ。
現在のエジプトのナイル川沿いにはカバは生息していないが、古代から乱獲に近いことはしていたのでは…という気がする。

また、王がライオン狩りをする文化圏は多いが、古代エジプトではカバ狩りが王の儀礼的な「狩り」とされていた。定期的に狩りに出ていたのも、カバの生息域が狭まっていった原因ではないかと思う。

現在の技術を使えば、これらのカバのキバ遺物からDNAを抽出するなどもできそうなので、古代のカバの生態とか調べる研究を探してみるのは面白そうかなと思う。