イングランド西部、「アーサーの石」と名付けられてしまった新石器時代の巨石遺跡が改めて調査される

イングランドには、「ご当地アーサー伝説」とでも言うべき様々な派生伝承がある。
「なんと、あのアーサー王はうちの近所にも来ていたのでーす! この石はアーサーが倒した巨人が姿を変えたもので…」みたいな物語が、あちこちに残されているのだ。日本で言うと弘法大師みたいなノリで。

そんな伝承のうちの一つ、ヘレフォードシャー(Herefordshire)にある「アーサー王の石」と呼ばれる新石器時代初期の遺跡が、今回、伝承とは別に「古代史」として調査されたよ、という話が上がっていた。

‘Weird, wonderful’: rare dig at Arthur’s Stone writes new story of neolithic site
https://www.theguardian.com/science/2022/jul/22/weird-wonderful-rare-dig-at-arthurs-stone-writes-new-story-of-neolithic-site

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場所はココ。
アーサー王伝説に紐付けられてはいるが、ウェールズではなくその手前のあたり。

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形状としてはドルメンというタイプの遺跡になる。
どうもこの石の構造物は、周辺にある多数の遺跡群の一部で、複合施設のようなものの一部ではないかという話だ。
調べてみると、観光ガイドみたいなページに周辺にある遺跡の位置も載ってた。

https://www.english-heritage.org.uk/visit/places/arthurs-stone/
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これだけあるのなら、むしろ何でこの石がチョイスされたのかが謎。
伝説としては、アーサー王がここで倒した巨人が後ろに倒れた時の跡が石にくぼみとしてついている、という話担っているらしいのだが…。

あと、C.S.ルイスの「ナルニア国物語」でアスランが縛り付けられていた石のテーブルのモデルがこれなのだとか。


この遺跡自体まだあまり調査されていないようなので、何か出てくるとしてもこれからなのだろうが、今まで中世に作られた「伝説」でしか語られていなかった遺跡が、もともとの史実としての文脈で語られるようになっていくのは面白い回帰だなと思う。神話から歴史へと乗り換えた時、これらの遺跡群は、一体どんな物語を語ってくれるのだろうか。